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平成二十八年五月二十六日提出
質問第三〇一号

米軍属による女性強姦・殺人・死体遺棄事件に対して沖縄県民が求める根本的な解決策に関する質問主意書

提出者  仲里利信




米軍属による女性強姦・殺人・死体遺棄事件に対して沖縄県民が求める根本的な解決策に関する質問主意書


 去る五月十九日、嘉手納基地勤務の元米海兵隊員で米軍属の米国人が、うるま市居住の女性の死体を遺棄したとして緊急逮捕された。
 逮捕後の供述や沖縄県警察の捜査、新聞報道等により事件の全容が解明され始めていることから、今回、本質問において詳細に記述することはあえて避けるが、日米両政府の対応に関して、沖縄県民は強い憤りと深い失望を覚えるとともに、改めて再発防止のための根本的な解決策は米軍基地の全面的な撤去しかないとの思いを強くしているところである。
 そこで以下お尋ねする。

一 政府は、沖縄県民が発した「被害者は私だったかもしれない」や「実現したい夢もあっただろう」、「恐怖と怒り、悲しみは言葉にできない」、「なぜ沖縄県民だけがいつまでもこのような目に遭うのか」、「沖縄はまだ米軍の占領地か」などという心からの沈痛な訴えをどう理解しているのか。単に遺憾や陳謝の言葉を表すだけで済まされるものと考えているのか。今回もこれまでと同様に遺憾の意をとりあえず示しておいて、綱紀粛正や再発防止を繰り返し唱え、日米地位協定の運用改善で臨みたいとかいう、小手先の子どもだましでお茶を濁す考えか。これら沖縄県民の訴えに対する政府の承知するところを明らかにした上で、沖縄県民が求める抜本的な問題解決策に対する政府の対応策がいかなるものであるか答えられたい。
二 翁長雄志沖縄県知事が米国大統領との面会設定を求めたのは、政府が米国に対して相も変わらずに「厳正な対処を求める」だけで、根本的な問題の解決策を見出す努力を怠っているとの不満を抱いているからである。また、沖縄の声を全く届けようとせず、相も変わらずに言葉だけで乗り切ろうとする姿勢を感じ取っているからである。このことはとりもなおさず沖縄県民が等しく抱いている政府への根強い不信感と怒り、不満に基づくものである。政府は、翁長雄志沖縄県知事をはじめとする沖縄県民のこのような思いや痛み、やるせない憤りを承知しているか。翁長雄志沖縄県知事や沖縄県民の求めに対して政府が承知するところを明らかにした上で、米国大統領との面会について政府がどのように取り組まれたのか答えられたい。
三 政府は、沖縄県民の思いや痛みの声、やるせない憤りを理解するならば、米国大統領に対して、その声を正確に伝えるとともに、沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形や経緯で設置され、現在も続いているかを知らしめる努力をすべきではないか。しかし、五月二十五日の日米両首脳の会談を見ると、相も変わらずに、両首脳が口を揃えて遺憾の意を示すが、決して謝罪の言葉を表そうとしないという態度に終始し、日米地位協定の運用改善だけでの取り組みしか行わないこととなった。沖縄県民にとっては誠に残念であり、深い失望を味わうこととなった。そこで、これまで政府が取り組んできた沖縄の声等を米国大統領に伝える取り組みについて政府が承知しているところを明らかにした上で、今後どのように取り組む考えか答えられたい。
四 事件・事故が起きるたびに、そして今回の日米両首脳の会談も含めて、日米両政府は、錦の御旗の如く「綱紀粛正」や「徹底した再発防止」を唱える。しかしこの数十年間、何百回耳にタコができるぐらいに聞かされてきた。しかし、現状は全く何も変わらない。むしろ凶悪化しているとすら感じられる。「綱紀粛正」や「徹底した再発防止」が破綻していることは、事件直後の五月二十二日に、米海軍兵曹が「米兵の深夜外出や飲酒を規制するリバティ制度」に違反して外出・飲酒を行い、酒気帯び運転の現行犯で逮捕されたことで明らかである。政府はここに至っても相も変わらずに「綱紀粛正」や「徹底した再発防止」を唱えるつもりか。綱紀粛正や再発防止、リバティ制度が破綻しているか否かについて政府の承知しているところを明らかにした上で、今後どのようにして根本的な問題解決を図っていく考えか答えられたい。
五 政府は、「できることは全てやる」と枕ことばのように言う。また基地問題に「県民に寄り添う」とも言う。しかし、沖縄県民は、政府が「できないことは全てやらない」と言っていると受け止めているし、政府がそばにいるということを感じたことは一度たりともないというのが実感である。政府は、沖縄県民のこのような受け止め方や感じ方を承知し、理解しているのか、そして政府の取り組みは沖縄県民の理解を得られていると考えているのか、それぞれ答えられたい。
