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平成二十年三月二十七日提出
質問第二二七号

閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問主意書

提出者  平野博文




閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問主意書


 平成二十年二月十九日に発生した、海上自衛隊所属護衛艦「あたご」と漁船の衝突事故につき、当該事件発生後、民主党からの資料要求、あるいは国会における質問に対して、防衛省並びに防衛大臣等から、「詳細については捜査中であるので回答(答弁)を差し控えたい」旨の回答・答弁が繰り返しなされている。
 国政調査権の発動を筆頭として、国会並びに国会議員が政府・行政機関に対して行う質問や資料要求などは、国会が、政府の活動を監視し国政事項について判断するため、極めて重要なものである。
 また国会を通じて行政の情報が開示されることは、主権者である国民が国政を監視し、権利を行使するという民主主義の根幹的な価値を支えるという側面からも不可欠と言える。
 しかるに我が国では、右の「あたご」に係る問題にとどまらず、国会議員が行政情報の資料を要求したり、国会質問で説明を求めるに際し、法的根拠が必ずしも明らかではない回答拒否が頻繁に行われている。
 従って、次の事項について質問する。

一 国会議員の質問に対する答弁義務
 国会議員は政府・閣僚に対し、憲法六十三条及び国会法七十四条以下の規定により、本書のような質問主意書による質問権を有するのはもちろん、委員会・本会議等においても質問権を有する。さらに、政府ないし閣僚においては、国会議員からこれら質問を受けた場合、これに答弁・説明する義務も負う。このことは、政府としても共通の理解・解釈に立っていると理解するが、改めて、国会議員が政府又は閣僚に対する質問権を有するか、政府・閣僚が答弁する法的義務を負うか否かについて、その根拠も含めて確認したい。
二 国会議員の資料要求に対する協力義務
 一方、資料要求については、議院の先例により、質問主意書に関しては、単純な資料要求は受理しないものとされている。
 1 政府は、国会議員が質問主意書により、国会審議に必要と考える資料を要求する権利を有すると考えるか。また、議員が法的権利を有するか否かとは別に、質問主意書によりこのような要求を受けた場合、政府はどのように対応すべきと考えるか。
 2 衆参両議院は、国政に関し調査権を有しており、その一環として政府に資料を要求することができるのは当然である。一方、個々の議員からの資料・調査要求は国政調査権の行使そのものではないが、過去の政府見解によれば、「国政調査権を背景としたものであり、一私人としてのそれではない」と考えられ、「国会議員から国会における審議のために必要な資料の要求があった場合には、政府としてはこれに可能な限り協力をすべきもの」とされている。この点、現在の内閣の見解としても、政府はこのような立場に立つものと理解して良いか。
三 資料提出要求の拒否判断の基準
 行政各部は、項目二の内閣の方針に従い、原則として議員の資料要求に応じるべき義務を負うと考えるが、この義務にも関わらず資料の提出を拒めるのはいかなる場合か。その準則を示されたい。
四 議院における説明要求に対し、これを拒否する場合の法的根拠
 少なくとも国会議員が議院においてする質問に対しては、政府ないし閣僚は、答弁・説明する義務を負うことは、項目一で確認した通りである。
 しかし現実には、様々な理由を挙げて「答えを差し控える」対応が日常的に行われている。特に、刑事捜査が行政機関内部に及ぶような場合、行政機関の把握している関連情報について、「捜査中であるので」あるいは「捜査に影響を与えるおそれがあるので」など言い回しは異なるものの、単に「捜査」の存在を理由として、閣僚が答弁・説明を拒むケースが一般に見受けられる。
 1 答弁・説明義務があるにも関わらず、閣僚が答弁ないし説明を拒否するのは、いかなる根拠に基づいて容認されると解しているか。その法的根拠を明確に示されたい。
 2 1につき、個別の事案により根拠が異なると解釈されている場合は、本書への回答にあたり、その根拠を守秘義務「等」で済ますことなく、体系的に整理して、全ての根拠規定を明示されたい。
 3 いかなる根拠に基づくにせよ、「捜査中」や「捜査に影響するおそれ」だけを理由にする単純な答弁では、その答弁を聞く議員も国民も、その答弁拒否が正当なものか判断することができない。
  にも関わらず、政府がこのような対応をとっているのは、およそ捜査が進行中の案件である限り、説明を求める目的や観点に関わらず、行政が情報を開示すること一切が不適切であるため、拒否が正当か否かを論ずる余地はないと解しているのか。あるいは、当該行政機関が当否を判断すれば足り、議員や国民が当否を判断する必要はないと考えてのことか。
  いずれでもないとするなら、従来の答弁は判断基準を示しておらず、説明として不十分であり、答弁義務を果たしているとは言い難いのではないか。今後是正すべきと考えないか見解を求める。
五 「あたご」の事故についての資料・説明要求に対する政府の拒否事由
 「あたご」の事故に関しては、事故直後から、防衛大臣はじめ複数の発信者から、散発的に情報発信がなされている。しかしその一方で、事実関係について民主党からの資料要求や、同僚議員からの国会における質問がなされたにも関わらず、例えば当日の当直体制といった単純な事実関係に始まり、大半の情報が「捜査」を理由に開示を拒否された。
