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平成二十七年七月二日提出
質問第三〇五号

イラク派遣自衛隊員の自殺率の算出及び比較等に関する再質問主意書

提出者  阿部知子




イラク派遣自衛隊員の自殺率の算出及び比較等に関する再質問主意書


 私は去る六月二十二日に「イラク派遣自衛隊員の自殺率の算出及び比較等に関する質問主意書」(以下、単に「質問主意書」という)を提出し、同三十日に政府答弁書(以下、単に「政府答弁書」という)を受領した。しかしながら、政府答弁書は合理的根拠を全く示さない不誠実なものであり、自衛隊員の自殺やメンタルヘルスに係る状況を的確に把握、分析し、効果的な対策を講じることについて、政府が真摯に取り組むつもりがあるのか大いに疑問を抱かせるものであった。仮に「自衛隊のリスク」を巡る論議を回避し、自衛隊員の自殺等の状況を小さく見せる意図があるのであれば、事実に基づく議論を妨げるものであって極めて問題であり、何よりも自衛隊員の人権を軽視するものであって到底看過しがたい。
 よって、以下質問する。

一 @ 政府答弁書は何ら根拠を示すことなく、イラク派遣自衛隊員(イラク特措法に基づく活動に従事した自衛隊員をいう。以下同じ。)の自殺死亡率の算出方法を「適切である」とした(政府答弁書「一の@について」)。しかしながら、イラク派遣自衛隊員の自殺死亡率の算出方法として、死亡を含む退職による在職者の毎年の減少を考慮せずイラク派遣自衛隊員数約八千七百九十人に対する割合とした上で、単純に十年で除して一年間の自殺死亡率に換算したことは、実態の過小評価につながるのではないか。統計学等の知見を踏まえて理論的に政府の見解を示されたい。
  A 政府答弁書「一の@について」で示された方法以外にも、イラク派遣自衛隊員に係る各年度の在職者数の平均に占める自殺者の割合に十万を乗じて得た数を十で除す方法等も考えられる。このような算出方法ではなく、政府が用いた算出方法の方が適切であるとする根拠は何であるか答えられたい。
  B イラク派遣自衛隊員の自殺死亡率に係る比較としては、派遣隊員約八千七百九十人に対する自殺者二十九人の割合を、平成十七年度に在職した(男性)自衛官のうち平成十七年度から二十六年度の間に自殺した者の割合や適切に選択された一般人の対照集団に係り同様に算出された自殺者の割合と比較するといったコホート調査の手法も考えられる。少なくとも、比較し得るよう条件を揃えたこのような方法で算出し比較することが適切と考えるが、政府の見解は如何か。
二 @ 政府答弁書は、自殺死亡率の比較対象として一般成人男性(二十歳から五十九歳)を選択したこと(「三の@について」)並びにイラク派遣自衛隊員及び男性自衛官の自殺死亡率は在職中の自殺に限られて算出されるという制約がある点を無視したこと(「二のBについて」)に関して何ら合理的な根拠を提示していない。一方、「平成二十六年度 我が国における自殺の概要及び自殺対策の実施状況」(以下、「自殺対策白書」という)は無職者の自殺リスクが高いことを示している。そこで、内閣府提供資料に拠ってみれば、統計のある平成十八年以降の有職者(二十歳から五十九歳)の自殺死亡率は、男女計の場合、最高で十万人あたり二十一・七人(平成二十一年)であり、平成二十六年は同十六・四人である。男性の場合、最高は同二十九・一人(平成二十一年)であり、平成二十六年は同二十一・八人である。いずれも、一般成人男性(二十歳から五十九歳)及び男性自衛官の自殺死亡率と比較して有意に低い。また、イラク派遣自衛隊員の自殺死亡率は算出方法に問題があり単純比較はできないが、政府の算出方法による数値は下限値であると考えられることから、やはり上記有職者の自殺死亡率は有意に低いものである。政府は何故一般有職者の自殺死亡率との比較を行わなかったのか、その理由を明確に答えられたい。
  A 同様に、一般職国家公務員の自殺死亡率は平成二十一年度に同二十三・六人、平成二十五年度に同二十一・五人であり、政府も自衛官の自殺死亡率が高いことは認めているところである(平成二十七年六月五日付政府答弁書)。政府としては、このように有職者や一般職国家公務員に比べ自衛官の自殺死亡率が高いことなど自衛官の自殺に係るデータについて、今後いかなる分析を行い、対策に活用していくつもりであるのか、真摯な方針を示されたい。
三 イラク派遣自衛隊員の自殺に係るデータの分析については、他の集団との比較に加えて、自殺者数又は自殺死亡率の推移を見ることも重要であると考える。ついては、各年度毎のイラク派遣自衛隊員の自殺者数又は自殺死亡率を示した上で、政府の所見を明らかにされたい。
