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平成二十二年五月十九日提出
質問第四八四号

『現代仮名遣い』(昭和六十一年七月一日内閣告示第一号)の運用に関する質問主意書

提出者  稲田朋美




『現代仮名遣い』(昭和六十一年七月一日内閣告示第一号)の運用に関する質問主意書


 国語の表記法については、被占領期の昭和二十一年十一月十六日付で二つの内閣告示があった。即ち、『当用漢字表』と『現代かなづかい』である。
 前者は、「日常使用する漢字の範囲」を一八五〇字に制限するものであり、後者は、「大体、現代語音にもとづいて、現代語をかなで書きあらわす場合の準則を示したもの」であった。
 昭和四十一年六月十三日に開催された第五十八回国語審議会総会にて、中村梅吉文部大臣が「今後のご審議にあたりましては、当然のことながら国語の表記は、漢字かなまじり文によることを前提とし」と言明したことから、敗戦と被占領という異常な事態の下で拙速に強行された国語国字改革の弊害が一定程度是正され、国語の表記の基本が「漢字仮名交じり文」であることが確認されたということが出来よう。
 その後、『当用漢字表』は、昭和五十六年十月一日付内閣訓令・告示により廃止され、新たに「現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すもの」として『常用漢字表』が示された。
 また『現代かなづかい』は、昭和六十一年七月一日付内閣訓令・告示により廃止され、新たに「一般の社会生活において、現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを示すもの」として『現代仮名遣い』が示された。
 以上の経緯を踏まえ、『現代仮名遣い』の運用上の諸問題につき質問する。

一 国歌「君が代」の歌詞について
 『現代仮名遣い』の「前書き 2」に「この仮名遣いは、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを示すものである。」とあるように、そもそも法令を成文化するに当たっては「現代仮名遣い」をもって表記することになっている。
 しかし一方で、「前書き 4」には、「この仮名遣いは、主として現代文のうち口語体のものに適用する。原文の仮名遣いによる必要のあるもの、固有名詞などでこれによりがたいものは除く。」とあり、また、「前書き 8」には、「歴史的仮名遣いが、我が国の歴史や文化に深いかかわりをもつものとして、尊重されるべきことは言うまでもない。」とある。
 『国旗及び国歌に関する法律』(平成十一年八月十三日法律第百二十七号)の「別記第二」は国歌「君が代」の歌詞を
 君が代は 千代に八千代に さざれ石の いわおとなりて こけのむすまで
としている。この歌詞は明らかに「現代仮名遣い」が主として適用される「現代文のうち口語体」ではなく、「我が国の歴史や文化に深いかかわりをもつものとして、尊重されるべき」文語体の和歌である。衆議院内閣委員会(平成十一年七月一日)で西村眞悟委員が指摘したとおり、「いわお」は「いはほ」と「歴史的仮名遣い」に改めるべきであると考えるが如何。
二 大概の出版社は、原作が「歴史的仮名遣い」で書かれている文学作品等の出版に際して、これを「現代仮名遣い」にわざわざ改めており、さらに、小・中学校の国語の教科書においても同様のことがなされている。
 「歴史的仮名遣い」で書かれている文学作品を、「現代仮名遣い」で書き直すことは内閣告示『現代仮名遣い』の趣旨に反することであり、原作の改竄であると考えるが如何。
 『現代仮名遣い』の「前書き 3」には、「この仮名遣いは、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」とあり、また、前項でも指摘した「前書き 8」にも反することと言わざるを得ないが如何。
三 小・中学校の国語教育について
 (1) 「五十音図」について
  「前書き 8」に「歴史的仮名遣い」の尊重という趣旨が明記され、続けて「この仮名遣いの理解を深める上で、歴史的仮名遣いを知ることは有用である。」とされていることからみて、小・中学校の国語教科書におけるいわゆる「五十音図」の扱いは適切であるか。また、「歴史的仮名遣い」の指導はどのように進められているか。
  因みに、東京書籍版、小学一年用『新編 あたらしいこくご 一下』に掲載されている「五十音図」は、や行とわ行が次のようになっている。
  や行=ヤ (イ) ユ (エ) ヨ
  わ行=ワ (イ)(ウ)(エ) ヲ
  そもそも「現代仮名遣い」にも、や行とわ行には「イ」や「エ」は存在せず、「歴史的仮名遣い」を教えるのであれば、わ行には「ヰ」や「ヱ」が記されて然るべきである。これはいわゆる「穴あき五十音図」以上に児童の理解を混乱させるものというべきだが、全国の小・中学校で実際に使用されている教科書において「五十音図」はどのように扱われているか。またこの件に関する文部科学省の「学習指導要領」や「教科用図書検定基準」はどうなっているのか。
 (2) 東京都世田谷区の「日本語の教育特区」について
  平成十八年に改正された『教育基本法』の前文に「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。」とあるが、この「伝統を継承する」という観点からみて、小・中学校で行われている国語教育は改善の余地が多分にあると言わねばならない。そういう点で、世田谷区で行われている「日本語の教育特区」は大いに参考になると考えるが、政府の見解は如何。
  因みに、この件については、平成二十一年四月二十日の衆議院決算行政監視委員会第二分科会で、自民党の林潤分科員が質問し、世田谷区で行われている日本語教育の成果を他の自治体にも波及させることを提起している。
四 国語国字のあり方を根本的に見直すべきことについて
 戦後被占領期における国語国字の改革は漢字使用を撤廃し、最終的に国語を「ローマ字化」することを目指したもので、それは我が国固有の伝統と文化を否定することであった。
 被占領期の昭和二十一年三月三十一日、米国教育使節団から連合国最高司令官宛に提出された『米国教育使節団報告書』中「国語の改革」の項に「国語の形式のいかなる変更も、国民の中から湧き出てこなければならないものであるが、かような変更に対する刺戟の方は、いかなる方面から与えられても差しつかえない。」と記されているとおり、本来、国語国字に変化が生じる場合でも、それは「国民の中から湧き出てこなければならないものであ」って、「刺戟」と称して占領国が被占領国に再三「変更」を勧告すべきものではないと思うが如何。
 戦後被占領期に企てられた誤った国語政策の弊害は多少緩和されたとはいえ、国語の表記がいかにあるべきか、さらに言えば、そもそも歴史の中で育まれた国語の表記を、国家の名において変更を強制し、或は制限を加えること自体に妥当性があるのか、という根本的な検討がなされたとは到底言えないのが実情である。
 記紀・万葉に始まる国語の伝統を尊重しつつ新しい文化の創造を目指すために国語国字はどうあるべきか、改めて問い直す必要があると考えるが如何。

 右質問する。



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