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平成二十年十月二十八日提出
質問第一六八号

海賊対策に関する質問主意書

提出者  長島昭久




海賊対策に関する質問主意書


 海賊対策については、焦眉の急であると受け止め、以下質問する。
 海賊は人類共通の敵であり、国際社会が一丸となって、その撲滅に取り組んでいくべき課題だと考える。政府が、総合的に海賊対策に関する法制の整備を行っていくことについては、特に、以下の諸点に留意すべきと考えており、その観点から質問する。

一 先の答弁書(平成二十年十月二十一日内閣衆質一七〇第一〇七号)によれば、我が国の法令上の犯罪を取り締まるために、海上保安官が海上で海上保安庁法第二〇条第一項に基づき国籍を有していない船舶の乗組員に対して武器を使用することは、国際法上問題となることはなく、また、憲法第九条が禁ずる「武力の行使」に当たらないとのことであるが、その根拠を示されたい。さらに、このような武器の使用を認めている海上保安庁法第二〇条第一項の規定が憲法第九条に反する違憲立法でないと言える根拠を示されたい。
二 海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という)第一〇一条によると、海賊行為は、「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為・・・」と規定され、政治目的で行われる暴力行為等を対象から除外しているようにも読める。政治目的を有して暴力行為等に及んでいるかどうかは、事前に当該行為を行う者の属性に関する情報がない限り、外形上判別困難と思われるが、海賊行為はどのように認定されるのか。
三 政治目的を有するという一事をもって、目前の海賊への対処をためらうことがあるとすれば、海賊船舶が処罰を免れるため、意図的に政治目的を掲げることを誘発しかねないという不当な結果を招くことが懸念される。たとえ海賊行為を行う者が政治目的を有していたとしても、当該行為が国連海洋法条約第一〇一条に定める「私的目的」から除外されるものではないと考えるがどうか。
四 実際の法整備に当たって重要なのは、その目的であると考える。今回検討の俎上に上ったソマリア沖・アデン湾の海賊対策は、同海域において日本籍船や日本向けの船舶、日本人が乗船する船舶への襲撃が多発していること、このような被害の発生を受けて我が国が共同提案国となった国連安保理決議一八一六号および一八三八号が採択されたことが契機となっていると理解している。このような経緯を踏まえ、法の目的には、人類共通の敵である海賊に対する国際的な取組への協力に加え、日本への資源および物資輸送の安全確保という国益の観点から、広く我が国関係船舶(便宜置籍船、日本人の乗員のいる船舶、我が国向けの物資を運ぶ船舶を含む)の航行の安全確保も規定すべきであると考えるがどうか。
五 日本の現行法制上、犯罪行為が外国籍船に対して行われ、加害者も被害者も外国人であるような場合には、我が国は処罰根拠を有しないこととなる。しかし、日本向けのタンカーは、諸般の理由から、便宜置籍船として、日本船籍を有していない場合も多いと聞く。海賊対策に関する法制を整備するに当たっては、このような事例も対象としていくべきと考えるがどうか。
六 国連安保理決議一八一六号や一八三八号は、ソマリア沖の海賊対策のため、例外的に、同国暫定政府の同意の下で領海内への立ち入りを認めていると理解している。実効性のある海賊対策を構築していくためには、今般の安保理決議のように、沿岸国と協調しながら海賊の制圧に取り組む必要があると考える。沿岸国の警備当局、海軍当局との協調体制を構築していくべきと考えるがどうか。
七 日本の現行法制上、一般に海賊行為のうち我が国の国内法において犯罪とされるものについては、海上保安庁による取締りが可能と理解しているが、海上保安庁が実際にソマリア沖でロケットランチャーなどの銃器で武装した海賊の対策に従事することを想定すると、その装備、能力といった点で十分な態勢になっていないと理解している。また、現在、ソマリア沖では、各国の海軍が活動している実態を考えると、海上警察機関たる海上保安庁が参加することは困難と考えるがどうか。
 一方で海上自衛隊がその任に当たる場合は、自衛隊法第八二条による海上警備行動の発令によることが考えられるが、海上自衛隊の任務実態からして海上警備行動を常時発令し続けることは困難であると理解している。このような不備をなくすため、自衛隊法に新たな活動類型を創設することを含め、自衛隊による海賊対策の在り方全般について幅広く検討すべきと考えるがどうか。
八 航行の安全を確保するために軍艦が民間船舶をエスコートしたり海賊に対し武器を使用するに際し、当該民間船舶の旗国の同意を得ないことは、国際法上問題となり得るか。
九 仮に、海上自衛隊の護衛艦が対象船舶のエスコートを行うこととなれば、その抑止効果は高いと考える。一方で、万が一、海賊間で、例えば日本の護衛艦は撃たれるまで撃たないなど、武器使用について抑制的であるという情報が共有されるようになれば、抑止効果が半減することになりかねない。事態の性質に応じた武器の使用を認めるべきと考えるがどうか。
十 海賊行為の取締りに当たって想定される司法警察権の行使とはいかなるものか。また、日本を除くG8各国並びに韓国、スペイン、デンマーク及びオランダの中で、公海上における海賊対処に当たり軍艦に司法警察権の行使権限を付与している国はあるか、政府において承知し得る範囲内で示されたい。
十一 仮に、海上自衛隊の護衛艦が海賊対策に当たるとして、海上自衛隊の自衛官には、司法警察職員としての職務を行う権限は与えられていないことから、我が国として、海賊の取締りという司法警察権の行使を法律上可能とする原則を確立した上で、海上保安官を護衛艦に乗船させこれに司法警察権限を行使させることも想定されるが、このことを阻む具体的な法的制約はあるのか。
 ハイジャック防止条約のように、犯人又は容疑者が刑事手続を免れることを防止するため、他国への引渡しを含めた枠組みを定めているものもあるが、このような規定も参考になるのではないかと思料するがどうか。

 右質問する。



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