六 「罪を憎んで人を憎まず」という教えが聖書等にある。ましてや加害者は生後間もない子どもの良き父親であったとの報道もあることから、到底このような残忍で卑劣なことが計画的・簡単にできるはずはなく、衝動的若しくは一時の迷いからの行為かとも思いたくなる。しかし、あらかじめ運搬用のスーツケースとナイフを準備していたことや、わいせつ目的で襲う相手を物色していたこと、背後から棒で襲ったこと、首を絞めナイフで刺したこと、遺体を人里離れた山中にごみのように捨てたこと等の供述が徐々に明らかになり、真実がわかるにつれて、まさに人を殺すことを目的として教育と訓練を重ねている軍隊の本質と弊害によるものでしかないとしか言いようがなくなっている。これまで沖縄県民は、先の大戦を教訓に平和を希求し続けてきた。もうこれ以上人を傷つけ、殺し合うことを許すことはできないし、軍隊や基地を容認することもまた加害者と成り得ることから、許すことはできない。このような考えから、軍隊や基地と共存することは最早できないのである。そのため政府は、直ちに沖縄から全ての軍隊と基地を撤去すべきである。沖縄県民のこのような、切実な要求に対して政府の承知するところを明らかにした上で、沖縄の全ての米軍基地の撤去に関して米国政府に要求することについて見解を答えられたい。
七 政府は、言葉だけで遺憾の意を示し、県民を刺激するような言動を当分の間慎んでいれば、沖縄県民の怒りは静まるものと高を括っているものと思われる。しかし、最早沖縄県民は日米両政府の態度や詭弁には騙されない。一昨年のオール沖縄への結集で示した沖縄県民の怒りと憤りは時間がたつにつれ、消え去るどころか、基地の全面撤去という困難ではあるが、崇高な目的を達成するまでいささかも迷うことなく、むしろ意気軒高となるだけである。政府はこれまでの誤った認識を改めた上で、沖縄県民の民意や思いに今こそ寄り添って、基地の全面撤去の実現に取り組むべきである。沖縄県民のこのような、切実な要求に対して政府の承知するところを明らかにした上で、沖縄県民と共に全ての米軍基地の撤去に向けて取り組むことについて見解を答えられたい。
八 複数の識者や防衛大臣経験者等は、沖縄に米軍基地を置く必然性や海兵隊の抑止力、沖縄の地理的優位性は全くないことを明らかにして、政府の主張の詭弁性を糾弾している。また沖縄に基地を置き続けることに執着しているのはむしろ日本政府であることなどを指摘している。そして、日米両政府が言い続けている抑止力や地理的優位性は全くのまやかしであり、日本政府による沖縄への差別に他ならないことも強く指摘している。識者等のこのような指摘や疑問に対して政府の承知するところを明らかにした上で、抑止力や地理的優位性、沖縄への差別について見解を答えられたい。
九 水上正史沖縄担当特命全権大使は、県議会議員らによる抗議の席上で、「女性の命を守れなかった責任は県や市町村、警察にもある」と説明したとのことである。事実であればとんでもない責任転嫁の釈明である。今回の事件の第一の責任は殺人を何とも思わない人間を育てた米国にあるのであり、第二の責任はそれを許し、対米従属の対応と改善策しかとり得ない日本政府にあることは明らかである。また、水上大使はこれまでも沖縄県民の側に立った対応を全く行わず、むしろ米国政府や米軍をかばうような言動を繰り返している。そのため、およそ自国の国民を守るべき立場の大使・外交官としては不適任であると言わざるを得ない人物である。水上大使のこのような言動や大使・外交官としてふさわしくない対応について政府の承知するところを明らかにした上で、同大使に対して、今後どのような処置を行う考えか見解を答えられたい。
十 政府は、米軍絡みの事件・事故が後を絶たない理由を真剣に考えたことがあるのか、はなはだ疑問である。沖縄県民は事件・事故が後を絶たない理由として、日米地位協定により「米兵が守られている」ことや、「特権がある」こと、さらには「米軍の好意的な配慮」でもってあたかも被害者が恩恵を被っているかのごとく錯覚させられていること、しかしそれはあくまでも「米軍に裁量がある」ことに他ならないこと、等であると考えている。そして、いつまでたっても問題が解決されず、相も変わらずに沖縄県民が犠牲となる事件が続いているものと認識しているところである。やはり、根本的な問題解決策は、日米地位協定そのものを破棄し、主権国家として日本国憲法や関係諸法令を厳密に適用することしかあり得ないと考えている。このような沖縄県民の考えに対して政府の承知するところを明らかにした上で、日米地位協定そのものを破棄し、主権国家として日本国憲法その他関係諸法令を厳密に適用するための取り組みを政府が行うことについて答えられたい。なお、これまで政府は「相手がある」との答弁に終始し、又は「運用の改善」という小手先の取り組みしか行ってこなかったことを猛省して、政府が取り組む意思があるか否かを明確に答えられたい。

 右質問する。



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