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平成二十三年六月三十日提出
質問第二八六号

大規模災害時における情報収集衛星の活用に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




大規模災害時における情報収集衛星の活用に関する質問主意書


 政府は「情報収集衛星」光学四号機を本年八月二十八日、種子島宇宙センターから打ち上げることを決定した。情報収集衛星の目的は、政府によれば「外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集」となっている。ところが、二〇〇三年の一号機の打ち上げ以来、「大規模災害等への対応」については、何をいつ撮影し、どう活用したのか、その目的を果たしているのか、国民の前にいっさい明らかにしたことがない。東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害を及ぼしたが、この未曾有の被害をもたらした地震と津波に対してさえも、これまで同様に「安全保障上の制約からどのように運用したかは明らかにできない」と活用の実態を明らかにしていない。「これでは、具体的にどう役立ったか、さっぱりわからない。果たして、納税者の理解を得られるだろうか」(二〇一一年五月十六日付、朝日新聞社説)という主張が上がるのも当然である。
 よって、次のとおり質問する。なお、年次はすべて西暦で表記されたい。

(一) 現時点で運用中の情報収集衛星は、光学衛星、レーダ衛星それぞれ何機か。
(二) 情報収集衛星の予算が計上された一九九八年度から昨年度までの年度別の決算額と今年度の予算額、これらの総額はいくらに上るか。それぞれ、円単位で答えられたい。
(三) これまで打ち上げた情報収集衛星(軌道投入に失敗したものも含む)の研究費、開発費、製造費はそれぞれいくらか。衛星一機ごとに百万円単位で示されたい。
(四) これまで情報収集衛星を打ち上げたH2Aロケット(八月二十八日に打ち上げ予定の十九号機を含む)の製造費と打ち上げ費は、それぞれいくらか。ロケットの号機ごとに百万円単位で示されたい。
 また、これまで情報収集衛星を打ち上げたH2Aロケットの打ち上げ者は、それぞれどこか。号機ごとに示されたい。
(五) 情報収集衛星の目的として政府がいう「大規模災害等への対応等」の「大規模災害」とは、具体的に何を対象としているのか。今回の東日本大震災での地震や津波、東京電力・福島第一原子力発電所の事故を含むのか。また、「対応等」の「対応」とは、具体的に何を行うことを示しているのか。詳細に説明されたい。
(六) 二〇〇八年十一月二十八日に提出した質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七〇第二九一号)の中で、二〇〇五年三月二十日に発生した福岡県西方沖地震の際に「情報収集衛星を有効に活用した」旨を答えているが、これを含めて情報収集衛星を活用した大規模災害を、すべて列挙されたい。
 また、各々の災害について、情報収集衛星をどのように活用したか、その実態を情報収集衛星の利用省庁別に明らかにされたい。そのうち、画像を公にしたものはあるか。
(七) 情報収集衛星の利用省庁は、東日本大震災への対応に当たり、情報収集衛星の画像をどう利用したか。省庁ごとに詳細に答えられたい。
(八) 宇宙から地上を撮影する情報収集衛星の画像を使えば、津波がどのように移動していくのか、どこに何時頃到達するか等を判読できるのではないか。東日本大震災の地震発生時から津波襲来時にかけて、情報収集衛星は被災地上空を周回していたのか。
(九) 津波の到達場所と時刻がどこに何時頃かという情報がすみやかに提供されていたならば、的確な避難により犠牲者を少なくすることができたと思われる。情報収集衛星の画像や画像判読による津波の到達時刻等は、政府や各自治体、関係機関に伝えられたのか。
(十) 津波襲来直後に津波がどこまで襲来し、建物の損壊状況、被災者の所在や避難場所を迅速に把握することは、被災者救出に当たってきわめて重要な情報であったと考えられる。緊急車両等が近づくことができなくなった場所でも、宇宙から夜間でも高解像度で画像を撮影できる情報収集衛星は、そのために有効な手段となったはずである。政府は被災直後すみやかに、被災者救出に当たっていた機関や自治体等に情報収集衛星が撮影した被災地の画像を公開、提供したのか。仮に公開も提供もしていなかったとすれば、それはどういう理由からか。
(十一) 政府はこれまで「今後の情報収集活動に支障を及ぼすおそれがある」という理由から、情報収集衛星が撮影した画像等の情報の公開を拒み続けてきた。「情報収集活動に支障を及ぼす」とは、具体的にどういうことを意味しているのか。詳細に答えられたい。
