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平成二十八年四月十四日提出
質問第二四七号

沖縄の経済や沖縄振興予算、米軍基地等に関する公民教科書の誤記載の是正に関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄の経済や沖縄振興予算、米軍基地等に関する公民教科書の誤記載の是正に関する質問主意書


 去る四月十一日、政府は、帝国書院から四月四日に訂正申請のあった「高等学校公民科現代社会」の「沖縄の経済や沖縄振興予算、米軍基地等」に関する記述について、「沖縄の現状について学習上の支障がある」との理由で承認したとのことである。
 訂正前の記述と訂正後の具体的な内容は、@「県内の経済が基地に依存している度合いは極めて高い」との記述を削除したこと、A「日本政府も、事実上は基地の存続と引き換えに莫大な振興資金を沖縄県に支出している」との記述を削除し、代わりに「米軍施設が沖縄県に集中していることなど、様々な特殊事情を考慮して、毎年約三千億円の振興資金を沖縄県に支出」と訂正したこと、B「米軍がいることで地元経済が潤っている」との記述を「米軍がいることで経済効果があるという意見もある」と訂正したこと、C「米軍基地が移設すると、あわせて移住する人も増えると考えられており、経済効果も否定できないとして移設に反対したいという声も多い」との記述を「米軍基地に関連した収入で生活している人もおり、基地を容認する声もある」と訂正したこと、D「経済効果は、軍用地の使用料や基地内で働く日本人の給与、軍人とその家族の消費などで、二千億円以上に上ると計算されている」との記述を「基地に関連した収入の額は、軍用地の借地料や基地で働く日本人の給与などで毎年約二千億円と計算されている」と訂正したこと、などである。
 これらのやり取りを通じて感じられたことは、帝国書院が沖縄の現状や沖縄振興予算の設立趣旨・目的、戦後史、経済の状況を恣意的に歪曲しようとしているのではないか、若しくは知識が極めて乏しいのではないかということである。
 また政府も「訂正の記述が誤りでないことが確認できた」というならば、次世代を担う子ども達が使う教科書のチェック体制としては余りにもお粗末であると言わざるを得ない。
 これらを踏まえて以下お尋ねする。

一 沖縄県の経済が基地に依存しているか否かについては、県民総所得に占める基地関連収入の割合が日本復帰の一九七二年は十五.五%であったが、二〇一二年は五.四%に減っていることから、県経済は最早基地に依存していないとの認識を強くしているところである。さらに、返還された米軍基地跡地の経済波及効果が那覇市の那覇新都心で生産誘発額が返還前の五十七億円から二十八倍の千六百二十四億円、雇用者で百六十八人から九十三倍の一万五千五百六十人に増加していること、さらに北谷町の桑江・北前地区でも同様に生産誘発額が三億円から百十倍の三百三十億円に、雇用者が三千三百六十八人に皆増していることなどからすれば、沖縄県及び県民は、基地は「百害あって一利なし」ということと、「基地を早急に撤去し県民が利用する」ことこそが沖縄県経済の振興や活性化に繋がる最短・最善の手法であると認識しているところである。政府の認識はどうか。
二 沖縄振興予算は、沖縄振興特別措置法第一条において、同法に基づき策定される沖縄振興基本方針及び十カ年を目途とした沖縄振興計画に基づく事業を推進する等特別の措置を講ずることにより、沖縄の自主性を尊重しつつその総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与することを目的とすることが明確に規定されているところである。しかし、今回の帝国書院の訂正文及び文部科学省の対応を鑑みると、その予算及び法律の制定経緯や趣旨、目的を正確に把握・認識し履行しようとしているのか、疑問を持たざるを得ないところである。
 このため敢えて、昭和四十六年十一月十日に開催された衆議院「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」における山中国務大臣の発言を敷衍すると、@沖縄は、先の大戦において最大の激戦地となり、全島ほとんど焦土と化し、沖縄県民十余万のとうとい犠牲者を出したばかりか、戦後引き続き二十六年余の長期間にわたりわが国の施政権の外に置かれ、その間、沖縄百万県民はひたすらに祖国復帰を叫び続けて今日に至っている、Aわれわれ日本国民及び政府は、この多年にわたる忍耐と苦難の中で生き抜いてこられた沖縄県民の方々の心情に深く思いをいたし、県民への償いの心をもって事に当たるべきである、ことが克明に明らかにされている。
 これらを踏まえても、なお政府は、沖縄振興予算が「県外との格差是正や社会基盤の整備」ではなく、「米軍施設が沖縄県に集中していることなど、様々な特殊事情を考慮して振興資金を沖縄県に支出している」とするのか、政府の認識を伺う。
三 政府は、沖縄振興特別措置法第一条で規定する「沖縄の置かれた特殊な諸事情」や山中国務大臣の「県民への償いの心をもって事に当たるべきである」との思いをどう認識しているか。
四 沖縄振興予算は、必要な事業を積み上げた総額ベース(一括計上方式)で算出するため、個々の事業毎に予算要求する他県と比べ、「別枠の予算」が特別に上乗せされているわけではない。それにもかかわらず、今回の帝国書院の「毎年三千億円沖縄県に支出」の訂正文及び政府の「訂正の記述が誤りでないことが確認された」との対応からすれば、あたかも「沖縄の自主性を尊重しつつその総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与する」ための予算と別枠で予算が上積されているかの如く受けとめられることになる。沖縄振興予算は、基地の見返りとして多額の予算が投じられているという認識を政府は持っているのか。そうでないならば、政府は再度、帝国書院に対して訂正を指示するべきではないか。
五 二〇一三年度の沖縄県の決算額で、国庫支出金は三千七百三十七億円で全国十一位、地方交付税は三千五百九十三億円で十五位、合計は七千三百三十億円で十四位、人口一人当たりでは国庫支出金と地方交付税の合計で六位となっており、決して沖縄県だけが優遇されているわけではない。政府は、あたかも沖縄県だけが「米軍基地あるが故に優遇されている」との誤解を与える帝国書院の記述の訂正を指示するべきではないか。
六 沖縄県民は、米軍基地の撤去や過重な基地負担の軽減、平和で安心、安全な生活を希求しているのであり、帝国書院が訂正記述しているように無条件で「基地を容認」しているわけではない。ましてや諸手を挙げて賛成しているわけではない。政府は基地に関する沖縄県民の様々な意見や思いを的確に教科書に記述・表現するよう、帝国書院に記述の訂正を指示するべきではないか。

 右質問する。



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