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平成二十年六月十八日提出
質問第五六二号

「木曽川水系連絡導水路事業」におけるデュー・プロセスの確保に関する質問主意書

提出者  近藤昭一




「木曽川水系連絡導水路事業」におけるデュー・プロセスの確保に関する質問主意書


 一六六国会において「徳山ダムに係る木曽川連絡導水路事業の目的と効果に関する質問主意書」(二〇〇七年六月一二日付)を提出し、同年六月二二日付でその答弁書を受領した。また一六八国会において「「木曽川水系連絡導水路事業」の環境影響に関する質問主意書」(二〇〇七年一二月二八日付。以下、「一六八国会質問主意書」という。)を提出し、二〇〇八年一月一一日付でその答弁書を受領した。
 これらの質問主意書と答弁書及びその後判明した事実を踏まえて、木曽川連絡導水路事業(以下、「当該事業」という。)に関して質問する。

第一 「予算」におけるデュー・プロセスの確保と財政民主主義について
 一六八国会質問主意書において「水資源機構事業とするための最低限の法定手続(A=河川整備計画に位置づける B=水資源開発基本計画の一部変更を行う)については、まだ途上(入り口)ないし開始されてもいない。つまり、Aは本年一一月二八日に原案が示され、法定の河川法第一六条の二第三項及び第四項の手続が始まったばかりであり、Bは国土審議会水資源分科会木曽川部会に諮られてもいない。」「法定手続完了前に、「見込み・予定」で予算を計上することも不可解であり、「法律による行政」「財政民主主義」を軽視するものではないかと思料する。」と指摘したところである。
 一六九国会に出された平成二〇年度政府予算案では、社会資本整備事業特別会計の中で「項」として河川整備事業費 一五億円を計上し、「目」として「@ 河川総合開発事業費(直轄)一億円 A 水資源開発事業交付金 一四億円」としている(「建設費」という名で報道には発表されている)。
 この予算案は遺憾ながら十分な審議を経ずして、衆議院の与党多数をもって成立してしまった。
 他方、現実には、木曽川水系河川整備計画(前記A)策定は二〇〇八年三月二八日であり、木曽川水系水資源開発基本計画の一部変更(前記B)は、新年度が始まって二ヶ月経った六月三日であった。今後、独立行政法人水資源機構(以下、「水機構」という。)は事業実施計画を策定し、主務大臣に認可申請をし、その認可を得て、国土交通省(以下、「国交省」という。)事業からの承継の運びとなるはずである。
 一 一般的に、法的根拠なしに(未定のまま)予算として国会に出すのは不適切であると考える。今般の木曽川水系連絡導水路については、法的根拠は未定のまま予算案に計上し、「建設費」として報道発表もされた。このことが妥当・適正であるとする特別の理由があるのか。あるとすれば、その「理由」を丁寧に説明されたい。
 二 前記予算で「直轄事業=一億円、水資源機構事業=一四億円」としたのは今年度の早い段階での事業承継を見込んだものと見受けられる。その見込みの根拠について、説明されたい。
 三 実際は、木曽川水系水資源開発基本計画の一部変更は六月三日になった。その後の手続(水機構による事業実施計画策定等)がどれくらいかかるか、事業承継がいつ頃になるのかにつき、「長良川市民学習会」メンバーが質問しても、国交省側も水機構側も、担当者レベルでは「およその見通しも分からない」と答えている。
  以下、予算を出した政府の責任として、明確にされたい。
  (1) 現時点では、水機構への事業承継の時期をいつ頃と考えているか。
  (2) 今年度の当該事業予算を一五億円としたわけだが、事業承継は、まだ先になりそうな現状である。承継前の直轄事業としての予算執行は、「当初予算の河川総合開発事業費(直轄)一億円」の範囲内と考えて良いか。そうでなければ、予算につき、どのような変更等を考えているのか、現時点での考え方を示されたい。
第二 流域住民への説明責任について
 河川法第一六条の二は河川整備計画における関係住民の意見の反映を謳っている。
 昨年三月二三日に国交省が取り纏めた『社会資本整備のアカウンタビリティ(説明責任)向上行動指針』でも、広く国民に説明責任を果たしていくことの重要性を説いている。
 以下、多くの岐阜県民が「長良川流域住民及び長良川は岐阜県の川と考えている」実態に鑑み、長良川流域住民及び岐阜県民を主として念頭におき、説明責任に関して質問する。
 昨年八月二二日の「徳山ダムに係る導水路検討会 第七回」の「上流分割案」は、長良川を「我が故郷の川」と考える岐阜市民・岐阜県民に大きな衝撃を与えた。
 この衝撃で急遽発足した岐阜市民を中心とする市民団体「長良川市民学習会(代表:粕谷志郎 岐阜大学教授)」が三月に行った議員アンケートには、岐阜市議会議員四四名中二七名が回答を寄せた。「議会や市民への説明」については「十分だ」はゼロ、「不十分だ」が六七%、「分からない」が三三%であった(結果は中部地整にも送付した)。
 また、河川法第一六条の二第五項による都道府県知事意見で、岐阜県知事は
