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平成二十年六月十八日提出
質問第五五〇号

砂川事件最高裁判決における我が国の司法権の独立に関する質問主意書

提出者  辻元清美




砂川事件最高裁判決における我が国の司法権の独立に関する質問主意書


 米軍立川基地(当時)の拡張に反対する住民等が基地内に侵入したいわゆる「砂川事件」で、一九五九年三月三〇日、一審の東京地方裁判所(伊達秋雄裁判長)は基地の存在を違憲とし無罪としたが、一二月一六日の最高裁判所大法廷(田中耕太郎裁判長)はこれを破棄し、合憲判断を下した。
 報道によれば、この二つの裁判の間に、当時のマッカーサー駐日米大使が藤山愛一郎外相、福田赳夫自民党幹事長、上告審の担当裁判長である田中耕太郎最高裁判所長官と会っており、事件にかかわる発言を得ていたことを示す文書が、米国立公文書館で見つかった。文書は、一九五九年三月三一日から四月二四日に駐日米大使から国務長官にあてた電報である。
 文書によれば、話された内容は以下の通りである。なお、受信時間は日本時間に統一した。
 ■電報番号一九六九・一九五九年三月三一日午後二時一七分受信=「今朝八時に藤山と会い、米軍の駐留と基地を日本国憲法違反とした東京地裁判決について話し合った。私は、日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調した。私はこの判決が、藤山が重視している安保条約についての協議に複雑さを生み出すだけでなく、四月二三日の東京、大阪、北海道その他でのきわめて重要な知事選挙を前にしたこの重大な時期に大衆の気持ちに混乱を引き起こしかねないとの見解を表明した。
 私は、日本の法律体系のことをよく知らないものの、日本政府がとり得る方策は二つあると理解していると述べた。
 一 東京地裁判決を上級裁判所に上訴すること。
 二 同判決を最高裁に直接、上告すること。
 私は、もし自分の理解が正しいなら、日本政府が直接、最高裁に上告することが非常に重要だと個人的には感じている、それは社会党や左翼勢力が上級裁判所の判決を最終のものと受け入れることはなく、上告法廷への訴えは最高裁が最終判断を示すまで論議の時間を長引かせるだけだからであると述べた。これは、左翼勢力や中立主義者らを益するだけであろう。
 藤山は全面的に同意すると述べた。完全に確実とは言えないが、藤山は日本政府当局が最高裁に跳躍上告できるはずだとの考えであった。藤山は、今朝九時に開催される閣議でこの行為を承認するように勧めたいと語った。マッカーサー」
 ■電報番号一九八二・一九五九年四月一日午後八時二六分受信=「藤山が本日、内密に会いたいと言ってきた。藤山は、日本政府が憲法解釈に完全な確信をもっていること、それはこれまでの数多くの判決によって支持されていること、また砂川事件が上訴される際も維持されるであろうことを、アメリカ政府に知ってもらいたいと述べた。法務省は目下、高裁を飛び越して最高裁に跳躍上告する方法と措置について検討中である。最高裁には三〇〇〇件を超える係争中の案件がかかっているが、最高裁は本事件に優先権を与えるであろうことを政府は信じている。とはいえ、藤山が述べたところによると、現在の推測では、最高裁が優先的考慮を払ったとしても、最終判決をくだすまでにはまだ三カ月ないし四カ月を要するであろうという。(略)この会談の開催について最終決定をくだす前に、藤山は明朝、福田と船田と相談し、事前公表予定の明日の会談が、自民党にとっても世論にとっても有意義かどうかをチェックする予定である。マッカーサー」
 ■電報番号二〇〇一・一九五九年四月三日午後三時二六分受信=「自民党の福田幹事長は私に、内閣と自民党が今朝、日本における米軍基地と米軍駐留に関する東京地裁判決を、政府は最高裁に直接上告することに決定したと語った。マッカーサー」
 ■電報番号二二〇〇・一九五九年四月二四日午後三時五五分受信=「(略)内密の話し合いで担当裁判長の田中は大使に、本件には優先権が与えられているが、日本の手続きでは審議が始まったあと、決定に到達するまでに少なくとも数カ月かかると語った。マッカーサー」
 砂川事件をめぐる審議は、日米安保条約改定に向けた両政府間の協議と同時進行で行われている。一審判決が一九五九年三月三〇日、跳躍上告による最高裁判決が同年の一二月一六日、安保条約改定の署名が行われたのが一九六〇年一月一九日。検察官が東京高裁に上告していれば、最高裁判決が年内に行われることは不可能であったと考えられる。
 閣議の一時間前に駐米大使が外務大臣に面会すること、また駐米大使の意を受けて外務大臣が跳躍上告を主張することは、極めて異例な事態である。駐米大使が「日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調」し、本来上告を決める立場にない日本の外務大臣が政治的に介入することは、司法権の独立を脅かすことであり許されるものではない。本件の事実関係をただすとともに、政府の基本的見解を明らかにする必要があると考える。
 従って、以下質問する。

