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平成二十八年二月十日提出
質問第一二三号

マイナス金利政策が成功する条件に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




マイナス金利政策が成功する条件に関する質問主意書


 アベノミクスが目標としている二年で二%のインフレ目標、デフレ脱却、実質二%、名目三%の成長目標のいずれも達成に失敗している。金融緩和の限界が見えてきた結果苦し紛れにマイナス金利が導入されたが、その効果も限定的だと言われている。デフレ脱却の失敗のおかげで、かつて世界トップレベルにあった一人当たりの名目GDPも今や二十位まで落ちてしまった事は答弁書「内閣衆質一九〇第三九号」で政府も認めるところである。
 これに関連して質問する。

一 アベノミクスの三本の矢は、@金融政策A財政政策B成長戦略である。実質成長率は二〇一三年度が二.〇%、二〇一四年度がマイナス一.〇%であった。この二年間で@金融政策もB成長戦略もほとんど変化ないのに、A財政政策だけは二〇一四年度には大きく後退している。このことを見れば、実質成長率はほとんど財政政策で決まっていると考えられるが同意するか。
二 平成二十二年八月に内閣府計量分析室が発表した乗数からも明らかなように、財政支出を拡大すれば、実質GDP成長率が上昇し、インフレ率も高まると考えるが同意するか。
三 内閣衆質一九〇第三九号において、平成二十九年四月の消費税率の十%への引き上げは国際社会における我が国の信認を確保するためだと述べている。一方で内閣衆質一八九第四二〇号において日本も参加したG二十で発表されたコミュニケは法的拘束力はなく、国際公約ではないので無視してよいと述べており、国際社会における我が国の信認を確保する努力を全く行っていない。この二つの発言は矛盾するのではないか。
四 一月二十九日に日銀はマイナス金利を導入した。これは銀行の収益を悪化させ、貸出を停滞させる可能性がある。現在の日本は鉱工業生産指数も低下、実質消費支出も四か月連続のマイナスであり、二〇一五年十〜十二月期はマイナス成長になるという見方が強まっている。このように国内の景気が悪化していて、しかも来年は消費増税で更に景気が悪化しそうな状況では、銀行による貸出の増加は期待できず、資金は海外に流出してしまう可能性が高い。そうであれば、まず財政支出を拡大し、景気を回復する事により、国内の資金需要拡大をすることにより日銀の政策を助けるべきではないか。
五 マイナス金利により、日銀による国債購入が困難になるのではないか。マイナス金利で日銀当座預金に資金を預けるより国債を手放さないほうが有利だからである。市場における国債の品不足を解消するには政府が国債を増発すべきであり、それが日銀の金融政策を助けるのではないか。
六 国債の発行高が増えると金利負担が増えると錯覚するかもしれないが、今後は国債の金利もマイナスになり、国債の発行残高が増えれば金利負担が減るということも考えられるのではないか。
七 国債の増発で財政赤字が増えれば国の債務のGDP比が増えると錯覚している人がいる。しかし、そうではないということは、今年一月二十一日に内閣府で発表された「中長期の経済財政に関する試算」により明確に示された。それによると今後巨額の財政赤字が続くのにも拘らず、債務のGDP比は減っていく。具体的には二〇一五年度には一九七.五%であったものが、毎年減り続け二〇二四年度には一七六.七%にまで減少するということである。このことを踏まえると、政府は財政赤字を気にする事ではなく、むしろ経済の再生のためにどれだけ財政を拡大すべきかを考えるべきではないか。
八 一月三日のTBSの時事放談で石破茂地方創生担当大臣は「財政規律が緩んでしまったらハイパーインフレしかないと強く認識している」と発言された。しかし内閣衆質一九〇第三九号ではハイパーインフレは現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていないと述べている。このことは石破大臣がTBSでの発言を撤回したと考えてよいか。
九 国債増発による財政拡大でハイパーインフレは発生しないのであれば、二〜三%のインフレ率の達成は可能なのではないか。適切な規模の財政拡大によりインフレ目標達成、デフレ脱却、三%の名目成長率の達成の全てが可能になると考えるが同意するか。
十 ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン氏が二〇一四年十一月十六日付けのNYタイムズ紙のコラムで次のように書いている。「増税を遅らせた場合、投資家が心配するのは何か?デフォルトではない。日本は自国通貨建てで借金しているのでデフォルトする必要がない。投資家が心配するのはマネタイゼーションだ。これは日本をインフレに導く。安倍総理は、人々にデフレよりもインフレへの期待を与えようと努力しているが、政府財政に対する信頼の喪失は将来のインフレに対する期待をもたらす。日本に必要なのは、無責任になることを約束する事だ。流動性の罠は、あなたを鏡の反対側に据える。鏡の反対側においては、美徳は悪徳であり、慎重さは愚かさであり、中央銀行の独立性は悪い事であり、財政赤字の中央銀行直接引受の脅威は歓迎されるべきものであって恐れるべきものではない。」
 このようにクルーグマン氏は来年の消費増税はすべきではない、政府財政に対する信頼の喪失がむしろデフレ脱却を可能にするとしているが、これをどのように考えるか。
十一 現在求められているのは内需拡大であり、政府が財政政策による内需拡大の努力をせずに企業の投資拡大を強要すれば、企業は過剰設備を抱えることとなり、将来に禍根を残す事になるのではないか。
十二 政府は自らの借金をできるだけ増やしたくないと言い、一方では企業に借金を増やして投資をせよと言う。リスクは自分でなく企業に押し付けようというもので、あまりに身勝手すぎないか。

 右質問する。



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