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平成二十六年六月五日提出
質問第二〇一号

福島第一原子力発電所における「凍土壁」の選択経過及び代替工法に関する質問主意書

提出者  辻元清美




福島第一原子力発電所における「凍土壁」の選択経過及び代替工法に関する質問主意書


 汚染水問題の早急な完全解決は、日本の政府と国民が世界に負った責務である。
 原子力災害対策本部は、平成二十五年九月三日、汚染水問題に関する基本方針において、凍土壁の構築を決定するとともに、「潜在的なリスクを洗い出し、不断に具体的な予防対応や緊急対応のあり方について検討する」としている。
 原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会においても、「撤退条件」の予めの検討の必要性が指摘されている。
 このような凍土壁が選択された経過につき、平成二十五年五月三十日に提出された汚染水処理対策委員会報告書(以下五月三十日報告書)では、施工方式として、凍土壁、粘土壁、グラベル連壁の三つを取り上げて比較検討して凍土壁の採用に至ったとされ、新川達也経済産業省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室長は、平成二十六年四月十八日の第二十回原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会においても、「遮水能力が高く地下水の流入抑制効果が高いということ、施工期間の短さ・施工可能性の高さ、遮水壁を取り囲む範囲を狭くできること、それから、取り扱う地下水の総量が少なく、地下水位の管理が比較的容易であることから判断した。」と述べている。
 一方、茂木経済産業大臣は、平成二十五年九月三十日の衆議院経済産業委員会において、馬淵澄夫議員が、粘土壁等の恒久的な「第二壁の検討を同時に行うべきではないか」と質問したことに対し、平成二十五年五月三十日の汚染水処理対策委員会報告に「格納容器の補修が完了し、建屋内の汚染水が完全に取り除かれ、建屋内の除染が完了した時期(平成三十二年頃を予定)には、比較的高い遮水能力を持ち、維持・管理が比較的容易な粘土による遮水壁へと入れ替えを行うことも検討すべき」(同三十五ページ)との箇所を引用し、「フィージビリティスタディもしっかりやっていき、効果が現れない場合には、粘土方式でどこかで切り替える」、「(凍土壁が、リスクが高いと判明したときは、凍土壁を内側にして取り巻く「第二壁」を)やりませんとは言っていません」(茂木経産大臣答弁)と答弁している。
 そこで、凍土壁が選択された経過、代替工法に関連して、以下のとおり質問する。

