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平成三十年六月十八日提出
質問第三九六号

カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案に関する質問主意書


 政府・与党は、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案、すなわち「特定複合観光施設区域整備法案」(内閣提出第六四号。以下「IR実施法案」という。)を成立させようとしている。刑法が禁じている賭博行為のカジノをあえて特別法を制定して認めるということは、非常に慎重かつ丁寧な議論が求められると考える。
 そこで以下質問いたします。

一 現状において、ギャンブル依存症などカジノに関する多くの懸念や疑問が解消されたとは言い難く、国民も大きな懸念をもっている状況である。読売新聞が二〇一八年五月十八日から二十日にかけて行った世論調査では、IR実施法案に反対が六十九%であり、賛成の二十三%と大きな開きがあり、こうした結果を見ても多くの国民は、今国会での性急な「IR実施法案」の成立を望んでいるとは言えない。このまま強行にIR実施法案の成立に向けた動きを加速させることは、国民の声を無視した恣意的なものになると考えるが、政府はこの現実をどのように認識しているのか、所見を伺いたい。
二 政府は、IR整備の政策効果として、経済効果を挙げているが、それに対しては大きな疑問を持つ。カジノは、今以上に訪日外国人観光客を増やすことができる施策かのように発信されているが、多くの訪日外国人観光客は、日本の統合型リゾート(IR)でカジノを利用したいとは思っていない。二〇一七年十月五日に株式会社日本政策投資銀行と公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBF・アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(平成二十九年版)」によれば、カジノは統合型リゾート(IR)の中で利用してみたい施設としては八項目の中で最下位に位置しており、日本でカジノを利用してみたいと回答した人は、全体の七%である。対照的に統合型リゾート(IR)内で、ショッピングモールを利用してみたいと回答した人は四十六%、ホテルを利用してみたいと回答した人は四十三%、アミューズメント施設を利用してみたいと回答した人は四十%、温浴施設を利用してみたいと回答した人は三十七%であり、カジノを利用してみたいと回答した七%と比較して、訪日外国人観光客は日本において統合型リゾート(IR)に足を運ぶなら、カジノ以外を楽しみたいと考えていることがわかる。こうした客観的な状況を正面から捉えれば、カジノに対するインバウンド需要が大きくない現状が明らかであり、経済効果という観点からは大きな疑問を持たざるを得ないが、政府としては、IR施設にカジノを作ることで、訪日外国人観光客が増え、インバウンド消費が伸びると考えているのか、見解を伺いたい。
三 カジノを利用する客層は、日本人が何割で、訪日外国人が何割程度になると想定しているのか、見解を伺いたい。
四 カジノ事業者が訪日外国人観光客のカジノ施設の利用により収益を上げられない場合には、経営上当然日本人顧客の取り込みをしようと経営陣は判断すると思われるが、ターゲットになる日本人がギャンブルで負けたお金が、外資系企業に流れる構図となった場合、これらは一体どこの国の経済政策なのかと非常に疑問を感じる。二〇一八年四月五日のロイターによれば、「カジノ事業に進出を狙う海外のカジノ運営会社は、概ね与党合意を歓迎している。(中略)カジノホテル運営会社、米シーザーズエンターテイメント(CZR.O)のウィリアム・シェン日本代表は与党合意について「正しい方向に進んでいる」と評価し、「われわれは、引き続き日本でのビジネスチャンスに非常に高い期待を持っている」と述べた。(中略)アジアで主要なマーケットになるとみられていたシンガポールでは、十年以上前にカジノが解禁され、カジノ運営会社二社が巨大な収益を生み出している。アナリストの試算によると、日本に二か所のカジノができるだけで、年間百億ドルの収益が見込める。この潜在的マーケットに、米リゾート大手ラスベガス・サンズ(LVS.N)、カジノ運営MGMリゾーツ(MGM.N)などが強い関心を示している。」ということであるが、これらの外資系企業が日本のカジノ運営に参画をする予定があるのか、伺いたい。また、あるとすればどのような企業が候補として挙がっているのか、伺いたい。
