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平成三十年十月二十四日提出
質問第六号

廃止された原発等から出る金属の再利用に関する質問主意書

提出者  阿部知子




廃止された原発等から出る金属の再利用に関する質問主意書


 平成十七年の原子炉等規制法改正で、一定の放射線濃度を下回った金属等は放射性廃棄物として扱う必要をなくすクリアランス制度が導入された。しかし、その法案審議の過程で、低レベルでも放射化した物質が無制限に市場に出回ったり不測の事態が起きたりすることへの対応として、国会答弁で一定の縛りがかかることとなった。
 平成二十七年度から二十九年度にかけては、経産省が、(株)日本製鋼所と(株)神戸製鋼所に委託し、「原子力発電所等金属廃棄物利用技術開発」事業を行った。
 平成三十年三月二十二日には、この技術開発事業を受けて、同二社および電気事業連合会が経済産業省「原子力発電所等金属廃棄物利用技術開発」報告会で、「原子力発電所から発生する再利用可能金属の技術開発について」の「今後の取組み方針」(以後、「今後の取組み方針」)として四項目を挙げた。
 それらは、国会答弁の縛りを忘れたかのように読めるが、資源エネルギー庁放射性廃棄物対策課に尋ねると、平成十七年の国会答弁の縛りは現在も有効であるとのことである。
 そこで、以下、確認する。

一 平成十七年三月三十日の衆議院経済産業委員会で高木陽介議員が次のように質問を行った。
 「新しい制度を導入するときに、やはり移行期間というのを考えなければいけない(略)。国民の中には安心感があるかどうか。(略)一〇〇%絶対に大丈夫だというふうに思いながら信じてやっていくわけですが、やはり不測の事態というのは起きるわけです。原発の事故というのはそういうものですね(略)。クリアランスされたものにまじって、原子力施設のほかに放射性廃棄物が搬出されたのが見つかった場合、国はどういうふうに対応するのか。」
 これに対し、当時の松永和夫・原子力安全・保安院長が次のように答弁した。
 「新しい制度でございますので、定着するまでの間、まさに国民に信頼感をもって受け入れられるような、そういう取り組みも必要だと考えております。具体的には、再生利用、処分の場合にはどこに最初に搬出されるのか、あるいは、有価物として再生利用する場合にはそういう処理をする会社はどこなのかということにつきまして、国といたしましても、事業者に対して、具体的に把握するように求めていきたいと思っております。これを受けまして、事業者におきましては、当分の間、クリアランスされたものにつきまして、率先して社会の理解が得られるように、あらかじめ了解済みの処理業者あるいは限定された産業廃棄物処分場に搬出をするということを表明しておりまして、こうした形で円滑な制度の定着に努めてまいりたい、かように考えております。
 それから、仮にクリアランスレベルを超えるようなものが外に出たということでございますけれども(略)、そうした事態が発生いたした場合には、国といたしましては、きちっと調査を行いまして、炉規制法に基づきまして適切な措置を講ずることとしております。具体的には、炉規制法に基づきまして、放射性廃棄物の回収を含む措置命令を発出する、あるいはこの命令に従わない場合には罰則を適用する、こうした法律を厳格に適用してまいりたいと考えております。
 また、具体的にこうしたプロセスをどのような形で進めていくのかということにつきまして、環境省等も含めて、具体的なマニュアルづくりみたいなものも検討してまいりたい、かように考えております。」
 この国会答弁は有効か。
二 平成十七年四月二十日の衆議院経済産業委員会で吉田治議員は次のように質問を行った。
 「鉄、コンクリートを外へ出した場合に、これは再処理すると、原則は、また発電所等でそれを使うということが原則になっているのか」
 これに対し、当時の松永和夫・原子力安全・保安院長が次のように答弁した。
 「クリアランスされたものの再利用でございますけれども、法律上は、これは産業廃棄物の世界に入りますので、その使い道につきましてはいわばオープンでございます。ただ、このクリアランス制度がきちっと国民の御理解を得て、制度としてきちんと浸透するまでの間は、電力事業者の自主的な措置として、再利用する場合には、再び原子力発電所の中で利用するということの方針でいくというふうに承知をしております」
 この国会答弁は有効か。
三 一で示した答弁で「具体的なマニュアルづくり」に言及しているが、それは完成しているのか。
四 二で示した電力事業者の自主的な措置であるクリアランスされたものを「再び原子力発電所の中で利用するということの方針」を、これまで資源エネルギー庁はどのように担保してきたのか。
五 一と二で示した通り、当時の原子力安全・保安院長は、クリアランス制度が「定着するまでの間、まさに国民に信頼感をもって受け入れられるような、そういう取り組みも必要だ」「きちっと国民の御理解を得て、制度としてきちんと浸透するまでの間は」と答弁を行っていた。クリアランスされた金属で作った製品は、未だに市場には出回っておらず、制度としての定着も見られないと考えるがどうか。
六 「今後の取組み方針」で示された四項目の一つは、「クリアランス金属を取り扱うにあたり、放射線測定や地元への情報提供等については、通常の金属スクラップと同様の取り扱いを行っていきます」としており、クリアランス金属を取り扱う工場などで、放射線測定や地元への情報提供等を行わないという意味に読み取れる。しかし、クリアランス制度は未だ定着しているとは言えず、そのような中で放射線測定や地元への情報提供等を行わないのは、国会で答弁された「国民に信頼感をもって受け入れられるような」「取り組み」には反し、時期尚早であると思われるが、政府の見解を明らかにされたい。
七 「今後の取組み方針」で示された四項目には、「日本製鋼所が製作する電力向け製品の材料として再利用できるのであれば、これを資源として有効に利用していきたい」という項目もあり、これは、「再び原子力発電所の中で利用する」という答弁とさほどかけ離れてはいないと思われる。「電力向け製品」という表現は曖昧だが、それが「原子力事業者の施設で使われる製品」という意味であるとすれば、当分はこのような限定的な使い方をすることが、国会答弁に適う使途であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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