衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十五年四月四日提出
質問第四五号

共通番号制度により効率化が進むとされる事務等に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




共通番号制度により効率化が進むとされる事務等に関する質問主意書


 政府は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」及び関係法案を提出した。この法案によって構築される情報提供ネットワークシステムによって、法案の別表第二上段に掲げられた情報照会者が、二段目に掲げられた事務について、三段目の情報提供者から四段目の特定個人情報の提供を受けることによって国民の利便性や事務の効率化がもたらされると説明されている。別表第二が規定する情報照会者は、百十五である。しかし、その二段目に掲げられた事務は、それぞれの情報照会者の複数の事務を内包し、それぞれの事務によって、三段目の情報提供者や四段目の特定個人情報も異なっているとされる。例えば、別表第二の三の情報照会者は、健康保険組合である。この健康保険組合が、医療保険の二重加入をチェックするという保険給付の支給に関する事務のために、他の医療保険者又は後期高齢者医療広域連合から、資格喪失などの医療保険給付関係情報の提供を受ける。また、健康保険組合が、加入者の扶養者の資格をチェックするという保険給付の支給に関する事務のために、市町村長から扶養者の所得などの地方税関係情報、扶養者の同居や続柄などの住民票関係情報の提供を受ける。また、健康保険組合が、高額医療・高額介護合算制度を活用して、加入者の一定額の自己負担分を支給するという保険給付の支給に関する事務のために、市町村長から、合算にかかる介護保険給付関係情報の提供を受ける。また、健康保険組合は、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給を行うこととされている給付との併給調整という保険給付の支給に関する事務のために、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給を行うこととされている者から、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給に関する情報の提供をうける。また、傷病手当との併給調整という保険給付の支給に関する事務のために、厚生労働大臣若しくは日本年金機構又は共済組合等から、傷病手当に関する年金給付関係情報の提供をうける等々である。しかし、別表第二を見ただけでは、以上の内容は明らかにならず、百十五の情報照会者がそれぞれどのような事務において、どの情報提供者からどのような特定個人情報を提供されるのか明らかにならない。この点について質した質問主意書をすでに提出した。
 政府は、共通番号制度導入のメリットとして、情報提供ネットワークシステムによって、主として、サービスの申請等にあたって所得証明書等の書類の提出が不要となる、給付間の併給調整等を的確・効率的に行うことができるということを掲げてきた。ところが、指摘したように、別表第二を見ただけでは、具体的な事務が判明しないため、どのような申請書類の簡素化や併給調整が可能になるのか明らかにならないし、私が知る限り、政府からも、個別の事務についてどのような申請書類の簡素化や併給調整が可能となるのか、公的な説明はなかった。
 別表第二の三の例で言えば、健康保険組合が、市町村長から、加入者と扶養者にかかる続柄情報を含む住民票関係情報の提供を受け取ることから、扶養手続にかかる住民票の提出が不要になるといった例である。ところが、住民票の続柄情報では、加入者が世帯主でない場合は、加入者の配偶者や子どもなどの続柄は表示されず、日本私立学校振興・共済事業団では、そうした場合に、戸籍謄本(抄本)の提出を求めている。国家公務員共済組合においても、配偶者を婚姻により扶養する場合には、住民票だけでは、婚姻の日を確定できず、戸籍謄本(抄本)等の提出を求めていると聞いている。また、日本私立学校振興・共済事業団では、扶養者の所得を確定するために、雇用保険の受給があった場合には、受給資格者証の写しの提出を求めている。こういう実態があるなら、扶養手続の事務において、情報提供ネットワークシステムでは、必要な情報をすべて集めることができないことになる。例えば、戸籍謄本の提出が必要なら、加入者は、住民票を取りに市役所に行かなくても済むが、戸籍謄本は取りに市役所に行かなければならなくなる。これでは、利便性の向上は、市役所のなかで回る窓口が減る程度のものとなる。
 併給調整については、別表第二の三の例で言えば、健康保険組合が、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給を行うこととされている給付との併給調整という保険給付の支給に関する事務のために、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給を行うこととされている者から、健康保険法第五十五条に規定する他の法令による給付の支給に関する情報の提供をうけるといった例である。同種の規定は、協会けんぽや共済、国保にもある。国民健康保険法による保険給付の支給に関する事務については、別表第二の四十三で規定されている。この場合、厚生労働省からの説明によれば、法により併給調整の対象となる給付の支給に関する情報は二十五あり、その中には、「被保険者の当該疾病又は負傷につき、国会職員法に基づく医療に関する給付を支給している旨その他必要な情報」という「給付の支給に関する情報」があり、その給付主体は、「衆議院の議長又は参議院の議長」とある。この併給調整の件数は極めて少ないのではないかと想像される。また、「被保険者の当該疾病又は負傷につき、労働基準法の規定による療養補償を支給している旨その他必要な情報」という「給付の支給に関する情報」があり、その給付主体は、「使用者」とある。この併給調整の件数も極めて少ないのではないかと想像される一方、労働基準法の「使用者」の数は膨大であり、「使用者」すべてが別表の規定する「情報提供者」とすることは不可能ではないかと思われる。併給調整の効果を検証するためには、併給調整先との併給調整実績が明らかにされる必要があるが、やはり、その検証に必要な併給調整実績は明らかにされていない。
 政府は、共通番号制度導入のメリットとして、情報提供ネットワークシステムによって、申請書類の簡素化及び、給付間の併給調整を掲げるのであれば、その検証を可能とする説明や実績等を明らかにすべきである。

