衆議院

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平成二十六年十二月二十四日提出
質問第一号

集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更等に関する質問主意書

提出者  岡田克也




集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更等に関する質問主意書


 本年七月一日、政府は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する安保法制の基本方針を閣議決定し、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更等を行った。本閣議決定は、戦後、国会と政府が積み上げてきた憲法九条の解釈を、国会での議論も国民の理解もほとんどないなかで、一内閣が安易かつ拙速に変更するという悪しき前例となったが、その後行われた幾度かの国会審議においても、安倍総理をはじめとする政府の答弁の大半は不明確、不十分なものであった。
 そこで、本閣議決定に関連して、政府の国会答弁も踏まえ、以下質問する。

一 自衛権行使の新三要件について
 1 内閣法制局長官は、第一要件の「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とは、「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうものと解される」(七月十四日衆議院予算委員会)としている。この答弁は内閣としての公式見解か。
 2 「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」とは、具体的にどのような状況なのか。近隣諸国で武力攻撃が発生し、放置すれば我が国に対する武力攻撃に発展することが明らかな状況と同義と考えてよいか。
 3 そうであれば、武力攻撃事態(武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態)とどこが異なるのか、明らかにされたい。
 4 ペルシャ湾に機雷が設置され、我が国に対する石油供給が制限される場合も、第一要件に該当する可能性がある旨政府は答弁しているが、機雷設置に関して、具体的にどのような状況であれば、第一要件に該当することになるのか。
 5 石油価格が一時的に大幅に上昇したり、量的に不足したりすることは、国民生活に大きな影響を及ぼす可能性があるが、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、重大な被害とまではいえない。このような経済的理由が第一要件に該当することを認めると、「武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、重大な被害」と限定したことの意味が失われるのではないか。
 6 ペルシャ湾に機雷が設置されたケースで、戦闘行為が事実上停止されているが、停戦の合意が正式にはなされていない場合を例に挙げて、自衛隊による機雷除去が可能であると政府は説明している(七月十四日衆議院予算委員会、安倍総理答弁)。これは、戦闘行為が事実上停止されていなければ、自衛隊による機雷除去は新三要件に該当しないということか。
 7 日米同盟に深刻な影響があるということが、そのまま第一要件に該当すると解しているのか。七月十四日の衆議院予算委員会における岸田外務大臣の答弁は判然としない。内閣として、考え方を整理し、明確に説明されたい。
 8 第一要件にある「我が国と密接な関係にある他国」について、総理は、同盟国・米国に限定されるものではない旨答弁しているが、それでは「我が国と密接な関係にある他国」とはどういう関係の国なのか。その定義を明らかにされたい。
 9 例えば、同盟国ではないが安全保障上の協力関係にある国(物品役務相互提供協定を締結している豪州等)や経済・エネルギー上極めて深い関わりのある国(相当の原油を輸入している中東諸国等)は「我が国と密接な関係にある他国」に該当する可能性があるのか。また、我が国と地理的に極めて近接している国(韓国等)はどうか。
 10 「我が国と密接な関係にある他国」に地理的範囲はあるのか。地理的範囲があるとすれば、それはどういう範囲か。ないとすれば、「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃が発生すれば、たとえ地球の裏側であっても、憲法上は集団的自衛権を行使することが可能になると解するが、政府の見解如何。
 11 総理は、第三要件の「必要最小限度の実力行使」について、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味する」と答弁している(七月十四日衆議院予算委員会)。この答弁の意味が、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除するための必要最小限度の武力行使が認められるということであれば、他国に対する武力攻撃が止まるまで我が国も武力行使が可能ということになる。他国に対する武力攻撃を排除するための必要最小限度ではなく、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度と解するべきではないか。