一 第二十回 特定原子力施設監視・評価検討会において、資源エネルギー庁新川達也原子力発電所事故収束対応室長は、「建屋内の汚染水を建屋周辺の地下に流出させないため、建屋周辺の地下水位を建屋内の汚染水位より常に高く維持することは極めて重要」と述べ、「取り扱う地下水の総量が少ないほど、地下水位管理が比較的容易となることから、遮水効果が高く、遮水壁で囲い込む範囲が狭い、凍土方式とすることが適切」と述べている。
 このような議論は、水の移動と、水中にある(核)汚染物質の移動・伝播とを混同させがちな点で、大きな問題がある。汚染物質の移動ないし伝播には、もちろん「移流」によるものもある。しかし、建屋壁とそれを取り巻く遮水壁との間の水は、土中にあって、ほとんど静止しており、建屋内の汚染された自由水とは、様々の個所で接触状態にある。このときは、「移流」でなく「拡散」による汚染物質の移動ないし伝播が卓越する可能性もある。今回の福島第一原子力発電所での汚染水について、経済産業省は「移流」と「拡散」に関し、どのような具体の実験事実と理論認識を持っているか、明らかにされたい。
二 五月三十日報告書では、施工性、工期、施工エリア(遮水壁延長)の観点から代替案比較がなされたと記載されている。しかし、凍土壁が選択される場合の最も重要な論点である「その遮水壁が恒久構造物か仮設構造物か」の点について、他の工法との比較評価はなされたのか。またそこで、専門的知見を得たのか。なされたとすれば、何時、どの機関・委員会等で、誰との間で、どのような比較評価がされたのか、検討結果とともに、回答されたい。
三 福島第一原子力発電所の原子力建屋周辺での地下水の実流速について、平成二十五年九月三十日の衆議院経済産業委員会において中西宏典経済産業省大臣官房審議官が「現状、具体的な流速をはかっているわけではございません」と答弁しているが、その後今日までに、地下水の実流速の調査はなされているか。なされている場合には、その調査地点、調査時期等の調査結果を公開すべきと考えるが、経済産業省の見解を明らかにされたい。なされていない場合は、その理由を明らかにされたい。
四 凍土壁の閉合過程では、地下水の実流速が変化すると考えられるが、考え得る非閉合箇所での地下水の実流速の変化を、数値的に予測しているか。している場合には、その内容を明らかにされたい。
五 十m四方、深さ二十七〜二十八mの小規模・短期(凍結開始から二カ月)の凍土壁実験で得られたどのようなデータから、総延長約一・五km、凍結維持期間七年といわれる大規模・長期運用の凍土壁を構築するにあたっての、閉合可能性、施工可能性及び耐久性を、どのように予測したのか、科学的・技術的に明らかにされたい。
六 五月三十日報告書は、「建屋近傍には配管やトレンチ等の埋設構造物が多数あり、そうした構造物があっても施工可能で、周辺に汚染水を流出させない施工方式であることが必要である」(同三四頁)ことをあげて、凍土方式が適切としている。しかしこれら埋設管中の水は、上半が空いた開水路の状態で存在する可能性が高い。このときは、埋設管を取り巻く凍土は埋設管全断面を遮水することができず、これらの埋設管等は、別工法によって、別途完全に遮断しておく必要がある。このように、埋設管や埋設構造物について、単独では遮水効果が生じないため、別工法による遮断が必要となる凍土方式が、他の工法よりも優位となるとした根拠を明らかにされたい。
七 第二十二回原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会において、嘉門雅史京都大学名誉教授は、「凍結工法をやっている会社はたった二社しかない」が、「いろいろな遮水工法があ」り、「できる技術者も会社も多」いと指摘し、「凍土式の遮水壁は反対」と述べている。
 1 「いろいろな遮水工法があ」り、「できる技術者も会社も多」いとする嘉門名誉教授の指摘について、政府は検証を行ったか。
 2 嘉門名誉教授は「凍結工法をやっている会社はたった二社しかない」と指摘しているが、政府も同じ認識か。そうであれば、それはどこか。
 3 凍土壁ではないSoil Mixing Wall工法、Cement Deep Mixing工法、Trench Cutting Remixing Deep Wall工法、RC連続壁工法などは、何れも恒久的に機能させうる、確立された、世界に誇る日本の技術だと考えるが、政府の認識はいかがか。
 4 上記のような恒久的な遮水壁である地中連続壁のいくつもの工法は、凍土壁と異なり、これらの建屋間、建屋内の埋設管等を通じた地下水の流出入及び漏水を、完全に遮断することができるのではないか。
 5 上記のような恒久的地中連続壁は、凍土壁よりも、信頼性、工期、工費のどの点においても、はるかに優れると考えるが、政府の認識はいかがか。このような恒久的地中連続壁に比べて、凍土壁の方が、信頼性、工期、工費の点においてすぐれているとした点について明らかにされたい。
 6 上記のような恒久的地中連続壁を、日本の土木事業者が「オールジャパン」で構築すれば、今から一年以内にも、これを完成することができるのではないか。恒久的地中連続壁の信頼性、工期、工費について、早急に検討を開始すべきではないか。政府の見解を問う。
八 スリーマイル島原子力発電所事故では、原子炉は一基で、炉心融解により融解した燃料は六十二トンで、それぞれ福島第一原発事故の約四分の一であったと報告されている。また事故の翌年に、原子炉建屋内への人間の最初の立ち入りができたものの、その後六年で原子炉建屋の除染を目指したが、実際には約十一年を要した。福島第一原子力発電所では、原子炉は四基、デブリの量は四倍、汚染水の処理もままならず、三年たった現在でも原子炉建屋内部に人が入ることは不可能である。また、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故では、事故処理従事者は延べ八十六万人に及ぶといわれているが、現在の日本でそうした動員が可能とは考えられない。このように、事故の規模からみても、事故処理従業者の数をみても、凍土壁が仮設構造物であるがゆえに必要不可欠である建屋の内部からの止水工事が、「七年以内」に完了するのは事実上不可能であると考える。
 1 茂木経産大臣は「(「第二壁」を)やりませんとは言っていません」と答弁しているが、「第二壁」の検討は、何時、どの機関・委員会等で、誰との間で、どのような検討がなされているか、明らかにされたい。なされていない場合は、その理由を明らかにされたい。
 2 「第二壁」の検討について、経済産業省が民間に委託して検討している事実はあるか。あるとすれば、委託契約時、委託先、委託事項、委託金額を明らかにされたい。
 3 もし検討がなされていない場合は、茂木経産大臣答弁にあるように、早急に「第二壁」構築の検討に入るべきと考えるがいかがか、それを第一壁として、速やかに構築に着手することこそ、汚染水対策に「国が前面に出る」ことではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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