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平成二十年四月十六日提出
質問第三〇〇号

中国遺棄化学兵器処理事業に関する再質問主意書

提出者  阿部知子




中国遺棄化学兵器処理事業に関する再質問主意書


一 中国吉林省ハルバ嶺における処理事業について
 (一) 平成一二年度から一九年度まで(二〇〇〇〜二〇〇七)八年間のハルバ嶺における処理施設建設に関する質問に対し、次のような答弁があった。
  候補地の立地調査(平成一四年度)等を含めて、要員宿舎予定地の地質・測量調査、安全化処理作業事前調査、廃水溝調査、環境基準策定実験、発掘回収地域地形測量、実処理施設建設候補地調査(平成一五年度)、発掘回収施設に係る初歩設計、施工図設計、フィージビリティスタディ報告書の作成(平成一六年度)等、その後も環境調査などの実施となっている。これらの調査は、処理事業実施の為に行われたものと考えるが、八年に渡る調査の結果を踏まえ、直ちに処理施設建設が可能か否かについてはどのような状況にあるのか。「答弁書」六に、調査の知見、成果等は内閣府で管理している・・・と記されているが、未だに設備建設に着手できない理由を説明されたい。
 (二) 実際の処理に着手するまでにどのような調査が不足しているのか。
 (三) 処理場は何時完成し、砲弾の実処理作業は何時開始されるのか、明確にされたい。
二 ハルバ嶺以外の四万四千発の化学砲弾処理事業について
 (一) 「移動式処理設備」は、中国各地で偶然に発掘、回収された四万四千発の化学砲弾等の処理を目的とするものであり、ハルバ嶺に埋設されていると推定される約三十万から四十万発は対象と考えていないと理解してよいか。
 (二) 「答弁書」七の文中で、「移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から」とあるが、「移動式処理設備の導入」のどこが「合理的」なのか、その根拠を示されたい。
 (三) 「移動式処理設備」一式は一日にどのくらいの処理能力があり、四万四千発を処理するのにどれだけの日数を要し、どのような順序で処理していくのか、具体的な計画を示されたい。
 (四) 「答弁書」七の文中、「日中双方に遺棄化学兵器の所在に関する資料は十分なものがなく、すべての埋設地等を特定することは困難であり、今後も新たに発見される可能性も否定できない」とあるが、今まで「資料」発見にどれだけ努力したのか、具体的に示されたい。
  すでに研究者が調べた資料も明らかになっている。防衛省にはまだまだ資料があり、旧軍の連隊日誌などを丹念に調べるなど組織的に取り組めば有益な情報が得られるはずだと考える。最大限の努力をすべきだと思うがいかがか。
 (五) 移動式処理にはどれだけの費用を要するのか、概算予定額を示されたい。また、今後移動式処理設備を何台導入する予定か明らかにされたい。
 (六) 「移動式処理設備」によって、ルイサイトや「あか」剤に含まれている有機砒素は無害化処理できるのか。もしできないとすれば、どのような方法を考えているのか。また、処理後の環境汚染調査にはどのように取り組むのか計画を説明されたい。
 (七) 「処理作業」とは発掘から完全に無害化=無毒化までと理解してよいか。
三 (株)遺棄化学兵器処理機構(以下機構)について
 二〇〇八年度から機構との随意契約を解除し、一般競争入札で受託会社を決めるとしたが、機構に関し以下質問する。
 (一) 内閣府は二〇〇四年三月設立の機構と同年四月一日に業務委託契約を締結しているが、その契約内容を明らかにされたい。
 (二) 機構は、資本金三億円が建設コンサルタント大手のPCIグループ全額出資、遠藤博之社長が元PCI専務取締役というPCI関連会社である事を承知の上で「内閣府遺棄化学兵器処理担当室の補助者としての役割」を遂行させる為、内閣府が設立させたものと承知している。内閣府の責任は重大であると考えるが、内閣府はどのような責任を取るつもりなのか、明確な説明責任が内閣府にあるのではないか。
 (三) 二〇〇一年(平成一三年)二月に設立されて以降、PCI・日揮共同企業体が担ってきたPMC(プロジェクトマネジメントコンサルタント)業務内容は、二〇〇四年四月から機構の業務に取り込み、「機構からの再委託」という形を取って同共同企業体がPMC業務を継続することとされた(平成一五年度内閣府委託業務報告書「中国遺棄化学兵器処理事業基本計画書」)。機構とPMCとの関係を明らかにされたい。
 (四) これまでPMCと随意契約で支払われた各年度ごとの金額と機構設立後、機構から再委託で随意契約された各年度ごとの金額の全てを明らかにされたい。
 (五) 機構の予算執行状況について「会計検査を年二回受け処理事業について指摘を受けた事はない」としているが、予算の水増し、不正流用等がPCIグループ全体で行われている事が明らかになりつつある(捜査中)。内閣府遺棄化学兵器処理担当室との関連性はないか。
 (六) 今後数千億の事業費が見込まれている当事業に於いて不正再発防止にどのように取り組もうとしているのか示されたい。
四 被害者への救済及び医療体制について
 (一) 「答弁書」八で述べている『請求権』問題は、日中戦争中の「損害賠償」に限られており、今次の遺棄化学兵器による事故や健康被害と同一視した答弁書は、問題解決の本質から大きく逸脱している。裁判所も遺棄化学兵器による事故、健康被害は「国際慣習法ならびに人道法に反する」と認定した。
  一方、日本国内の毒ガス被害者には、不十分ながら医療・生活面での救済措置が、多年に渡って続けられてきた。日本政府はこの機会に人道的な立場で「正義と公正」をもとに早急に救済措置を取るべきではないか。
 (二) 二〇〇三年APEC首脳会議(一〇月二〇日バンコク)の前に次のような報道がなされた。
  『旧日本軍毒ガス事故、三億円支払い日中合意、医療体制の確立も』(二〇〇三年一〇月二〇日付朝日新聞)。
  同記事によれば「類似の事故に備えて医療体制を確立する事で一致し、具体策を今後協議する」としている。また、日中間で交わした「覚え書」(一九九九年七月三〇日)第五項にも記載されているはずである。
  この医療体制について一切語られる事はないが、日中間で合意した協議事項が現在どのようになっているか政府は説明責任がある。明らかにされたい。
五 国際条約により「処理事業の再延長はできない」と決められている。規定の二〇一二年まで残る五年間で終了できる実処理の進行計画など、その年次計画を説明されたい。

 右質問する。



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