一 《電報番号一九六九》について
 1 一九五九年三月三一日、マッカーサー駐日米大使(当時)と藤山愛一郎外相(当時)が面会したことは事実か。事実であれば、面会を持ちかけたのはどちらか。
 2 同日の面会において、藤山外相がマッカーサー駐日米大使より「日本政府が直接、最高裁に上告することが非常に重要だ」という意向を示されたのは事実か。
 3 同日の面会において、藤山外相がマッカーサー駐日米大使に対し「全面的に同意する」と述べたのは事実か。
 4 同日の面会において、藤山外相がマッカーサー駐日米大使に対し「今朝九時に開催される閣議でこの行為を承認するように勧めたい」と述べたのは事実か。
 5 国務大臣が他国の外交担当者に対し、閣議に関わる情報を事前に明かすことは情報漏えいに相当するか。日本政府の見解を示されたい。
 6 跳躍上告について、同日の閣議で「承認」を得たのは事実か。閣議決定の具体的な内容を示されたい。
 7 検察独立の原則に従えば、上訴を決める権限は検察官にあるべきと考えるがいかがか。政府の見解を示されたい。
 8 政府が跳躍上告を閣議決定するのは、行政権による司法権への侵害であり、憲法違反と考えるがいかがか。政府の見解を明らかにされたい。
 9 本件において、我が国の司法判断に対し他国政府が干渉を加えたことについて、政府は遺憾であると考えるか。また抗議すべきと考えるがいかがか。
 10 今後、我が国の司法判断に対し他国政府から干渉を加えられた場合、政府は遺憾であると考えるか。また抗議すべきと考えるがいかがか。
 11 日本における他の裁判について、これまでに米政府・米軍から日本政府・防衛省(庁)・外務省に対し何らかの問い合わせ・事実確認・要請・見解表明があったか。政府が把握しているものをすべて明らかにされたい。
 12 日本における他の裁判について、これまでに日本政府・防衛省(庁)・外務省から米政府・米軍に対し何らかの資料提出・事情説明・約定・見解表明をしたことはあるか。政府が把握しているものをすべて明らかにされたい。
二 《電報番号一九八二》について
 1 一九五九年四月一日、マッカーサー駐日米大使と藤山外相が面会したことは事実か。事実であれば、面会を持ちかけたのは藤山外相で間違いないか。
 2 藤山外相がマッカーサー駐日米大使に対し「現在の推測では、最高裁が優先的考慮を払ったとしても、最終判決をくだすまでにはまだ三カ月ないし四カ月を要するであろう」と述べたのは事実か。
 3 事実であれば、藤山外相は、「三カ月ないし四カ月」で裁判結果が出されると米側に伝えたことになるが、藤山外相が裁判結果の出される期日を特定した根拠は何か。
 4 事実であれば、政府による司法への干渉につながり、司法権の独立を侵すことにならないか。政府の見解を示されたい。
三 《電報番号二〇〇一》について
 福田総理大臣は、マッカーサー駐日米大使と自民党・福田赳夫幹事長(当時)が面会していた事実を承知しているか。
四 《電報番号二二〇〇》について
 1 福田総理大臣は、マッカーサー駐日米大使と田中耕太郎最高裁判所長官(当時)が面会していた事実を承知しているか。
 2 本件において、最高裁判所長官が、他国政府に対し、司法判断する期限を示したことについて、政府は遺憾であると考えるか。

 右質問する。



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