衆議院

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平成二十八年十二月九日提出
質問第二〇四号

北総鉄道の運賃に関する質問主意書

提出者  斉藤和子




北総鉄道の運賃に関する質問主意書


 北総線は、千葉ニュータウン住民が都心へアクセスする唯一の鉄道として計画され、一九七九年に小室駅・北初富駅間を開業した。一九八四年には小室駅・千葉ニュータウン中央駅間、一九九一年に京成高砂駅・新鎌ヶ谷駅間を営業開始。一九九五年に千葉ニュータウン中央駅・印西牧の原駅間に延伸し、二〇〇〇年には印西牧の原駅・印旛日本医大駅間が開通して、京成高砂駅から印旛日本医大駅の全線がつながった。
 その後、この路線は成田空港アクセスに利用されることになり、二〇一〇年七月に京成電鉄(株)が第二種鉄道事業者として京成成田空港線(成田スカイアクセス線)を開業した。線路は現在、北総鉄道(株)が京成高砂駅から小室駅までの十九.八q、千葉ニュータウン鉄道(株)が小室駅から印旛日本医大駅までの十二.五q、成田高速鉄道アクセス(株)が印旛日本医大駅から接続点までの十.七q、成田空港高速鉄道(株)が接続点から成田空港駅までの八.四qを保有している。成田スカイアクセス線はこの各社が保有する線路を使用して空港旅客の運送を行っている。
 北総線は現在、千葉ニュータウン住民にとって、生活上なくてはならない足となっているが、運賃はJRや他の首都圏の主要民間鉄道と比べ、普通運賃、定期運賃ともに二倍から数倍と極めて高く、住民にとって長年にわたり多大な負担となってきた。印西市や白井市の住民意識調査で、北総線の運賃問題が市民にとって最大の不満点であり関心事だとされた(印西市二〇一一年度、白井市二〇一四年度)ことは、依然として沿線住民が高運賃に悩まされていることを示すものである。以下、この運賃に関連して質問する。

