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平成二十四年三月三十日提出
質問第一六一号

金融機関による為替デリバティブ取引に関する質問主意書

提出者  稲田朋美




金融機関による為替デリバティブ取引に関する質問主意書


 報道によると、平成十六年以降銀行などの金融機関が中小企業を勧誘し契約した為替デリバティブ取引が、現在の円高により、中小企業に多大な損失を与えているとして、問題とされている。
 また、報道された民間調査会社帝国データバンクの調査によると、平成二十三年における円高に起因する倒産件数は、八十五件に達し、集計を開始した平成二十年以降最多だった平成二十二年を四十六.六パーセントも上回り、そのうち三十二件が為替関連のデリバティブ取引による倒産であるとのことである。
 かかる為替デリバティブ取引をした中小企業は輸入関連企業が多く、本来であれば、現在は円高によるメリットを受け、景気回復や税収増大の牽引役となるはずであるが、報道の通りとすれば、かかる為替デリバティブ取引での損失により、輸出企業とともに円高による多額の損失に苦しんでおり、国の景気回復の足かせになっている可能性もある。
 金融庁の調査によると、銀行による中小企業向け為替デリバティブ取引の、平成二十二年九月三十日時点での全契約数は六万三千七百件、残存契約数は四万五百件とのことであるが、これらの取引のうち、報道されているような問題のある取引がどの程度存在し、どの程度の問題が生じているのか実態が明らかではない。今後、政策的対応の要否を判断するためにも、まず実態を明らかにする必要があると考えるので、次の通り質問する。

