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平成二十八年三月二十九日提出
質問第二二一号

戦没者遺骨収集推進法の成立に伴う戦没者の遺骨収集に向けた政府の取り組みに関する質問主意書

提出者  仲里利信




戦没者遺骨収集推進法の成立に伴う戦没者の遺骨収集に向けた政府の取り組みに関する質問主意書


 去る三月二十四日、戦没者の遺骨収集を促進する戦没者遺骨収集推進法が成立した。
 戦後七十年を経て、やっとというのが正直な感想であり、しかもようやく遺骨収集が国の責務であるということを認めたことを考えると、いささか遅きに失した感は否めないところである。
 しかし、今なお多くの戦没者の遺骨が収集されず放置されていること、したがって、多くの御遺族に戦没者の遺骨をお返しすることができていないこと、年々収集自体が難しくなっていること、さらには御遺族の方々の高齢化が進んでいることなどを考えると、最早これ以上の猶予は到底許される状況ではない。
 政府は、このような基本的な認識に立って、緊張感を持って、集中的に、しかも迅速に遺骨収集に当たられるよう強く要望する。
 ところで、法律制定のための国会審議等において、早くも政府の取り組みの問題点が浮き彫りになるとともに、本気度が疑われかねない事態が明らかとなったことは極めて遺憾である。例えば、厚生労働省は、戦没者遺骨のDNA鑑定を行うに当たり、従来からの取り組みである@個体性のある遺骨から鑑定に有効なDNAが抽出できる場合、A遺族から適切な検体が提供される場合、B記名等のある遺留品があってそれで関係遺族を推定できる場合の三条件が揃った場合にのみ、DNA鑑定を行うとしたことである。これでは何のために新たな法律を制定したのか、その制定意義が問われるところである。
 また、沖縄県においては、戦後米軍により設けられた収容所で多くの住民がマラリア等で亡くなり集団埋葬された事例がある。本事案に関して法律では第三条で「国の責務」を謳い、第六条で「情報の収集等の推進」をそれぞれ謳っている。そのような規定があるのにも関わらず、あたかも調査・収集当事者は政府ではなく、まるで沖縄県であるかのごとく答弁していることは到底容認できるものではなく、法律の立法趣旨を損なうものに他ならない。
 以上のことを踏まえて以下お尋ねする。

一 これまでは厚生労働省設置法や政令に基づいて戦没者の遺骨の収集を実施していたが、今回法律を制定し、その第三条で特に「国の責務」であることを明確にしたことや、円滑かつ確実な実施を図るため、外務大臣、防衛大臣その他の関係行政機関の長との連携協力を図るとしたことは高く評価するところである。それでは、政府は、国の責務として遺骨の収集に当たることを明確にしたわけであるから、どのような方法で遺骨の収集や情報の収集等を行うのか、具体的に明らかにされたい。
二 政府は、第六条で「情報の収集等の推進」を図ることとしている。具体的にはどのような方法で、いつ、誰に対して情報を収集しようと考えているのか。
三 平成二十八年二月十八日付け参議院厚生労働委員会の「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律案に対する附帯決議」の第三項において、「遺族からの幅広いDNA検体の提供の仕組みについて検討すること」とされている。つまりこの附帯決議の言わんとするところは、全遺族のDNA鑑定をまず行い、それをデータベース化した上で、収集された遺骨との照合を行うことができる仕組みを構築すべきであると決議しているわけであるが、政府の認識はどうか。また遺族からの幅広いDNA検体の提供の仕組みに関する検討結果はどうなっているか。
四 政府がDNA鑑定を行うとした場合の三条件のうち、最初の条件である@個体性のある遺骨から鑑定に有効なDNAが抽出できる場合について、個別に伺うが、まず個体性とは何か。「一人分の遺骨」というのが「個体性」なのか。
五 遺骨収集の現場で出てくる遺骨は、爆発などによりばらばらになったものが多かったり、または埋葬の際に折り重ねて埋葬されているため、個体の区別ができなかったりするものが大半である。政府はこのような現状を認識しているか。認識した上で、それでも「個体性」に固執して、個体性がない場合はDNA鑑定を行わないと主張するのか。
六 政府は、DNA鑑定を行うに当たって、頭蓋骨などが残っていて一体分がはっきりしている遺骨(すなわち個体性のある遺骨)の歯からのみという条件を付している。なぜ歯からしかDNA鑑定を行わないとするのか、手足の骨からはDNA鑑定が不可能なのか、それは鑑定技術上の問題なのか、それとも他の技術的な要因による制限なのか。
七 せっかく収集された遺骨であっても、個体性のない、頭蓋骨がない、歯がないなどいわゆる政府の基準に適合しないためDNA鑑定を行わない遺骨に対して、政府はどのように対応するのか。
八 政府は、DNA鑑定を行わない遺骨に対し「早期に弔い」との考えから焼骨とするようである。このようなことは遺族の心情を思えば言語道断であり、机上の理屈に他ならない。到底許されるべきものではない。ましてや法の立法趣旨を損なう考えである。政府は認識を改め取り組みを見直すべきではないか。
九 沖縄戦で被害に遭った住民の方々もこの法律の対象か。本職は、沖縄戦の住民被害者で未だ遺骨が遺族の元に返されていない事案に対しても、本法律の適用事案としてDNA検体の提供を幅広く遺族に求めることは当然であると認識しているが、政府の認識はどうか。
十 平成二十七年九月十一日開催の厚生労働委員会における赤嶺政賢議員の「政府として責任を持って収容すべき遺骨があれば、米軍基地の中であろうとこれはやらなければならない、そういう認識か」との質問に対して、塩崎恭久厚生労働大臣は「おっしゃるとおりでございます」と答弁した。また、「キャンプ・シュワブの中に、大浦崎収容所があり、そこではマラリアで亡くなる人が毎日十何人もいた。遺体は一人一人埋葬した。(中略)基地の中であってもちゃんと調査をして遺骨を収容すべきであると思うが、どうか」との質問に対して、塩崎恭久厚生労働大臣は「御指摘のキャンプ・シュワブ等米軍基地内の遺骨収集につきましては、まず関係者の証言などの遺骨情報の有無を沖縄県から伺うこととしたいと考えているところでございます。その上で、仮に情報がある場合には、外務省、防衛省などと連携をして、基地内の遺骨収集について米軍側に対して要望を行うことについて検討したい」と答弁した。そうであるならば、このやり取りで塩崎恭久厚生労働大臣が確約した「キャンプ・シュワブの中にあった、大浦崎収容所の状況」の調査結果を明らかにされたい。

 右質問する。



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