(十二) 内閣官房によれば、情報収集衛星は「国民生活の安定・安全を確保するための情報の収集・分析に重要なツール」であるという。情報収集衛星の画像は天候や時間の制約なく、宇宙から地上を撮影できる情報である。地震と津波襲来直後に被災者救出活動に当たっていた機関や組織に、政府がその画像の公開や提供を行っていなかったとすれば、政府自らが「国民生活の安定・安全を確保するための情報の収集・分析に重要なツール」の活用を意図的に怠っていたことに加え、国民の命と安全を確保するという政府の責任を果たしていなかったということになるのではないか。
(十三) きわめて大規模で深刻な被害をもたらしている東日本大震災の被災状況ですら、「情報収集活動に支障を及ぼす」という理由で情報収集衛星の画像を公にしない実態は、情報収集衛星の目的である「大規模災害等への対応」という文言が単なる「方便」に過ぎないことを意味しているのではないか。
 あわせて、情報収集衛星に関連する今年度のすべての予算の執行はただちに停止して(八月二十八日に打ち上げ予定の光学四号機の打ち上げは当然中止)、その分を今後の補正予算編成に際し、震災の復興予算財源に回すべきと考えるがどうか。
(十四) 大規模災害への対応という目的で多額の国費を投じて情報収集衛星の開発・運用を進めながら、大規模災害での活用実態を「情報収集活動に支障を及ぼす」という理由で、国民に説明すらできないような代物になっているのならば、政府の「無駄撲滅」や「事業仕分け」の観点から運用をただちに停止し、来年度以降から予算の計上はやめるべきではないか。
 その代わりとして、大規模災害への対応だけに目的を絞った高性能の人工衛星を導入し、撮影した画像や分析情報を災害対応の機関や自治体、研究者等に何の制約もつけずに公開すべきではないか。国民の安全を確保する責任を負った政府は、そのようなことを検討していないのか。
(十五) 公開されている福島第一原子力発電所の破壊状況を撮影した人工衛星の画像は、すべてアメリカの商用衛星が撮影したものである。日本の情報収集衛星は福島第一原発の上空から画像を撮影していないのか。撮影していたとすれば、なぜ情報収集衛星の画像を公開しないのか。
(十六) 福島第一原発の状況を撮影したアメリカの商用衛星の名前は何といい、どこが保有するものか。衛星画像は購入したものと思われるが、どこが、どこから、いくらで購入したのか。円単位で示されたい。
(十七) 内閣情報調査室は情報収集衛星の画像等を基に、東日本大震災の津波の浸水範囲を地図上に記した「被災状況推定地図」を作成しているが、縮尺は二万五千分の一という小縮尺のため、建物や道路、地形等が詳しく表現されていない。現実的にこれでは「大規模災害等への対応」に、とうてい役立たないと考えられるが、なぜ大縮尺の地図を基にして詳細な被災状況推定地図を作成することができなかったのか。
(十八) 内閣情報調査室が東日本大震災の被災状況推定地図を作成したのはいつか。また、利用省庁は被災状況推定地図を被災地の現場で実際にどのように活用したのか。省庁ごとに答えられたい。
(十九) 東北電力・女川原子力発電所も津波で重油タンクの転倒等、外見上も明白な被害を受けた。ところが、被災状況推定地図によると女川原発の部分は津波の浸水が及んでいないことになっている。情報収集衛星の画像には、女川原発とその周辺には津波の浸水状況が撮影されていないのか。
(二十) 情報収集衛星のうち、レーダ衛星二機が設計寿命を前に運用を停止した。その原因は何か。これによって、国民生活に何らかの支障が発生したか。また、運用を停止した衛星は現在どういう状況にあるのか。スペースデブリの状態にあるのか。
(二十一) 運用を停止した二機の衛星の設計寿命はそれぞれ何年であり、実際の運用期間は何年何ヶ月であったのか。
(二十二) 設計寿命を前に運用を停止したことに伴い、政府は衛星を製造した三菱電機に対し製造者責任の観点から、契約金の返還を求めたのか。あるいはその必要はないと判断したのか。三菱電機の責任が免れるとすれば、それは契約書の何条に何と書かれているのか。
(二十三) 情報収集衛星を運用している内閣衛星情報センターの職員は何人か。出向元の省庁別の内訳を付し、総数を明らかにされたい。あわせて、常勤職員と非常勤職員の内訳を示されたい。
(二十四) 内閣衛星情報センターの職員のうち、民間企業や団体(独立行政法人は除く)から採用(出向含む)している者は何人か。あわせて、常勤職員と非常勤職員の内訳を示されたい。
(二十五) 内閣衛星情報センターの歴代の所長三名は三名とも防衛省退職者、同じく次長五名のうち四名は警察庁からの出向者、一名は外務省からの出向者である。所長と次長のほとんどに、防衛省と警察庁出身者を充てているのはどういう理由からか。また、この人事は、情報収集衛星が大規模災害への対応という民生用途の衛星ではなく、「外交・防衛等の安全保障」、すなわち軍事衛星であることを意味するものではないか。
(二十六) 内閣衛星情報センターの所長に、出向者でなく退職者を充てるのはどういう理由からか。
(二十七) 国会議員に対して議員会館に説明に来る内閣衛星情報センターの職員は常に名刺を持たない。聞くところによれば、名刺を作って配らないようにという指示が出されているというが、これは事実か。また、このようなことはいつから、どういう理由で行われているのか。

 右質問する。



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