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平成三十年三月五日提出
質問第一一五号

TPP11における酪農および畜産業分野での懸念に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




TPP11における酪農および畜産業分野での懸念に関する質問主意書


 平成三十年一月二十三日、環太平洋連携協定(TPP)十一か国による首席交渉官会合が東京都内で二日間の討議を終え閉幕し、離脱した米国抜きでの新協定「TPP11」(「本協定」という。)の署名式を三月八日にチリの首都サンティアゴで開くことで合意した。署名後、本協定はそれぞれの参加国で国内手続きされることになるが、発効に必要なのは六か国(参加国の約五十%)の国内手続きで、本協定は六か国の国内手続きが完了すれば六十日後に発効する。
 政府は、三月八日の署名後、この国会で本協定承認案と関連法案を提出する方針であると承知しているが、農産物の関税削減・撤廃は、米国の参加という前提条件が崩れたにもかかわらず、市場開放水準が米国不在のまま維持されたことで深刻な影響が生じることが予見されている。
 米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠がニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められる上に、それとは別に米国との二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められた場合、実質的に大幅な輸入枠拡大となり、国内の酪農への大きな打撃は不可避であろう。
 牛肉や豚肉で輸入量急増時の歯止めとなるはずのセーフガード(緊急輸入制限措置)も、現在の発動基準は輸入量の約四割を占める米国からの輸入実績を踏まえて設定されており、米国抜きでは基準が高すぎて歯止めの役割を果たさない。本来は十一か国で交渉をやり直すべきだが、交渉の早期決着を優先するため、このような重大な問題点を十分議論していない。
 このようなTPP11の酪農および畜産業分野での懸念に関して、以下質問する。

一 三月八日に本協定への署名を行った後、政府はこの国会に本協定承認案と関連法案を提出する方針であるとの理解でよいか。
二 政府の影響試算では、農畜産物の生産減少は約千百億円と公表されているが、最新の影響試算結果ではどの程度であるのか。また北海道における農畜産物の生産減少はどの程度であると見込んでいるのか。政府の見解如何。
三 農林水産省が平成二十九年十二月に示した「農林水産物の生産額への影響について」では、「関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む」と示されているが、「生産額の減少が生じる」のであれば、「国内生産量が維持」されることは困難であると考えるが、政府の見解如何。
四 三に関連して、ある地域、例えば北海道では「生産額の減少が生じるものの」、他の地域で「国内対策」により「引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む」というように、ある地域で生産量の減少が生じても、日本全国でいう国内生産量は維持されるという理解でよいか。政府の見解如何。
五 本協定では、米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠がニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められることが予測でき、高品質で安価な乳製品が大量に輸入されるため、北海道をはじめとするわが国の乳製品の生産現場が壊滅的な影響を受けることは、多くのわが国の酪農家から指摘されている。政府は酪農家の不安を払拭するためにどのような説明を行い、さらには、どのような国内対策を考えているのか。政府の見解如何。
六 本協定が発効すれば、従来、米国からの輸入分も含めて七万トン(生乳換算)と設定された乳製品の低関税輸入枠が米国を除いたニュージーランドやオーストラリアなどの酪農大国からの輸入で占められる。この結果、本協定とは別に米国から二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められることが想定されるが、これにより多くのわが国の酪農家は深刻な懸念を抱いている。本協定とは別に米国から二国間のFTA(自由貿易協定)でも同様の輸入枠を求められることはないのか。またその場合の国内対策はどのように行うのか。政府の見解如何。
七 本協定における牛肉や豚肉で輸入量急増時の歯止めとなるはずのセーフガード(緊急輸入制限措置)は、現在の発動基準は輸入量の約四割を占める米国からの輸入実績を踏まえて設定されており、米国抜きでは発動基準が高すぎて歯止めの役割を果たさない。これについても、多くのわが国の畜産農家は深刻な懸念を抱いている。本来、本協定のセーフガードの発動基準は改めるべきではないか。また本協定の発効後、かかる国内対策はどのように行うのか。政府の見解如何。
八 本来、本協定は、十一か国で交渉をやり直すべきだが、交渉の早期決着を優先するため、これらのような重大な問題点を十分議論していない。政府は、この国会で本協定承認案と関連法案を提出する方針であると承知しているが、わが国の酪農家、畜産農家の声を聞き、徹底した国会審議を行い、拙速な承認を行うべきではないと考える。政府の見解如何。

 右質問する。



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