四 @ 平成十五年度から平成二十六年度までの期間において在職中に死亡した自衛官について、死因別(自殺、病死、事故、その他の別)及び合計の人数並びに死亡者に占める自殺者の割合を年度毎に、かつ部隊別と合計で示した上で、その推移等についていかなる見解であるか明らかにされたい。
  A 旧テロ対策特措法、イラク特措法及び補給支援特措法に基づき派遣された自衛隊員のうち在職中に死亡した者について、@と同じ分類かつ根拠法の別で示した上で、派遣後の自衛隊員の状況等についていかなる認識であるか答えられたい。
  B 人事院提供資料によれば、一般職国家公務員の死亡者に占める自殺者の割合は、最近十年間の最高で二十四・九%(平成二十一年度)であり、平成二十五年度は二十一・四%であるが、これを@及びAで示された死亡者に占める自殺者の割合と比較して、いかなる見解であるか答えられたい。
  C 「自殺対策白書」では有職者・無職者の別ではないものの、年齢階級別・男女別に死因順位や構成割合を示し、分析を行っている。自衛官の自殺死亡割合は一般人に比べて高い傾向が見出されると考えられるが、「自殺対策白書」における当該データと@及びAの結果とを比較して、いかなる所見であるか具体的な分析を含め示されたい。
五 政府答弁書は「四の@について」及び「四のAについて」において、防衛省における全自衛隊員等に対するメンタルヘルスチェックの結果と世界保健機関(WHO)の調査結果とが比較可能であることについても、両者の比較から「心の病を抱える隊員というのは、一般社会と比較して、決して高いとは言えない」との結論が導き出せることについても、具体的な根拠を示していない。防衛省担当者の説明及び政府答弁書の記述に拠る限りは、両者の目的、対象集団、対象疾患等が明らかに異なっている。例えば、前者は「傾向を把握」するものであり確定診断より広範な部分を捉えていると言えるが、同時に、前者の「うつ病性障害及び不安障害」は後者の「何らかの精神障害」(防衛省担当者が持参した説明資料ではより具体的に「不安障害、気分障害、衝動制御障害、物質依存」と記されている)の一部であることは明白である。これだけをもってしても両者の比較が困難であるにも関わらず、両者を「単純に比較した」(前掲資料)とされており、比較として有意であるとは到底理解し難い。以上の疑義に明確に答え、両者の比較とその結論が成立するとする合理的根拠を示されたい。
六 @ 政府答弁書「五の@について」では「精神科医である防衛医科大学校教授等による専門的見地からの意見を参考にし」たとされているが、「精神科医である防衛医科大学校教授等」が具体的に誰であるのかを特定するとともに、「専門的見地からの意見」の具体的内容を明らかにされたい。
  A 防衛医科大学校は防衛省の施設等機関であり、前記の「専門的見地からの意見」はあくまで防衛省組織内部からの意見でしかなく、部外の専門家を交えてより客観的に検討すべきであることは論を待たない。政府答弁書はそのような作業について極めて消極的であって、防衛省・自衛隊の閉鎖性を表しており極めて問題であると考えるが、見解は如何か。
七 「自殺総合対策大綱」(平成二十四年八月二十八日閣議決定)は「第3 自殺を予防するための当面の重点施策」の「1.自殺の実態を明らかにする」において「自殺者や遺族のプライバシーに配慮しつつ、社会的要因を含む自殺の実態を把握するための調査研究とともに、自殺対策に関する情報の提供等を推進することにより、自殺の実態を踏まえた対策を推進する」とし、その「(1)実態解明のための調査の実施」では「社会的要因を含む自殺の原因・背景、自殺に至る経過、自殺直前の心理状態等を多角的に把握し、自殺予防のための介入ポイント等を明確化するため、いわゆる心理学的剖検の手法を用いた遺族等に対する面接調査や、救命救急センター等で治療を受けた自殺未遂者に関する調査等を継続的に実施する」としている。政府答弁書や防衛省担当者からの聞き取り等からは、自衛官の自殺について、客観的データが未整備である上に、個別事例の分析についても不十分であるのみならずその拡充について消極的な姿勢が感じられる。また、内閣府、人事院及び厚生労働省等が有する自殺対策に係る知見が防衛省と十分に共有されていないとの印象も受ける。防衛省は自衛隊員の自殺対策について、前記引用部分を含む自殺総合対策大綱を踏まえた取り組みを具体的にどのように推進する方針であるのか、また内閣府、人事院及び厚生労働省は自殺対策に係る知見を防衛省とどのように共有していくつもりであるのか、それぞれ明確に示されたい。

 右質問する。



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