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平成二十八年三月八日提出
質問第一七四号

経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっている事に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっている事に関する質問主意書


 昨年後半から続く世界的な株安や、新興国からの資本流出など、金融市場の混乱で、世界経済の先行き不安が高まっている。中国・上海で開かれていたG20では二月二十七日に機動的な財政政策を実施するべきだとする共同声明が出された。
 これに関連して質問する。

一 G20の共同声明では、「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない。機動的に財政政策を実施する。」と明記された。経常黒字国であり、しかも巨額の対外純資産を持つ日本は、世界経済発展に貢献する為にも、二〇一六年度補正予算を組んで景気対策をすべきではないか。
二 内閣衆質一九〇第一二三号(以下「答弁書」とよぶ)の「一及び二について」で、政府は平成二十六年四月の消費税増税により、日本経済は深刻な悪影響を受けたことを認めた。G20の共同声明でもあるように、経済成長率を確実に上げる方法は財政を拡大する事である。例えば平成二十七年度補正予算(三.三兆円)の経済効果は実質GDPの押し上げ効果が〇.六%であると内閣府より平成二十七年十二月二十二日に発表された。名目GDPも同様に押し上げられるとして、この押し上げ効果は国の債務のGDP比を約〇.六%押し下げる。これは千兆円の国の借金の〇.六%、つまり約六兆円に相当する借金を減らしたことに相当する。驚いたことに答弁書内の「一及び二について」では、財政支出が実質GDP成長率やインフレ率に与える影響については、内外経済など様々な要因に左右されるため、一概にお答えする事は困難であるなどと述べている。ということは、平成二十七年十二月二十二日に内閣府が発表した〇.六%の押し上げ効果は信頼できないと主張するのか。
三 日本には千兆円を超える国の借金があるから、これ以上は財政出動は無理と政府は主張するのだろうか。しかし僅か三.三兆円の財政支出でGDPが増加し、実質六兆円もの借金削減効果があることが示されている。計量モデルを使って求めた乗数は平成二十二年八月に内閣府計量分析室で発表されており、財政支出を拡大すれば、GDP成長率が上昇し、国の債務の対GDP比は減少し国の借金は事実上軽くなることが示された。「全国民が一生の間、懸命に働き続けても返済は不可能なほどの巨額の借金がある」と誰もが錯覚し、絶望の果て倹約に走るしかないと国民が思っている限り、消費の拡大がなければ、景気回復もない。しかし、財政を拡大すれば国の借金は実質的に減っていくことを国民が知れば、国民は自信を取り戻し、経済復活のきっかけになると考えるが、同意するか。
四 答弁書「七及び九について」で、「我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり」とある。そのような状況なら、日本円が国際的に安定資産とみなされる事はありえないはずであり、この矛盾をどのように説明するのか。また、財政が厳しければ金利は高騰しなければならないのではないか。財政が厳しければ、政府が国債を売りに出しても誰も買わないはずだが、実際はその逆で、国債が売り出されれば買いが殺到する。これも財政が厳しくない証拠ではないか。
五 G20では、不安定化した世界経済を正常化する為に協力して「機動的に財政政策を実施する」ということで一致している。このような時に、その流れに真っ向から逆らう形で消費税増税を強行して、もしリーマンショック並みの不況を招いてしまったら国の内外から厳しい批判を浴びるのではないか。
六 消費税収は社会保障の財源に充てるとされている。しかし、カネに色はついておらず、消費税増税により経済が停滞し、税収が落ち込んだら社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を放棄する事になるのではないか。
七 消費税増税は国際公約なのか。もしそうなら、どのような法的拘束力があると主張するのか。もし、公約違反の際には、どのような制裁を受けるというのか。リーマンショック並みの不況になって、消費税増税延期、又は中止となった場合も国際的な制裁を受けるのか。
八 答弁書「八について」では「財政規律が緩み財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において、ハイパーインフレーションが起こる」とある。一方、内閣衆質一九〇第三九号の「七について」では「戦争等を背景とした極端な物不足」の際にハイパーインフレーションが起きるとある。両答弁書の内容は明らかに異なっている。現在のような物余りの時代にハイパーインフレーションが起きるのかどうか政府の見解を示して頂きたい。
九 答弁書の「十について」で、「万が一、御指摘の「政府財政に対する信頼の喪失」が生じた場合には、金利が急激に上昇することなどにより、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。」とある。政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急激に上昇(国債価格が下落)するのだそうだが、国債価格は需要と供給のバランスにより決まる。日銀がどんなに買っても国債は下落するというのか。それではいったい誰が日銀の買いを大幅に上回るほどの売りを出せるというのか。現実には日銀はマイナス金利を導入した。日銀は国債を大量に購入しており、市場では国債は品薄状態になっており、これ以上国債購入のペースを上げても間もなく限界に達する。つまり国債を買い尽くす勢いなのである。もし日銀が国債を買えなくなったら、インフレ目標を達成する前に、金融政策が限界に達したと市場が判断し、市場に不安心理が台頭してくる。マイナス金利は、金融緩和には限界はない事を示したかったと思われる。国債購入には限界があり、遠くない将来限界に達する。つまり現状では国債の売り手よりも国債の買い手(日銀)のほうが圧倒しているのであり、近い将来金利が急上昇するなどということはあり得ないと考えるが同意するか。
十 政府は金利上昇は、経済・財政・国民生活に重大な影響を与えると考えているのか。例えば、一九六〇年代から一九八〇年代の日本では、金利は高かったが日本は奇跡の経済成長を成し遂げたのであり、「高金利=悪」というわけではない。最近の「失われた二十年」では低金利だが経済は停滞した。問題なのは、次のようにして政府が消費や投資を冷え込ませる原因を作り出したことにある。@国の借金が千兆円を超えたという、特別問題にするべきでないことを、あたかも恐ろしいことであるかのごとく宣伝した。A我が国の財政は極めて厳しいという事実に反する主張をした。B二〇一四年の消費税増税。C二〇一七年予定の消費税増税。クルーグマンの言うように、来年の消費税増税を中止し、大胆に財政支出を拡大するなら、人はインフレを予想するようになり、現金の目減りを恐れ、個人も企業も投資を始める。インフレの際には、タンス預金で目減りさせるより少々高い金利でも借りて投資したほうが利益になるわけで、まさにそのような経済状態になれば日本経済は復活すると考えるが同意するか。

 右質問する。



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