一 北総線の高運賃について
  政府は、二〇一〇年八月二日付で穀田恵二衆議院議員が提出した「京成電鉄成田空港線運賃認可及び北総線運賃に関する質問主意書」において、「北総線運賃が都市高速鉄道として極めて高いという認識はあるか」との質問に「各鉄道事業者の運賃が異なっているものと認識している」と回答した。これでは質問に答えていない。
  改めて聞く。北総線は京成高砂駅から印旛日本医大駅で切符の大人片道普通旅客運賃は八百二十円。これに対し近隣の主要鉄道を見ると、同様のキロ程における切符の大人片道普通旅客運賃は、京成電鉄で四百九十円、東武鉄道で四百七十円、小田急電鉄で三百七十円、東京地下鉄で三百十円、京王電鉄で三百四十円、横浜市営地下鉄で四百六十円、西武鉄道で四百十円、東京急行電鉄で三百三十円、京浜急行電鉄で四百三十円となっている。また、JR東日本は幹線で五百八十円、電車特定区間(山手線)で五百五十円である。かつて、鳩山邦夫総務大臣は二〇〇九年三月十三日の衆院総務委員会で北総線の運賃を「異常な高さ」と答弁した。政府は今もなお、北総線はこれら近隣鉄道と比較し極めて高いという認識はあるか。
二 成田スカイアクセス線の線路使用料の不均衡と認可の判断について
  北総線をめぐる線路使用料については、京成電鉄が北総鉄道に正当に支払っておらず、多くの不合理があり、それらを正せば運賃値下げの十分な原資ができると指摘されている。ここでは、北総鉄道に対する線路使用料問題はさておき、それらの不合理の一つである千葉ニュータウン鉄道に対する線路使用料問題を中心に尋ねる。
 1 北総線は、千葉ニュータウンの住民の都心への交通手段として決定的な役割を果たしているとともに、成田スカイアクセス線五十一.四q中、三十二.三q、約六十三%を担っている。
  一方、成田空港・京成高砂間を第二種鉄道事業者として運行する京成電鉄が線路を所有する四社に払っている線路使用料は、総額で六十一億千四百十九万千円(二〇一四年度鉄軌道報告書)であるが、この内、北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道の北総線関連二社への支払額は合わせてわずか十八億九千三百九十二万七千円である。
  二社は成田スカイアクセス線の内、主要部分というべき六十三%の線路を提供しているにもかかわらず、受け取る線路使用料は総支払額の三十一%にすぎない。これではあまりにも不均衡である。この不均衡に対する認識及び線路使用料申請を認可した理由を示されたい。
 2 北総線の内、小室駅・印旛日本医大駅間(十二.五q)は千葉ニュータウン鉄道の所有する線路であり、京成電鉄と北総鉄道は第二種鉄道事業者として千葉ニュータウン鉄道に線路使用料を支払って運行している。二社の年間の車両走行距離は、京成電鉄が両社を合わせた内の約四十四%、北総鉄道が約五十六%で、車両の重量を加味すれば線路に及ぼす負荷は両社ともに同等と思われる。
  しかし、支払っている線路使用料は、京成電鉄が三億五千九百五十二万円、北総鉄道が二十五億三百九十六万円(二〇一四年度、三社の財務諸表から推計)と約七倍の大きな差があり、あまりに不公平である。これは、京成電鉄が北総鉄道に多大な負担を負わせることで、百%子会社たる千葉ニュータウン鉄道を通じて利益を上げようとする構図であることは明瞭である。この不公平に対する認識及びこの線路使用料申請を認可した理由を示されたい。
 3 前記穀田議員提出の質問主意書2(2)において不公平な線路使用条件の認可を質したのに対し、国は「北総鉄道及び千葉ニュータウン鉄道株式会社が京成電鉄にそれぞれの鉄道線路を使用させるに当たって定めた使用料その他の使用条件については、これらの者の経営判断に基づき定められたものと認識しており、国土交通大臣においては、鉄道事業法第十五条第一項の認可の申請を受けて、同条第三項の規定に基づき適正に認可したところである」と答弁している。
  これは、線路使用料の取り決めが、客観的に見てどんなに不合理な内容であっても、当事者さえ合意していれば、鉄道事業法第十五条第三項の「鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれ」がないと認め、無条件に認可するということなのか。
  また、認可に当たっては、当事者の合意内容が、独禁法が禁止している「優越的地位の濫用」に該当するか否かについては考慮するのか、重ねて見解を問う。
三 線路使用料と鉄道運賃の関係について
  前記穀田恵二衆議院議員提出の質問主意書の2(3)@で、「不公正な線路使用料契約をただし、京成電鉄が北総鉄道に適正な線路使用料を支払えば、北総線の高運賃を値下げできるのではないか」と「線路使用料」と「運賃」の関係を質問したのに対し、国はこの点に関して答えなかった。