 「長良川は、自然豊かな河川であり、それを生かした鵜飼や水道水として利用するなど流域住民の生活と密接な関係にあることから、良好な河川環境を保全する必要がある。よって、木曽川水系連絡導水路を整備する前提として、良好な河川環境に与える影響を多方面から十分調査検討し、その検討経緯及び結果を全て公開し県民に丁寧に説明されたい。また、木曽川水系連絡導水路による環境への影響が明らかになった時点で、再度岐阜県の意見を聴かれたい。それまでは、工事に着手しないこと。」
と述べている。
 当該事業は、市民・地方公共団体議員そして知事も含めて、十分な理解を得た上で合意されたものとは言い難い。
 一 「長良川市民学習会」メンバーは重ねて、「一般市民に開かれ、かつ市民・住民側が意見を言える導水路事業の説明会」の開催を求めているが、五月一九日の第二回の中部地整との交渉において「ふれあいセミナー(河川整備計画全般に関するもの)の開催」を回答とした。「長良川市民学習会」メンバーは「河川整備計画全般の説明とか意見を交換するということでは、多くの市民は導水路問題との関係も分からず、結局参加しないことになる」と、河川整備計画策定時に開催した「ふれあい懇談暖会」の延長としての「ふれあいセミナー」開催を回答とすることを拒否した。
  「長良川市民学習会」は一月一六日、三月二三日、六月三日とすでに三回の公開の学習会を自主的に行ったが、どの学習会も一一〇名〜一七〇名の参加者があった(必ずしも同じ人が参加していないので、「長良川市民学習会」に一度でも参加した人は二〇〇名を超える)。
  他方、六月一日に開催された岐阜市での「ふれあいセミナー」は、中部地整が二度にわたる報道発表(「投げ込み」)をし、市町を通じて参加呼びかけをしたにも拘わらず八〇名の参加しかなく、顔ぶれも「ふれあい懇談暖会」の継続的参加者がほとんどであった。
  (1) 「一般市民に開かれ、かつ市民が意見を言える導水路事業の説明会」の開催を拒否する理由を示されたい。
  (2) 「長良川市民学習会」との五月一九日の第二回の交渉において、中部地整担当者は「ふれあいセミナー」しか口にしなかった。ところが翌二〇日夕方に揖斐川町において「招待者だけに対する説明会」を行った。「長良川市民学習会」メンバーが厳重な抗議を行ったところ「クローズドな説明会であるから、そちらの求めるものとは異なるので、一九日には、言及しなかった」と回答している。
  @ 七市町で「クローズドな説明会」をする予定をすでにもちながら、五月一九日にはそのことを伏せたという対応は理解に苦しむ。この経緯を説明されたい。
  A その後は「長良川市民学習会」事務局長に「クローズドな説明会」の日時場所を告知し、発言を封じられた一般傍聴者としてなら傍聴できることとし、資料もHPに載せている。「クローズドな説明会」とした理由を説明されたい。
  (3) 中部地整の当該事業に対する「説明責任」意識の低さは、昨年三月二三日に国交省が取り纏めた『社会資本整備のアカウンタビリティ(説明責任)向上行動指針』からしても、非常に問題ある対応と考えるが、いかがか。
 二 事業目的への疑問は、さまざまな分野の専門家から出されている。中部地整は「専門的なことは、口頭で質問されても聞く側の力量が伴わないこともあり、即答出来ない場合も多いので、文書でお願いしたい」としている。
  (1) 複数の専門家が文書で質問したが、回答は「ずれている」「回答自体から新たな疑問が発生する」ものが多々存在した。こうした文書を専門家と行政とでやりとりしているだけでは、多くの市民、そして市民の代表者たる議員には、理解も判断もできない。
  「長良川市民学習会」は「一般市民に開かれ、かつ市民が意見を言える導水路事業の説明会」の他に「専門家による公開の議論の場(議論が尽くされるまで継続する)」の設定を要求している。公共事業においては、こうした場の設定は、広く市民と事業に関する問題の所在を共有し、学習し、解決の方策と共に考えていく良い方法と考える。まずは当該事業に係る「専門家による公開の議論の場」の設定を求めるが、いかがか。
 三 「長良川市民学習会」メンバーが「徳山ダムに係る導水路検討会」の構成者である岐阜県の担当者に、「なぜ、岐阜県は(県知事が懸念を表明せざるを得ないような)上流分割案に合意したのか」を尋ねても一向に要領を得ない。
  他方「徳山ダムに係る導水路検討会」主催者である中部地整は「議事要旨は公開している通り。議事録は存在しない」として具体的な経緯を明らかにしない。これでは、関係流域市民は「何をどう考えれば良いのか」「どこに何を働きかければ良いのか」の手がかりもない。
  一市民団体にすぎない「長良川市民学習会」との交渉においても、中部地整は「行き違いがあるといけないから」とICレコーダーとビデオ撮りも行っている。重要な行政間協議の場である「徳山ダムに係る導水路検討会」の記録が何も存在しないとは考えられない。
  「徳山ダムに係る導水路検討会」の、とりわけ第六回及び第七回の記録(出席者の発言をそのまま記録したもの)に基づき議論のやりとりの概要を示し、経緯を説明されたい。

 右質問する。



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