衆議院

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平成二十二年八月二日提出
質問第一二号

京成電鉄成田空港線運賃認可及び北総線運賃に関する質問主意書

提出者  穀田恵二




京成電鉄成田空港線運賃認可及び北総線運賃に関する質問主意書


 都心と成田空港を結ぶ新たな空港アクセスとして、二〇一〇年七月、京成電鉄成田新高速線(京成上野〜成田空港)の一部となる成田空港線(以下空港線)が開業した。空港線の全線五一・四kmのうち、京成高砂〜印旛日本医大間三二・三kmは、既に北総鉄道株式会社(以下北総鉄道)が運行している北総線の線路を使用する。
 北総線の運賃は日本一高いと言われ、長年にわたり沿線住民と自治体が運賃の値下げを求めてきたが、北総鉄道は巨額の建設費償還等を理由に拒否し続けてきた。住民は、成田新高速線開業により北総線区間の利用者が大幅に増え、京成本線並みに運賃が下がると期待していたが、二〇〇九年一二月に京成電鉄株式会社(以下京成電鉄)が申請した運賃は、北総線区間について北総線の高運賃にそろえるという不当なものであった。一月末に開催された運輸審議会公聴会では、一般公述人二八人のうち三分の二を超える一九人が反対意見を述べ、申請運賃の問題点が多岐にわたり指摘された。審議会は更なる慎重審議が求められていたにもかかわらず、二月一八日に申請通りの運賃認可を答申し、翌一九日には大臣認可に至った。
 北総線の沿線住民は、成田新高速線が開業しても、高運賃の大幅値下げが実現しないばかりか、かえって京成スカイライナーや特急の通過待ち時間が増え不便になっている。
 北総線の高運賃問題ならびに極めて不合理な空港線の運賃認可について、以下質問する。

