質問本文情報
平成二十一年五月二十五日提出質問第四四一号
臓器移植医療に関する質問主意書
提出者 阿部知子
臓器移植医療に関する質問主意書
心停止下、脳死下における臓器移植医療は、提供者の死後の身体から摘出する臓器を利用する医療である。万に一つであっても犯罪に巻き込まれた疑いのあるものや、死因の事実究明が完全に行われない事例があってはならない。臓器移植法でも、犯罪捜査の対象となる死体については、関連する手続きが終了した後でなければ、当該死体から臓器を摘出してはならないとしてきた(第七条)。犯罪捜査が終了するまで医師は臓器を摘出できず(臓器移植法指針)、特に司法解剖は心臓死に至って以降に開始される(警察庁通知、一九九七)ため、脳死下での臓器摘出は不可能である。
犯罪捜査と移植医療との調整は、臓器移植法成立前からの課題であった。今般、小児からの臓器提供を可能にする複数の臓器移植法改正案が国会に提出されているが、いずれも被虐待児の排除については具体的な規定がないままである。
移植医療における臓器提供者の犯罪被害者の排除について、その実態を明らかにすべきと考え、以下質問する。
二 交通事故を含む犯罪被害による受傷から提供に至った者の人数を、心停止下と脳死下それぞれ明らかにされたい。
三 交通事故を含む犯罪の関与が疑われた心停止下での提供者について、臓器移植法第七条に基づく犯罪捜査に関する手続きはどのように行われたのか、検視の有無、要した時間・手順、検視の結果、司法解剖に至った事例をそれぞれ明らかにされたい。また、検視が行われなかった事例についてはその理由を示されたい。
四 交通事故を含む犯罪の関与が疑われた脳死下での提供者について、臓器移植法第七条に基づく犯罪捜査に関する手続きはどのように行われたのか、検視の有無、要した時間・手順、検視の結果をそれぞれ明らかにされたい。また、検視が行われなかった事例についてはその理由を示されたい。
五 我が国の検視制度が有効に機能せず、犯罪が見逃されてきた実態はこれまでも様々に指摘されており周知の事実である。検視といっても執行するのは現場の警察官で、解剖は行わず、視覚、触覚等により外面だけで判断する。しかし、一刻を争う臓器摘出の現場では検視がおろそかになる可能性が大きく、犯罪性なしと判断されれば司法解剖には至らないため、真の死因が見過ごされることになる。結果として捜査を行わず、あるいは捜査が完了する前に臓器摘出が実施されたり、試みられたりする可能性は否定できないのではないか。このことについて政府の見解を示されたい。
六 臓器提供可能な指定施設において、交通事故を含む犯罪被害者からの提供を排除するために実施されていることはあるか。また、マニュアルを作成している施設があれば示されたい。
右質問する。