 1 本件事案について、いかなる法的根拠と判断に基づき、資料要求及び答弁・説明要求を拒否したのか、項目四に対する回答を踏まえ明示されたい。
 2 防衛省は、捜査の支障になるとして国会からの説明要求を拒む一方、捜査の完了を待たず、三月二十一日、省としての独自調査結果なるものを公表した。しかしその中には、早期に防衛省が知り得ながら、捜査に支障があるとして回答を拒否していた情報が多く含まれている。なぜこれらの情報はこの日まで公開することが許されず、この日に公開しても「捜査に支障」がないこととなったのか、明らかにされたい。
六 捜査対象者の所属する行政機関における内部調査
 「あたご」の事故直後、石破防衛大臣は、国会での十分な説明ができない理由として、「乗組員と接触ができない状態」であると再三述べられ(平成二十年二月二十六日衆議院安全保障委員会など)、防衛省も説明できる情報を持ち合わせない旨の答弁をされていた。
 1 「あたご」は横須賀回航後も、全乗員の上陸が禁じられたとのことである。当時、あたかも海上保安庁が乗員の上陸禁止及び接触禁止を命じたかのような説明が防衛省からなされていたが、これは不正確な説明ではないか。
  海上保安庁が、「あたご」全乗員について、逮捕拘留等の身柄拘束を行った事実は存在するのか。海上自衛隊ないし防衛省が自主的措置として右措置を行ったに過ぎないのではないのか。だとすれば、「接触しない措置を取った」に過ぎないものを、なぜ「接触ができない」と説明したのか、併せて明らかにされたい。
 2 自主的措置だとすれば、当該命令の発令と、事故後に「あたご」の航海長を防衛省に呼んで報告を聴取したこと、海上保安庁の要請の時系列を明らかにされたい。また当該上陸・接触禁止命令を最初に発令した直接の命令権者は誰か、海上保安庁の要請は誰からなされたのか、併せて明らかにされたい。
 3 「あたご」乗員の上陸禁止措置は、自殺未遂者が出るまで、事故後一ヶ月以上にわたって継続された。海上自衛隊の上陸禁止措置における従前の慣例は承知していないが、容疑者でもない乗員まで一種の監禁状態に置く期間としては、刑事上の身柄拘束期間も参考にすれば、一ヶ月は異常な長さである。海上保安庁の事情聴取にそれほど日数が必要とは思われないが、なぜ、これほど長く乗員の上陸を禁じる必要があったのか。
 4 事故後しばらくの間、防衛省・海上自衛隊が乗員と接触できず、事実関係の調査もできないとの立場をとったため、結果として、国会での迅速な事実解明にも支障が生じた。
  証拠隠滅の防止や事情聴取など捜査への一定の協力は当然だが、同時に、直接の指揮監督権を持つ防衛大臣、防衛省や海上自衛隊が、「あたご」に対し、事案の解明と事後対応並びに再発防止に向けた独自調査を行うことは差し支えないのではないか。捜査が入ることで、防衛省が内部調査できない何らかの法的義務を負うのか、伺いたい。
 5 海上保安庁は、防衛省側に対し、「あたご」とその乗員に関して、接触禁止・独自調査自粛等について、いかなる期間及び内容の要請を行ったのか。
 6 防衛省は、国会議員あるいは国会の質疑を通じ質問や資料要求を受け、行政機関としてこれを「可能な限り尊重すべき」立場にありながら、なぜその義務を遂行しなかったのか。海上保安庁から何らかの要請があったとしても、捜査機関からの法的拘束力を伴わない協力要請が、国会からの法律に基づいた要求に優越するのは、いかなる根拠によるものか。
  本件において、あえて国会質問を通じた説明要求に基づいた調査を行わなかった法的根拠と、今回の事案において調査を自粛することが合理的とした判断理由を明らかにされたい。
七 防衛機密に関し捜査活動の及ぶ範囲
 今回の護衛艦「あたご」の事故に関しては、事故当時の「あたご」の行動の解明が、事件の解明のまさに根幹部分である。衝突した艦船の当時の行動を把握するために、乗員に対する聴取などと並んで、通常、物的証拠すなわち搭載機器に残された様々な記録の調査は不可欠である。
 特に本件では、「あたご」や漁船の行動について関係者の証言が食い違い、また海上自衛隊側からは「海上捜索レーダーの記録システムは作動していなかった」等、航行に関する電子記録が存在しないかのような発言がなされており、艦船の航行に関わるあらゆる資料の収集が一層重要であると言わざるを得ない。
 しかし、護衛艦は防衛機密の固まりであり、特に「あたご」は、いわゆるイージスシステム搭載艦であるところ、イージスシステムに関しては、米国との関係で、外部への情報開示を禁じられている部分や、そもそも日本に開示されていない部分が存在すると言われている。また、護衛艦の行動や周辺海域情報は、データリンクシステムや通信回線を通じ、当該艦以外の自衛隊各部に存在する可能性がある。
 1 この点、海上保安庁等が行っている捜査に伴う捜索・差押えは、事件の解明に資すると考えられる限り、一切の例外なく「あたご」及び海上自衛隊のあらゆる面に及ぶのか。この場合、今後の捜査・訴訟を通じ防衛機密は、どのようにして保護されるのか。
 2 仮に捜査上の必要があるにも関わらず、捜索・押収の対象から除外される部分があるとすれば、何が、いかなる理由で除外対象となるのか。

 右質問する。



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