1 北総線の高運賃について
 北総線は千葉ニュータウンと都心を結ぶ唯一の鉄道として建設され、沿線住民にとって生活上なくてはならない鉄道である。しかし、その運賃は、JR、首都圏の主要民間鉄道と比較して普通運賃も通勤定期も二〜三倍、通学定期では四〜五倍も高く、住民に多大な負担を強いている。
 二〇〇八年に「北総線の運賃値下げを実現する会」が一〇万七千余の署名を国土交通大臣に提出した際、大臣は「運賃が他の鉄道とくらべて高いことは聞いているし、皆さんの不満はもっともだ。運賃は透明・公正なものにしなければならない」と述べた。その後も、衆議院総務委員会において、総務大臣が、北総線の運賃が「異常な高さ」であることを認め、「いつまでもこのような料金格差があっていいとは思いません」と答弁している。(二〇〇九年三月一三日)
 @ 今回、国土交通省が運輸審議会に提出した資料からも、北総線運賃が、京成本線やJR、つくばエクスプレスなど都心と近郊を結ぶ路線の中で最も高いことは明らかである。北総線運賃が都市高速鉄道として極めて高いと認識しているか。
 A 北総線の運賃値下げが、沿線住民の切実な要求であることについて、どのように認識しているか。
 B 国は、今後、北総線の高運賃是正のために、どのような措置をとるのか。
2 空港線の運賃認可について
 成田新高速線の開業により北総線区間の列車運行本数ならびに利用者が増加するため、この区間の運賃は現在の北総線運賃より下がるのが当然である。ところが、認可された空港線の上限運賃は、北総線運賃と同額で、利用者利益に著しく反するものとなっている。なぜ政府は「利用者の利益を保護する」という鉄道事業法の目的に反し、不適正・不合理な運賃を認可したのか。以下、質問する。
 (1) 近距離区間が極めて高い運賃設定について
  京成本線は、多くの主要民間鉄道と同様に、乗車距離にほぼ比例して運賃が階段状に上昇する運賃体系をとっている。ところが、同じ京成電鉄が運行する空港線の運賃体系は、近距離区間の運賃上昇が極端に激しくなっている。空港線の上限運賃を等距離の京成本線運賃と比較すると、北総線区間の京成高砂〜新鎌ヶ谷までは一二・七kmで五七〇円と本線運賃二五〇円の二・二倍、印旛日本医大までは三二・三kmで八二〇円と本線運賃四七〇円の一・七倍と異常に高いが、成田新高速線区間の成田空港まで五一・四kmは九五〇円で本線運賃七〇〇円の一・三倍である。運賃上昇を見ると北総線区間の新鎌ヶ谷〜印旛日本医大一九・六kmで二五〇円と急上昇であるのに対し、成田新高速線区間の印旛日本医大〜成田空港一九・一kmで一三〇円というゆるやかな上昇である。
  @ 公聴会では、「近距離激高の異常な運賃体系だ」「空港利用者に比べ、都心への通勤や近辺への通学が圧倒的に多い沿線利用者に大きい負担を強いる不当な差別運賃設定だ」と、多くの公述人から繰り返し指摘された。近距離区間のみ極端に高い空港線の運賃設定は、不公正・不合理でないか。
  A 運輸審議会は、空港線の運賃制度について「鉄道事業法上、鉄道事業者が適正な総括原価の範囲内で運賃を設定することが認められている」ため「問題がない」と答申した。事業者本位の運賃設定を改め、利用者にとって適正で合理的な運賃設定となるよう、鉄道事業法の認可基準を見直すべきでないか。
 (2) 不公正な線路使用料契約について
  @ 京成電鉄は、北総線区間の線路を所有する北総鉄道ならびに千葉ニュータウン鉄道株式会社(以下、千葉ニュータウン鉄道)に線路使用料を支払う契約を結び、国土交通大臣はこの線路使用条件を認可した。しかし、その内容は、線路使用料を支払うと言いながら、実際には北総鉄道から横取りした運賃収入を「線路使用料」の名目で戻すに過ぎない。実質的な線路使用料の支払いはなく、全くのごまかしである。
  成田新高速線開業により、北総鉄道は、同一線路上を運行する京成電鉄に運賃収入を奪われることになる。北総鉄道の収支がマイナスにならないようにするため、京成電鉄は、資本コストを基準に算定した線路使用料を支払うことを基本としながら、北総鉄道から京成電鉄への乗り替わりによる北総鉄道の減収額が資本コスト分を上回った場合には減収額を上限として線路使用料を支払うと説明している。しかし、これでは、京成電鉄が横取りした運賃収入分を「線路使用料」として戻すだけで、北総鉄道の収入増はない。京成電鉄は北総線の線路上を実質「ただ乗り」することになる。
  他社が所有する線路を利用して運行するにもかかわらず、京成電鉄が、実質上、線路使用料を支払わないのは不適正でないか。
  A 北総鉄道・千葉ニュータウン鉄道両社は、資本的にも人的にも、親会社である京成電鉄に実質上支配されている。千葉ニュータウン鉄道は京成電鉄の一〇〇%子会社であり、北総鉄道は京成電鉄が五〇%の株式を所有する連結決算会社である。両社の代表取締役及び役員の大多数が京成電鉄の役員の兼任である。公聴会においても、運輸審議会委員から「今回の場合京成とその子会社で独立した二社ではない」と疑念が呈されている。北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道が、親会社である京成電鉄との間で対等な線路使用料契約を結ぶことは到底不可能であると考えるが、見解を問う。
  B 適正な鉄道事業運営を確保する立場から、国の線路使用条件認可を見直すべきでないか。
 (3) 京成電鉄の負担による運賃値下げについて
  @ 不公正な線路使用料契約をただし、京成電鉄が北総鉄道に適正な線路使用料を支払えば、北総線の高運賃を値下げできるのでないか。
  A 国土交通省は、昨年一一月、京成電鉄の意向を踏まえ、沿線自治体と北総鉄道の負担による「四・六%値下げ」あっせん案を関係首長に示し強引に受諾させた。沿線住民悲願の大幅値下げの道を閉ざし、逆に北総線の高運賃を固定化させる不公正なあっせん案を提示した国の責任は重大である。なぜ京成電鉄に負担を求めなかったのか。
  B 自治体と北総鉄道の負担による、わずか四・六%の値下げでは、沿線住民にとって到底納得できるものではない。沿線自治体である白井市議会では、「北総線の高運賃問題の解決を遠ざける」と再度にわたり補助金支出を否決している。国は、利用者利益を保護する立場から、北総鉄道の運賃を主要民間鉄道の水準並みに下げるよう親会社である京成電鉄に働きかけるべきでないか。
3 空港線の収支に関する疑問について
 運輸審議会公聴会では、運賃認可の前提となる空港線の収支予測について、「収入を少なく見積もり、運賃を高く設定しているのでないか」との公述人の指摘があった。政府は、収支予測の根拠となる十分なデータを明らかにし、これらの疑問に答えるべきである。
 @ 「空港線の需要見込みが過小である」との指摘に対し、審議会として検証したのか。検証したのであれば、どのようなデータに基づき、どのように判断したのか、明らかにされたい。
 A 収支予測では、上野・押上〜高砂間の収入が除外されている。上野・押上から成田空港まで一体的に運行するにもかかわらず、なぜ一部区間に限定して収支予測をするのか。上野・押上〜高砂間を含む成田新高速線の全体収支を開示すべきでないか。
4 透明で公平な運賃決定のあり方について
 空港線の運賃認可申請に関する運輸審議会公聴会で、公述人から様々な疑問や意見が出された。しかし、非公開の運輸審議会において、これらの疑問や意見についてどのように審議され、どのように判断されたのか、全く不明なまま、答申・認可が決定された。
 運輸審議会は情報公開法に基づく請求があった場合、答申・認可後に議事録概要と説明資料を開示しているが、議事録全文は公開せず、資料も肝心な数字が殆ど黒塗りである。
 @ 透明・公平に運賃を決定するため、運輸審議会の審議を原則公開とし、議事録全文と資料を原則全面公開すべきでないか。
 A 運賃決定にあたり利用者の意見を反映するため、運輸審議会の委員構成や審議のあり方を抜本的に見直すべきであると考えるがどうか。
 B 今年三月に閣議決定された消費者基本計画に、「各省庁所管の公共料金について、消費者庁・消費者委員会の関与の在り方や仕組みの見直しなどの検討を行う」旨の方針が盛り込まれている。国民生活に重大な影響のある鉄道運賃の認可や変更について、消費者庁・消費者委員会が関与し、鉄道利用者の声を反映する仕組みを速やかにつくるべきと考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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