五 去る五月十六日、自由民主党、公明党両党が日本維新の会と共に、「ギャンブル等依存症対策基本法案」(中谷元君外七名提出、衆法第二〇号)を衆議院に提出、同月二十五日に同法案は衆議院を通過した。IR実施法案においては、カジノ施設への入場に関する抑止力として、「入場料六千円」・「入場回数は連続する七日間で三回、連続する二十八日間で十回」としているが、数十万円、数百万円の勝負をしに来るカジノ顧客が六千円を気にするのか甚だ疑問である。そもそも月に十回もカジノに行くようであれば、既に依存症が疑われても仕方がない状況であると考える。この「ギャンブル等依存症対策基本法案」により本当にギャンブル依存症を撲滅できると考えているのか、政府の見解を伺いたい。
六 政府は、そもそも日本にカジノができることで、ギャンブル依存症患者が増大すると考えているのか、それとも増大しないと考えているのか、見解を伺いたい。
七 政府はIRの利点ばかりを強調していないか。「ビジネスの起爆剤に」「地域振興、雇用創出が見込まれる」等、耳障りの良い言葉ばかりが並んでいるが、実際には、治安対策や依存症対策等に多額の負のコストも想定される。また、二〇一四年の韓国全体でのギャンブル産業の売上高が十九・八兆ウォン(約一兆九千八百億円)であるのに対し、ギャンブル依存症による負債の利子費用、仕事の生産性低下・失業、医療費などの社会的費用(ソーシャルコスト)は、七十八兆ウォン(約七兆八千億円)に上るとされており、差し引き約六十兆ウォン(約六兆円)の負の経済効果が発生しているとの研究結果が公表されている。しかし、我が国のIR実施法案においては、このような点が十分に調査・試算もされておらず、結論もでていない状況ではないかと懸念するが、政府の試算によるカジノがもたらす経済効果とソーシャルコストの数値はどのようなものであるのか、見解を伺いたい。また、調査・試算がなされていなければ早急に進めるべきであると考えるが如何か。政府の見解を伺いたい。
八 「内閣衆質一九六第二七八号衆議院議員高井崇志君提出ギャンブル依存症問題の監督体制に関する質問に対する答弁書」によれば、本年度、アルコール、薬物を除いたギャンブルのみを対象とした厚生労働省の依存対策予算は、僅か千九百四十二万七千円である。依存症対策に苦しむ韓国の対策費は約百倍のおよそ二十二億円の予算を計上しているが、それでも上手くいっているとは言えない状況にある。政府はこれらの現状をどのように捉えているのか、見解を伺いたい。
九 韓国において二〇〇〇年から自国民向けカジノとして解禁された「江原(カンウォン)ランド」の立地する地域では、犯罪率が急増し、自殺率も全国平均一・八倍になったとの報告があるが、日本のカジノ立地地域の犯罪率や自殺率にどのような変化があると予測されているのか、政府の見解を伺いたい。
十 今まで縷々質問してきたこと以外にも、IR実施法案は、国会審議が進めば進むほど、疑問や矛盾が次々と浮上している。例えば、ギャンブル依存症対策として、本人や家族の申出で入場禁止措置を設けることができるとしているが、任意の申告にどれだけの効果が期待できるのか、大きな疑問が残る。また、ギャンブル依存症はWHO(世界保健機関)で認知されている精神疾患であるにもかかわらず、日本においては調査や対策がほとんど行われてこなかった現実がある。さらには、日本の公営競技では実施主体が顧客に金銭を貸すことが許されていない中、整合性が問われる。そのうえ、IR実施法案の詳細は、法案が成立した後に、政令、省令、カジノ管理委員会規則で決めることとされており、至って不明瞭で全く議論ができない状態である。以上のことだけをみても審議が尽くされたとは到底言い難い状況である。にもかかわらず、政府・与党が法案を強行に成立させようとしている背景には、どういった理由があるのか、政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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