  しかし、線路使用料の多寡は適正原価の重要な要素であり、運賃決定に直接影響を与える。このことは、一九八六年十一月二十七日、参議院・日本国有鉄道改革に関する特別委員会の鉄道事業法案審議の中で橋本龍太郎運輸大臣の次の答弁でも明らかである。
 「鉄道線路を敷設する者とその鉄道線路を使用して運送を行う者とが別々の場合、利用者に良好かつ安定的な輸送サービスが提供されますためには、両者が適正な事業運営のもとに安定的な鉄道線路の使用関係を維持させるということが必要であると私どもは思います。この観点からまいりますと、両者で鉄道線路の譲渡が行われる場合におきましても、支払い代金及びその支払い方法などが第一種鉄道事業者の運賃に直接影響を与えるものでありますから、その運賃水準というものを適正に維持していくために、譲渡価格などについて認可にかからしめることにしたわけでありまして(以下略)」。
  これは、線路の使用権にかかる金銭の支払いが運賃に「直接影響する」とするものであって、譲渡代金であっても線路使用料であっても同じであり、だからこそ同様に「認可にかからしめ」ている。そこで質問する。
 1 線路使用料についても第一種及び第二種鉄道事業者の運賃に直接影響を与える、との前記の大臣見解を今も踏襲しているか。していないとすれば、その内容、理由を説明されたい。
 2 北総鉄道が千葉ニュータウン鉄道に支払う線路使用料は、後述のように「小室駅・印旛日本医大駅間の運賃収入」の全額であり、二〇一四年度の支払額は前述の通り二十五億三百九十六万円であった。
  しかも、この区間の北総鉄道の第二種鉄道事業としての営業収支は、収益合計が三十一億九千五十三万九千円(鉄道事業報告書)であったのに対し、営業費合計が四十一億二千四百六十四万三千円と九億三千四百十万四千円の赤字となっている。同社はこの赤字分を別区間の第一種鉄道事業による運賃収入等で補填している関係にある。
  このような事実関係において、北総鉄道が千葉ニュータウン鉄道に支払う線路使用料を引き下げれば、適正原価が引き下がり、ひいては運賃を値下げしうる原資となる。
  多くの住民からはこの線路使用料の引き下げが求められているが、こうした要望に対する国の認識を問う。
四 北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道の線路使用料契約について
  千葉ニュータウン鉄道(小室駅・印旛日本医大駅間十二.五q)は、元々は現「UR都市機構」の前身である「住宅・都市整備公団」により千葉ニュータウン住民の公共交通機関として建設が始められ、二〇〇〇年に小室駅・印旛日本医大駅間の全線が開通したものである。
  その後二〇〇三年に、国の特殊法人等整理合理化計画によって鉄道事業の整理が求められ、国・千葉県を含む関係者の協議の結果、二〇〇四年に京成電鉄の百%子会社の千葉ニュータウン鉄道に営業譲渡された。
  この間の経緯について、二〇〇四年四月三十日付で都市基盤整備公団及び千葉ニュータウン鉄道が国に提出した「鉄道事業譲渡譲受認可申請書」の中では次のように記されている。
 「二〇〇一年十二月の特殊法人等整理合理化計画において『鉄道事業については採算性の確保のための事業の見直し等を行う』との指摘がなされ、都市基盤整備公団としては(中略)鉄道事業の収支改善策を検討してまいりましたが、有効な方策を見出すに至りませんでした。このような状況の中で、印旛日本医大から成田空港までの延伸計画が、成田新高速鉄道事業として具体化し、将来、北総公団線を利用したスカイライナーの運行が予定されることとなったことから、関係者の間で、その運行主体である京成グループへの事業譲渡の可能性についても検討いたしました。国土交通省や千葉県とご相談しながら、今般の特殊法人改革の趣旨及び公団鉄道の運営経緯等をも勘案し、検討を進めましたところ、今後の鉄道事業のあり方としては、京成グループの一体的な運営により事業の安定的な経営を図ることが望ましいとの結論に達し、その結果、本年二月に、『京成電鉄が新たに設立する百%子会社である千葉ニュータウン鉄道株式会社が、都市基盤整備公団の独立行政法人への移行後速やかに公団鉄道事業を譲り受ける』ことで基本的合意が成立いたしました。」
  このように本件の鉄道事業譲渡譲受の過程において国は、申請の審査・認可の手続きに関わった。さらに二〇〇四年二月二十七日付で、都市基盤整備公団総裁、京成電鉄株式会社代表取締役、千葉県知事の三者で交わされた「合意書」に国土交通省鉄道局長が立ち会って記名押印している。この譲受によって、北総鉄道と都市基盤整備公団が結んでいた諸協定が、包括的に千葉ニュータウン鉄道株式会社へ移行した。この「合意書」は第四項に「京成電鉄関連会社は、本鉄道が千葉ニュータウン住民の基幹的交通機関として公的助成を受けて整備されたものであることに鑑み、譲受後も現状の輸送サービスが維持されるよう努めること」と記されている。これらの事実から、国が千葉ニュータウン鉄道の事業が千葉ニュータウン住民の利益になるように指導・監督する義務を負っていることは明らかである。