一 報道によると、為替デリバティブ取引により、決済期ごとに中小企業が多額のドルを相場よりも大幅に高い値段で買うことを迫られ、その資金の手当てのために資金繰りが圧迫され、含み損を抱えたドルを不良資産として大量に保有するなどにより、財務が圧迫されているとのことである。この決済期ごとの損失は、当該為替デリバティブ取引自体が抱える含み損が順次顕在化している状態と考えられ、その含み損全体を把握しなければ、どれくらいの負担になるのか、明らかとならない。
 また、金融機関が中小企業に対して与信取引を行う場合、為替デリバティブ取引についても時価で評価し、当該企業の与信状況を判断することになるが、昨今の円高により為替デリバティブ取引の含み損が膨大な金額になり、その結果、金融機関から与信を得ることができず、資金繰りに窮して倒産する事例も多いとのことである。
 為替デリバティブ取引をした金融機関は、毎月、その時価評価額を取引相手の企業に対して通知しているはずである。
 そこで、金融庁が平成二十二年九月三十日時点で聞き取り調査を行った為替デリバティブ取引契約に関して、この契約によって、購入者に生じている平成二十三年十二月末日時点及び直近の時価評価損益(含み損益)の総額、銀行毎の額および取引一件当たりの平均額、最大額、最少額を明らかにされたい。
 また、時価評価損益額を把握していないのであれば、速やかに調査し、明らかにされたい。
二 最近、中小企業再生支援協議会に対し、金融機関との為替デリバティブ取引による損失を抱えて相談する中小企業が増加しているとのことである。
 中小企業再生支援協議会に対する、中小企業の為替デリバティブ取引に関する平成二十三年度の相談の件数及びその内容を明らかにされたい。また、件数及び内容について把握していないのであれば、早急に調査し、明らかにされたい。
三 本来、為替デリバティブ取引は、為替変動のリスクがある外貨建て取引(以下「実需取引」という。)が存在する場合に、その為替変動のリスクを回避するために行うものである。
 報道によると、金融機関による中小企業に対する為替デリバティブ取引も、為替変動に対する中小企業の「リスクヘッジ」のためとして販売されたとのことである。
 「リスクヘッジ」という場合の「リスク」には、@「予測し得ない変動」を意味して使用される場合と、A「損失発生の危険」を意味して使用される場合があり、@の場合、損失が出ても利益が出ても「リスク」であり、損失も利益も出ないように固定することが「リスクヘッジ」ということになるのに対し、Aの場合は、損失が出る可能性をなくすことが「リスクヘッジ」ということになる。
 報道によると、問題になっている為替デリバティブ取引の基本的な仕組みは、金融機関が中小企業に外貨のコールオプション(所定の金額で外貨を買う権利)を売り、他方、中小企業が金融機関に対して外貨のプットオプション(所定の金額で外貨を売る権利)を売るという取引を組み合わせた契約とのことである。
 この契約では、円安時には、中小企業が外貨のコールオプションを行使でき、相対的に高くなった外貨を所定の安いレートで金融機関から買うことができ、為替差益を得ることができる。他方、円高時には、銀行が外貨のプットオプションを行使でき、中小企業は相対的に安くなった外貨を所定の高いレートで金融機関から買わされることとなり、損失(為替差損)が発生する(または含み損を抱えた外貨を資産として保有する)ことになる。しかも、問題になっている為替デリバティブ取引は、円高時にはレシオ(倍率)の特約があり、円安時の利益に対して、円高時の損失が二倍ないし三倍になる建て付けになっているものも多いとのことである。
 そうすると、円安時には、実需取引における外貨建て販売代金の円換算額の減額による損失(為替差損)と為替デリバティブ取引契約における相対的に高くなった外貨を安く買うことができることによる利益(為替差益)とが相殺され、為替変動による損益がなくなることになり、先の@Aのいずれの意味でも「リスクヘッジ」されていることになる。
 しかし、円高時には、実需取引による利益と為替デリバティブ取引契約による損失を相殺しても、為替デリバティブ取引の方にレシオの特約があるため損失が大きくなるので、為替変動による損失が発生することになり、@Aのいずれの意味でも「リスクヘッジ」されていないことになる。
 すなわち、このような為替デリバティブ取引は、@Aのいずれの意味においても「リスクヘッジ」になっておらず、このような商品を「リスクヘッジ」のためと称して勧誘契約することは、虚偽ないし誤導となり、金融機関による取引としては不適切である可能性がある。
 そこで、金融庁が平成二十二年九月三十日時点で調査した為替デリバティブ取引契約のうち、金融機関が販売するに当たり、上記のように、「リスクヘッジ」にならない商品を@又はAの「リスクヘッジ」のためとして契約した件数及びその総額について明らかにされたい。また、件数及び総額を把握していないのであれば、早急に調査して、明らかにされたい。
四 問題となっている為替デリバティブ取引は、オプションの対価の支払を不要(ゼロコスト)として販売されたものが多いとのことである。その仕組みは、金融機関が中小企業に外貨のコールオプション(所定の金額で外貨を買う権利)を売り、他方、中小企業が金融機関に対して外貨のプットオプション(所定の金額で外貨を売る権利)を売るという取引を組み合わせ、この二つのオプションを等価と評価してオプションの対価の支払いを不要(ゼロコスト)としているとのことである。
 ところで、それぞれのオプションの経済的価値は、いわゆるブラック=ショールズ・オプション評価モデルにより計算されるのが一般的で、このモデルにより、それぞれのオプションの経済的価値が算出されるが、報道によると、問題となっている為替デリバティブ取引においては、金融機関が中小企業に付与するコールオプションの価値に対して、中小企業が金融機関に対して付与するプットオプションの価値が何倍もの価値がある場合が珍しくないとのことである。
 そうすると、このような為替デリバティブ取引をした金融機関は、自らも中小企業に一定の価値があるオプションを付与するが、他方、自らに向けて中小企業に付与させるオプションは、自らが付与するオプションの何倍もの価値があるオプションということになる。
 一般的にこのような価値の不均衡な取引が行われるのは異常であり、このような取引が行われるとすれば、特段の合理的な事情がない限り、利益を得る側による不適切な説明があったり、優越的地位による取引の強要があったりするなど、何らかの不適切な取引が行われた可能性が疑われる。
 そこで、金融庁が平成二十二年九月三十日時点で調査した為替デリバティブ取引のうち、金融機関が購入者に対して付与するオプションの時価評価価値に対する、購入者が金融機関に対して付与するオプションの時価評価価値が、二倍以上となる不均衡な事例が何件あり、これらの取引において、いかなる理由でこのような時価評価価値の不均衡な取引が行われたのか、明らかにされたい。
 また、件数及び取引理由を把握していないのであれば、速やかに調査し、明らかにされたい。
五 実需取引が存在しない場合、すなわち円建て取引が行われている場合は、為替変動リスクに対するリスクヘッジの必要性はない。
 実需取引が存在しないにもかかわらず、為替変動に対するリスクヘッジが必要であるかのごとく説明し、中小企業にその必要性を誤解させて取引を行ったとすれば、虚偽ないし誤導となり、金融機関による取引としては、不適切であると考えられる。
 そこで、金融庁が平成二十二年九月三十日時点で調査した為替デリバティブ取引のうち、金融機関が販売するに当たり、実需取引がないにもかかわらず「リスクヘッジ」のためとして販売した件数及びその総額について明らかにされたい。また、件数及び総額を把握していないのであれば、早急に調査して、明らかにされたい。
六 金融法委員会(事務局は日本銀行内)の平成十一年十一月二十九日付論点整理では、金融デリバティブ取引が賭博罪に該当するかという点について、構成要件該当性は否定しきれないが、法令行為または正当業務行為として違法性を阻却される。ただし、必然性の薄い、投機性の高い取引を行った場合には、なお賭博罪としての違法性が阻却されないということも理論上はありうる、と整理されている。
 そうすると、実需取引が存在せず、為替変動リスクに対するリスクヘッジの必要がない場合に、それを知りながら多額の為替デリバティブ取引を行うということは、相場が一方に振れれば多額の利益を得、逆に振れれば多額の損をするというだけの取引となるので、為替相場を対象にした賭博になるのではないかとの疑念が生じる。
 そこで、
  (一) 為替デリバティブ取引契約について、どのような事実が認められたときに賭博罪として違法性を帯びると解釈されると考えるのか、明らかにされたい。
  (二) 金融庁が平成二十二年九月三十日時点で調査した為替デリバティブ取引のうち、金融機関が販売した時点において、実需取引が存在しない事例の件数及びその契約金額を、明らかにされたい。また、件数及び契約金額を把握していないのであれば、速やかに調査して、明らかにされたい。

 右質問する。



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