質問本文情報
平成二十六年五月十六日提出質問第一六四号
日豪EPAに関する第三回質問主意書
提出者 鈴木貴子
日豪EPAに関する第三回質問主意書
本年四月七日、安倍晋三内閣総理大臣とオーストラリアのアボット首相との会談により、両国間で進められてきた日豪EPAの締結が大筋で合意されたと報じられている。右と「前々回答弁書」(内閣衆質一八六第一二〇号)並びに「前回答弁書」(内閣衆質一八六第一四一号)を踏まえ、再度質問する。
二 「前回答弁書」でいう「景気や為替の変動等の要因による各国との貿易及び投資の状況」に変化はないと仮定した場合、日豪EPAにより、我が国のGDPはどれほど増大することになるか、政府として試算を行っているか。
三 二〇〇六年に北海道庁が行った試算によると、日豪EPA締結により北海道経済は関連産業全て含めて約一兆三千七百十六億円の損失を出し、農家戸数も二万一千戸減少すると見られている。更に、道内総生産も、一九九七年の北海道拓殖銀行の破綻時を上回る四.二%の減少を見せ、関連産業で四万七千人、離農する農家も含めると八万八千人の失業者が出て、道内完全失業率は八.五%になるとのことである。「前回答弁書」では、政府としてこの試算を承知しているとの答弁がなされている。政府としても、北海道が行ったような形で、具体的な数字を挙げた、日豪EPAによる我が国への影響を出すべきであると考えるが、それをしない、またはできないのはなぜか。
四 日豪EPAにより、我が国の産業、とりわけ一次産業、農業はどのようなマイナスの影響を受けるかという問いに対し、「前回答弁書」では「政府としては、今回の日豪EPAの大筋合意の内容を前提とした具体的な試算は行っていないが、平成十八年に、農林水産省において、仮に日豪EPAにより豪州産農産物の関税が撤廃された場合の影響について、価格面で不利な国産農産物が豪州産の農産物に置き換わるといった一定の仮定の下で、試算を行ったところである。」とされている。政府として、今回大筋合意に至った内容を前提としての試算をいつごろまでに行い、国民に情報を開示する考えでいるのか説明されたい。
五 本年四月二十三日の北海道新聞記事によると、同月二十二日、農林水産省の諮問機関である食料・農業・農村政策審議会において、カロリーベースで五十%とされている食料自給率の目標について、「過大な設定」であるとの認識が示されたとのことである。右について「前回答弁書」では「現行の食料自給率目標等の検証についての議論が行われた。」とある。右の「議論」の中でどのような意見が出されたのか、詳細に説明されたい。
六 また「前回答弁書」では、「次期の基本計画における食料自給率の目標については、今後、当該企画部会の議論等を踏まえ、検討していく考えである。」とされている。政府として、今後の議論によっては、現行の食料自給率の目標を変える可能性もあるということか。
七 平成三十二年度における食料自給率の目標を、供給熱量ベースで五十パーセント、生産額ベースで七十パーセントと定めた現行の目標に対し、政府としてどのような見解を有しているか。
八 日豪EPAにより、政府として我が国の食料自給率はどう変わると推測しているのかとの問いに対し、「前々回答弁書」でも「前回答弁書」でも、「国内の農業生産及び食料消費の状況や、景気や為替の変動等の要因による各国との貿易の状況の変化等に影響されるものであり、日豪EPAの締結のみによる食料自給率への影響を具体的に推計することは困難である。」といった答弁がなされている。右で言う「国内の農業生産及び食料消費の状況や、景気や為替の変動等の要因による各国との貿易の状況」に変化はないと仮定した場合、日豪EPAにより、我が国の食料自給率にどのような変化が生じるか、政府として推計をすることは可能ではないのか。
九 これまで種々指摘したように、GDPにせよ食料自給率にせよ、今回大筋合意に至った日豪EPAによる我が国への影響について、政府は国民に十分な説明をしておらず、また説明する上で国民の理解を促す一助となる試算を行うという努力も足りていないのではないのか。
右質問する。