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平成二十六年二月二十五日提出
質問第四九号

瀬戸石ダム水利権更新に関する質問主意書

提出者  吉川 元




瀬戸石ダム水利権更新に関する質問主意書


 国土交通省九州地方整備局は、二月十二日、電源開発株式会社(J−POWER)が球磨川に持つ発電用の瀬戸石ダム(芦北町)の水利権(取水・占有)について更新を許可した。期間は二〇三四年三月末までの二十年にわたる。
 瀬戸石ダムは、一九五五年に三十年間の水利権を取得し、一九五八年に完成。一九八四年に水利権を三十年更新しており、今回が二度目の更新である。
 瀬戸石ダムの完成以来約六十年間、ダム周辺や上流地域では、洪水時の土砂堆積による水位上昇で家屋や道路の冠水による水害が頻発、ダム放流による振動被害、ダム湖周辺の護岸崩壊、瀬や淵の消失によるアユなどの漁場や産卵場所の消失、魚族の移動阻害とウナギやアユなどの漁獲高の激減、赤潮やアオコによる水質汚濁と異臭、ヘドロの発生等々、長年にわたって苦難を強いられてきた。
 瀬戸石ダムの設置者である電源開発株式会社は、これまで、地元住民から瀬戸石ダムの問題を指摘されてもまともに対応しようとせず、意見交換会や説明会の開催要望についても無視する姿勢に終始してきた。
 周辺住民の大多数は瀬戸石ダムの撤去を望んでおり、市民団体等は、熊本県や国に対し、再三に渡って、瀬戸石ダムの水利権更新を認めず、ダム撤去を行うよう要請をしてきた。
 国土交通省は、二〇〇二年五月から二〇一三年五月までの間、「ダム検査規程」第四条に基づき、六回に渡る定期検査を実施した。その結果は六回とも「総合判定A」であり、「ダムおよび当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応が必要」だと指摘し、「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」を電源開発株式会社に求めてきた。
 しかし、電源開発株式会社は、国土交通省の定期検査の指摘に対し、抜本的対策を取らないまま、二〇一三年十二月三日、「瀬戸石ダムの発電の形態に変化はない」として、漁業権を持つ球磨川漁協等の同意を不要とする単純更新を求めた。
 そして、国土交通省は二〇一四年一月早々に、水利権更新を認める方向で熊本県知事に意見を求めるに至った。熊本県は二〇一四年二月十二日に、瀬戸石ダムの水利権更新について環境保全や水産振興、治水面の安全性確保等の附帯意見を添えた上で、水利権更新の意見照会に対し、支障なしと回答した。
 国土交通省はその回答を受け、取水量を中心とした審査は問題なく、知事の意見と合わせて更新許可の条件がそろったとして、熊本県からの回答受領からわずか三時間後に、電源開発株式会社に対して瀬戸石ダムの水利権更新許可を行っている。
 現在撤去工事が進められている荒瀬ダムの水利権更新時、国土交通省はダム定期検査の「総合判定A」という結果に基づき、熊本県知事に対して「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」を求めている。
 熊本県はこの指摘に沿って、ダム湖内の堆積除去、道路側壁の補修、洪水被害補償、赤潮対策、泥土の除去、下流への土砂補給、河川環境の向上対策、塵芥の除去等を検討し、発電機やダムゲートなどの主要設備の取り換え、メンテナンス等を合わせ、約七十三億円超の費用が必要と試算した。その上で、荒瀬ダム存続の是非を検討した結果、存続は「技術的にも費用的にも困難」ということで、当時の潮谷知事の荒瀬ダム撤去表明に至った経緯がある。
 国土交通省は、荒瀬ダムの水利権更新時には厳しい条件を課したにもかかわらず、今回の瀬戸石ダムの水利権更新に際しては、「総合判定A」という結果に伴う指摘事項について、抜本的な対策が行われないまま更新を認めている。
 しかも、熊本県知事が附帯意見で求めた事項について、何らの対応をすることなく水利権更新許可に至ったことは、国の審査が「許可ありき」で進められてきたと言わざるを得ない。
 河川法は、その目的に「公共の安全の保持」を掲げ、河川を国民共有財産としている。この目的に沿えば、被害を受けている周辺住民の瀬戸石ダム撤去を求める声、あるいは球磨川漁協の瀬戸石ダム水利権更新の反対決議等に真摯に耳を傾け、意見聴取等を重ね、丁寧な審査手続きを行うべきであったと考える。
 よって、以下質問する。

一 「ダム検査規程」第四条に基づく定期検査は、三年に一回以上検査を行うことになっている。瀬戸石ダムの過去六回の定期検査における、@上流における堆砂等による河床又は水位の上昇、A貯水池内の河岸又はその付近の土地の崩壊又は地滑りの恐れ、Bダム管理が適正に行われているかどうかの管理記録の確認――についての検査結果を、できる限り詳細に示されたい。
二 右の定期検査の実施結果として「総合判断A」の判定が繰り返され、二〇一三年五月の検査結果では「ダムおよび当該河川の安全管理上重要な問題があり、早急な対応を必要とする」と指摘し、国土交通省は、電源開発株式会社に「堆砂対策」「水質対策」「洪水被害対策」「護岸補修」等の対応を求めている。これに対し、電源開発株式会社が実施してきた対策を示されたい。
三 今回の電源開発株式会社による瀬戸石ダム水利権更新申請に対し、国土交通省は、二〇一四年二月十二日、水利権更新に支障なしとする熊本県知事からの回答を受け、回答受領からわずか三時間後に電源開発株式会社に水利権更新の許可を通知している。瀬戸石ダムの定期検査結果に対し、電源開発株式会社が十分に対応しているとは到底考えられない現状に加え、熊本県知事の附帯意見に対応しないまま、なぜ水利権更新を許可することが可能なのか。
四 瀬戸石ダム周辺住民や上流地域の住民は、長年に渡って、ダム放流時の振動・騒音被害、洪水時の水害、ダム湖のアオコや赤潮の発生、悪臭等に悩まされ、球磨川漁協は、瀬戸石ダムの水利権更新反対の決議を行っている。一方、河川法第一条は「公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進すること」を目的に掲げ、同第二条では「河川は、公共用物であって、その保全、利用その他の管理は、前条の目的が達成されるように適正に行われなければならない」ことを河川管理の原則等として第一項に定めている。これら、河川法の定める条文に従えば、国土交通省は熊本県知事に対する意見照会にとどまらず、ダム周辺や流域の住民、球磨川漁協から意見聴取等を行い、丁寧な審査手続きをすべきであったが、いかに考えるか。

 右質問する。



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