二 集団安全保障について
 1 総理は前国会において、「憲法上、武力行使が許容されるのは、あくまで新三要件を満たす場合に限定される。これは集団的自衛権となる場合でも、集団安全保障となる場合でも変わらない」と答弁した(九月三十日衆議院本会議)。これは、新三要件を満たせば、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置に我が国が参加し、武力を行使することが、憲法上は可能であるという意味か。
 2 七月一日の閣議決定では、国連の集団安全保障措置に関する言及はない。自衛隊による集団的自衛権行使が先行するケースで国連安保理決議がなされた場合には、集団安全保障措置に該当する活動になったとしても、そのまま武力行使ができるとの議論は、閣議決定案をめぐる与党協議においてあったものの、新三要件が満たされれば、集団安全保障措置一般に参加し、武力行使ができるとの結論には至っていないと承知している。政府は見解を変更したのか。
 3 仮に、新三要件を満たせば集団安全保障措置に参加し、武力行使することも憲法上可能であるとの見解に立つとしても、立法論としてどうするかは別の判断もあり得る。次期通常国会で集団安全保障措置への参加に関する法案提出を予定しているのか。
 4 集団的自衛権であれ、集団安全保障であれ、他国の領域に自衛隊を派遣し、武力を行使することは憲法上禁じられているとの従来の政府解釈は変わっていないのか。また、これは新三要件のどこによって禁じられているのか。
 5 総理は、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」と答弁した(九月三十日衆議院本会議)。しかし、新三要件を満たせば集団安全保障措置に参加し、武力行使ができるということであれば、憲法上は湾岸戦争やイラク戦争での戦闘にも参加することは可能になるというのが、政府解釈の論理的帰結ではないか。
 6 同時多発テロに対する自衛権の行使としてなされた米国のアフガニスタン攻撃において、NATO軍同様、我が国も集団的自衛権を発動して武力行使を行うことは、憲法上可能なのか。また、国連安保理決議に基づくISAFの治安維持活動への参加はどうか。
 7 総理は、「敵を撃破するために大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することは、必要最小限度の自衛の措置の範囲を超えるものだ」と答弁した(十月三日衆議院予算委員会)。しかし、これは第三要件を満たさないとしたものであり、第一要件を満たさないということにはならない。言葉を変えれば、大規模空爆など必要最小限度を超える場合でなければ、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することもあるということではないか。仮に、ないというのであれば、第一要件のどこを満たさないのか。
 8 自衛隊が集団安全保障措置に参加したにもかかわらず、その後、我が国に対する危険がなくなり、新三要件の第一が満たされなくなったからといって、当該自衛隊が活動を停止することが、各国が協調して活動しているなかで可能なのか。
 9 国連の集団安全保障措置は、国際社会の平和と安全の維持、回復のための活動であり、自国防衛とは明らかに目的が異なる。自衛権の新三要件に該当するからといって、我が国が集団安全保障措置に参加し、武力行使することを憲法が許容していると考えることに、そもそも問題があるのではないか。
三 正当な集団的自衛権の行使について
 1 「我が国と密接な関係にある他国」の武力行使が正当な自衛権の行使といえるのか疑義がある場合もあり得るところ、かかる場合において、我が国が集団的自衛権を行使すれば、果たしてそれは正当な集団的自衛権の行使といえるのか。また、そういった可能性について、政府はどのように認識しているのか。
 2 「我が国と密接な関係にある他国」の武力行使が正当な自衛権の行使か否か、どういった基準によって判断し得るのか。
四 その他
 1 後方支援と武力行使との一体化について、七月一日の閣議決定では、「他国が『現に戦闘行為を行っている現場』ではない場所で実施する補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該他国の『武力の行使と一体化』するものではない」としている。ここでいう「『現に戦闘行為を行っている現場』ではない場所」と従来の「非戦闘地域」(現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域)とは、「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない」という点以外、具体的にどこが異なるのか。
 2 武力攻撃に至らない侵害、いわゆるグレーゾーン事態への対処について、閣議決定では、自衛隊の治安出動や海上警備行動の「状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策について具体的に検討する」としているが、どういうことを想定しているのか。

 右質問する。



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