  そこで質問する。
 1 千葉ニュータウン鉄道は前述のように、成田スカイアクセス線の主要な構成部分として、空港旅客輸送を分担している。その千葉ニュータウン鉄道の経営を成り立たせているのは北総鉄道が支払っている線路使用料である。その線路使用料の原資は北総鉄道の第一種事業の収入であり、それはとりもなおさず沿線住民が負担を余儀なくされている高い運賃である。この構図から言えるのは、千葉ニュータウン鉄道が住民へのサービス提供義務を果たしていると言うよりも、住民が高運賃を払うことで逆に千葉ニュータウン鉄道を支え、成田空港アクセスを支えているというのが実態ではないのか。見解を問う。
 2 千葉ニュータウン鉄道が都市基盤整備公団から引き継いだ「鉄道事業の経営に関する基本協定」「鉄道施設及び車両の使用に関する協定」等によると、北総鉄道が支払う線路使用料については、「北総・公団線区間に係る運輸収入相当額」となっている。
  これが決められたのは、「北総公団線」が小室から千葉ニュータウンまでの四.〇qしかなかった時期であったが、その後「小室駅・印西牧の原駅間(八.七q)」「小室駅・印旛日本医大駅間(十二.五q)」へ延伸して当初と条件が変わったにもかかわらず「北総・公団線区間に係る運輸収入相当額」の規定は見直されず、ずるずると今日も引き継がれ、支払う線路使用料が前述のように多額になっている。国がこうした不合理を黙認してきたことは前記「合意書」に立ち会った責任上、職務怠慢ではないのか。見解を問う。
 3 線路使用料の認可については、鉄道事業法第十五条第三項により「鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれがない」場合に認められる、とされている。この「適正な運営の確保」とは借りる側だけでなく、貸す側も「適正な運営」を満たすべきことは、前記橋本龍太郎運輸大臣が「両者が適正な事業運営のもとに安定的な鉄道線路の使用関係を維持させるということが必要」と答弁している通りである。
  しかし、前述のように、北総鉄道が千葉ニュータウン鉄道に支払う線路使用料の取り決め内容は、北総鉄道がこの区間で絶対に利益が上げられない仕組みであり、「適正な運営」などとは言えない。このような内容の北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道との線路使用料契約を申請通り認可したのは鉄道事業法第十五条第三項に違反しているのではないか。見解をお尋ねする。
 4 前記「鉄道事業の経営に関する基本協定」「鉄道施設及び車両の使用に関する協定」等によるとこれらの協定の更改期は二〇一八年三月末である。また、線路使用料の取り決めには「当分の間(公団鉄道の収支で損益計算上累積欠損が解消するまでの間)」との条件が付されており、千葉ニュータウン鉄道に移行してからの「累積赤字」も今後数年内には解消することが推測される。
  国は協定の更改期を待つことなく、これらの不合理を正すように、京成電鉄、北総鉄道、千葉ニュータウン鉄道を指導すべきではないか。見解を問う。
五 人口増による運賃値下げについて
  政府は一九八八年、首都圏における大都市問題の解決を図るため、都区部以外の地域で相当程度広範囲の地域の中核となり、業務機能をはじめとする諸機能の適正配置の受け皿となるべき業務核都市を、多極分散型国土形成促進法(一九八八年制定)において制度化した。千葉県はこれに基づき二〇〇四年、成田・千葉ニュータウン業務核都市基本構想を策定。北総線を含む東京と成田空港を結ぶ鉄道を交通の基軸として沿線地域に企業誘致を図ってきた。
  これにより対象となる成田市、印西市、白井市、富里市には業務集積が進み、人口は当初の十九万人弱から事業開始時の予想を上回る三十四万人以上に大幅に増加。北総線は千葉ニュータウンから都心への通勤需要のみならず、都心から千葉ニュータウン各駅への通勤需要も増大し、これに伴って北総鉄道の経常利益は右肩上がりとなっている。そこで質問する。
 1 成田・千葉ニュータウンが業務核都市の広域連携拠点として整備されてきたことで、この構想の基軸となる北総線の利用者が拡大してきていると考えられる。過去十年間の利用者の拡大数について、政府の承知するところを示されたい。
 2 北総線が利用者を拡大してきたにもかかわらず、高い運賃は維持されたままであり、成田・千葉ニュータウンを業務核都市として今後育成していく上で阻害要因となっていると指摘されている。需要の増大に応じて運賃を引き下げ、利用者に還元すべきではないか。政府の見解を問う。

 右質問する。



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