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平成二十八年八月一日提出
質問第二一号

福島第一原子力発電所における凍土方式による陸側遮水壁の効果に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




福島第一原子力発電所における凍土方式による陸側遮水壁の効果に関する質問主意書


 東京電力福島第一原子力発電所の汚染水対策として、平成二十五年五月三十日、政府の汚染水処理対策委員会は、「地下水の流入抑制のための対策」をまとめた。この中で、「福島第一原子力発電所では、地下水の流入により、日々四百立米の汚染水が発生している。増え続ける汚染水の問題は、廃炉を進めていく上で最も深刻な課題の一つである」と位置づけ、「プラント全体を取り囲む陸側遮水壁を設置すべきである」として、「凍土方式による陸側遮水壁により長期間建屋を囲い込む今回の取組は、世界に前例のないチャレンジングな取組であり、多くの技術的課題もあることから、事業者任せにするのではなく政府としても一歩前に出て、研究開発への支援やその他の制度措置を含めて検討し、その実現を支援すべきである」と結論付けている。
 これを受けて政府と東京電力でつくる東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議は、平成二十五年六月二十七日に「東京電力(株)福島第一原子力発電所一〜四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の改定の中で、凍土方式による陸側遮水壁を盛り込んだ。
 平成二十六年六月に凍土方式による陸側遮水壁の設置工事が着手され、平成二十八年三月から部分的な運用が開始された。しかしながら、平成二十八年七月十九日に原子力規制委員会が開催した「特定原子力施設監視・評価検討会」では、原子力規制委員会に福島第一原子力発電所の凍土遮水壁の最終目標を問われた東京電力側は、「凍土壁で抑え込み、サブドレンでくみ上げながら流入水をコントロールする」と説明した上で、「完全に凍らせても地下水の流入を完全に止めるのは技術的に困難」で、「完全閉合は考えていない」と明言したことを七月二十日の福島民報が報じている。
 かかる福島第一原子力発電所における凍土方式による陸側遮水壁の効果について疑義があるので、以下質問する。

一 福島第一原子力発電所における凍土方式による陸側遮水壁の設置のために投じられた国費はどれくらいなのか。具体的に示されたい。
二 平成二十五年五月三十日、政府の汚染水処理対策委員会で決定された「地下水の流入抑制のための対策」の中で、「凍土方式による陸側遮水壁により長期間建屋を囲い込む今回の取組は、世界に前例のないチャレンジングな取組であり、多くの技術的課題もあることから、事業者任せにするのではなく政府としても一歩前に出て、研究開発への支援やその他の制度措置を含めて検討し、その実現を支援すべきである」と示されているが、「世界に前例のないチャレンジングな取組」である凍土方式による陸側遮水壁について、具体的に、どのような形で、「事業者任せにするのではなく政府としても一歩前に出て、研究開発への支援やその他の制度措置を含めて検討し、その実現を支援」したのか。政府の取り組みを示されたい。
三 平成二十八年七月二十日に、東京電力ホールディングス株式会社は、「福島第一原子力発電所 陸側遮水壁に関する報道について」を明らかにし、「段階的に閉合範囲を増やして最終的に百%閉合を目指している」と表明している。この表明の意味することは、「最終的に百%閉合を目指している」ものの、技術的な限界により、完全閉合は困難であることを示唆している。「世界に前例のないチャレンジングな取組」であることと懸念が表明されていたにもかかわらず、巨額の国費を投じたものの、「完全に凍らせても地下水の流入を完全に止めるのは技術的に困難」であるのが実情であろう。政府は、汚染水対策において、凍土方式による陸側遮水壁の不確実さを認め、汚染水対策の抜本的な見直しをすべきではないか。政府の見解を示されたい。
四 平成二十五年九月三十日の衆議院経済産業委員会で、茂木経済産業大臣は、「凍土方式によります遮水壁、当然、技術的な課題もあります」「申し上げたようにフィージビリティースタディーをやっております。同時に、我々は、先ほど言ったような予防的な重層的な対策を取る。対策が効果を十分に示さなかったときは、追加的な遮水対策もとってまいりたい」と答弁している。また茂木大臣は、平成二十五年十月七日の参議院経済産業委員会で、「どうやったらうまくできるか、そのためにまずは幾つかの遮水の方法につきまして検討を行い、凍土方式が今回の場合最もふさわしいであろう、こういう結論の下に今FSを行っております」とも答弁している。そもそも福島第一原子力発電所の汚染水対策に「フィージビリティースタディー」、すなわち「実現可能性調査」という不確定な認識で臨むことが望ましいとは思えないが、まさに現状は、「対策が効果を十分に示さなかった」のであり、「追加的な遮水対策」を抜本的に検討すべきではないか。政府の見解を示されたい。
五 平成二十八年五月二十日の参議院東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会で、原子力規制委員会の田中委員長は、「凍土壁の運用に当たって注意してきたことは、それをすることによって、リスクを拡大しない。つまり、炉心、溶けた溶融燃料を冷やしている高濃度汚染水が外に出ないようにするということのために、順次ステップを踏んでやっていただきたい」「本当に成功していただきたいと思いますけれども、現段階においてその効果がどの程度うまくいくのかどうかというのは予見できませんので、慎重にステップを踏んで進めていただくよう、私どもとしては監視していきたい」と答弁している。田中委員長は、研究者としての立場から冷静に事実を把握し、「リスクを拡大しない」ように「順次ステップを踏んでやっていただきたい」という見解を述べているのであり、東京電力のいう「最終的に百%閉合を目指している」というものはスローガンに過ぎず、また茂木経済産業大臣の答弁でいう「フィージビリティースタディー」もふさわしいとは言えない。福島第一原子力発電所の汚染水対策は、まさに国難というべき課題であり、政府は、現在の凍土方式による遮水壁の不確実さを認識すべきであり、その上で、「追加的な遮水対策」を抜本的に検討すべきではないか。凍土方式による遮水壁による効果に対する認識と、追加的な遮水対策の必要性について、政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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