一 別表第二には、百十五の情報照会者の事務について規定しているが、私が、別表第二の三の健康保険組合の事務で例示したように、別表第二の三には、申請書類の簡素化の対象となる「健康保険法による保険給付の支給に関する事務」がある。その中には、私が例示した扶養手続に係る申請書類の簡素化以外にも、高額医療・高額介護合算療養費制度において、介護自己負担額証明書の申請書類の簡素化もある。百十五の情報照会者の事務について、申請書類の簡素化を想定している事務・手続きについて、想定しているものを情報照会者ごとに個別に明らかにされたい。
二 百十五の情報照会者の事務のうち、申請書類の簡素化を想定している事務・手続きの中には、私が日本私立学校振興・共済事業団の扶養申請手続きなどで例示したように、申請者によっては、情報提供ネットワークシステムによって提供された情報では完結せず、申請者に戸籍謄本(抄本)などの提出が必要となることが考えられる。百十五の情報照会者の事務のうち、申請書類の簡素化を想定している事務・手続きの中で、情報提供ネットワークシステムで、申請者に求める証明書類の全てを無くせるものはどれか明らかにされたい。また、先の例のように、戸籍謄本など自ら取りに行かなければならない書類が残る事務はどれか。提出する必要が残る書類名(戸籍謄本など)とともに明らかにされたい。
三 別表第二には、百十五の情報照会者の事務について規定しているが、私が、別表第二の四十三の市町村長又は国民健康保険組合の事務で例示したように、併給調整の対象となる事務がある。その例示で述べたように、この場合、厚生労働省からの説明によれば、法により併給調整の対象となる給付の支給に関する情報は二十五にのぼり、給付主体もそれぞれである。百十五の情報照会者の事務について、併給調整の対象となる給付及びその主体について、それぞれの法律が想定しているものを情報照会者ごとに個別に明らかにされたい。
四 百十五の情報照会者の事務について、別表第二の二段目の「事務」を規定する個々の法律が要求している併給調整は、すべて、情報提供ネットワークシステムによって情報提供することが可能となっているのか。例えば、別表第二の三十九、国家公務員共済組合の併給調整規定では、国家公務員共済組合法第六十条第一項に規定する他の法令による給付の支給に関する情報を国家公務員共済組合法第六十条第一項に規定する他の法令による給付の支給を行うこととされている者から提供する規定になっているが、国家公務員共済組合法第六十条は、さらに、第二項、第三項もあり、これらは、別表第二の三十九から外れている。併給調整は、情報提供ネットワークシステムによっては完結せず、これらについては、従来通りの手続が必要になっている。まず、百十五の情報照会者の事務について、別表第二の二段目の「事務」を規定する個々の法律が要求している併給調整が、情報提供ネットワークシステムによって完結する併給調整にかかる事務を明らかにされたい。次に、情報提供ネットワークシステムによっては完結しない事務については、従来通りの手続が必要となる併給調整対象の支給主体及び、どのような支給なのかを明らかにされたい。また、なぜ、その併給調整対象の支給情報及び支給主体を情報提供ネットワークシステムの対象からはずしたのか。その理由を明らかにされたい。
五 政府は、共通番号制度導入のメリットとして、サービスの申請等にあたって所得証明書等の書類の提出が不要となる、給付間の併給調整等を的確・効率的に行うことができるということを掲げてきた。しかし、実際に、具体的にどのような事務において、どのような書類の提出が不要になるのか、どのような併給調整が可能になるのか個別具体的に説明してこなかった。これでは、政府がいくらこうしたメリットを説明しても、国民の理解を得ることは不可能であると考えるが、安倍内閣の見解を問う。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.