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平成三十年十一月一日提出
質問第二八号

無痛分娩事故の陣痛促進剤の関与に関する質問主意書

提出者  阿部知子




無痛分娩事故の陣痛促進剤の関与に関する質問主意書


 無痛分娩が普及している諸外国に比べて、我が国で行われている無痛分娩は人工的に陣痛を誘発する計画分娩が主流で、陣痛促進剤の使用が一般的である。昨年無痛分娩による新生児や妊産婦の死亡が相次いだことを受けて発足した「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」(研究代表者:海野信也教授)班が本年三月に提言を公表した。その内容を見ると「麻酔事故」にほぼ限定したものとなっているが、無痛分娩の事故は必ずしも麻酔に関係するものばかりではない。わが国でも無痛分娩を希望する妊婦が増えている今日、医療者にはあらゆるリスクを想定した安全な分娩体制を提供する義務がある。
 このことに関連して以下質問する。

一 無痛分娩事故の検証について
 (一) 同研究班メンバーである三重大学の池田智明教授によれば、二〇一〇年〜二〇一六年の七年間の妊産婦死亡例二七一例のうち無痛分娩によるものは一四例(五、二%)であり、そのうち一三例に陣痛促進剤が使用されていた。
  一四例の「死因」は麻酔関連死が一例、それ以外の一三例は危機的産科出血・羊水塞栓症、子宮破裂とされているが、この「死因」に至った原因に陣痛促進剤の関与が否定できないとして、同研究の最終報告書に、この一三症例における陣痛促進剤の使用状況が盛り込まれる予定と聞いていたが、本年六月二十五日に公開された最終報告書には「分娩監視装置が装着されているのを確認した」とあるのみで、陣痛促進剤の使用状況には一切言及がなかった。なぜか。
 (二) 産科医療補償制度の二〇一三年の報告書では、陣痛促進剤を使用したケースの約八割で学会が設けた使用基準を守っていなかったことが指摘され、同制度の再発防止委員会が厳重な分娩監視や用法・用量を守ることなどの提言を行っている。
  しかし二〇一八年の同報告書の原因分析結果によれば二〇〇九年〜二〇一二年までの四年間の分析対象六二九件のうち、子宮収縮薬で陣痛誘発、促進を行った事例は一七二件(二七、三%)。使用する際に説明と同意があったのは一〇二件(五九、三%)で、そのうち推奨されている文書で同意を取ったのは五〇件(二九%)だけであった。
  オキシトシン使用で用法・用量が基準内であったのは三〇、五%、PGF2α使用は六一、九%、PGE2使用は九二、三%であった。
  分娩監視については、四〇、七%で連続監視が行われていなかった。特に、PGE2錠の使用に際しては、三九件のうち三一件(七九、五%)が連続監視していなかった。
  子宮収縮薬を使用した事例のうち、用法・用量が基準内であり、かつ分娩監視装置による連続的な胎児心拍数聴取が行われた事例は五〇件、わずか二九%であったと報告されている。
  まして無痛分娩は麻酔を使用するため本来の陣痛が感得されにくく、陣痛促進剤投与による過剰な子宮収縮から容易に子宮破裂などの最悪の状態に陥る可能性があることは自明である。
  死亡事例について、改めて陣痛促進剤の使用実態(用法・用量)や、分娩監視記録から胎児心拍、陣痛の状態に着目した詳細な検証を行うべきではないか。
二 陣痛促進剤の添付文書改訂について
 (一) 陣痛促進剤について、厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は本年八月二十八日、安全対策としてPMDA(医薬品医療機器総合機構)専門委員が提案した、添付文書の「警告」欄に「無痛分娩も含め」の追加記載を見送った。
  議事録によれば、参考人として出席した二名が、「その提案は、合理的な根拠が分からない。添付文書への記載は無痛分娩が怖いという印象を与えかねない。分娩監視装置を連続使用して十分監視しているのだから書く必要はない」等と強く反対を唱えている。
  会議の席上、二〇一五年〜二〇一七年までに報告された無痛分娩時の陣痛促進剤による副作用被害症例が二九例(重複を除く)報告されたが、「本剤の投与状況に関する情報が不足しており、薬剤との因果関係評価は困難である」という事例が、一二例、「陣痛の状況及び本剤の投与状況に関する情報が不足しており、薬剤との因果関係評価は困難である」という事例が六例あった。
  この「情報不足」のため「評価困難」である報告内容から、どうすれば「分娩監視装置を連続使用して十分監視している」ことが読み取れるのか。こうした意見こそ「合理的な根拠」のない主観にすぎないのではないか。認識を問う。
 (二) 議事録からは、議決権を持たない一参考人の主観的な意見によって改訂案に賛成した委員も押し切られた形で合意に至らなかった経緯が読み取れる。厚生労働大臣の諮問機関である有識者会議のこうした運営のありようは、厚労省の薬事行政全体に不信を抱かせ、信頼を失墜させかねないと懸念するが見解は如何。
 (三) そもそも報告書に「陣痛促進剤の投与状況に関する情報が不足している」とは如何なることか。分娩時の医療的介入が適切か否かを評価するにあたっては、薬剤の投与状況に関する情報は不可欠である。なぜ内容分析のできる報告様式にしないのか。医薬品副作用症例報告書の報告様式を再設計し、全症例にカルテの写しとともに用量、胎児徐脈、分娩監視の有無等の記載を義務付けるべきと考えるがどうか。
 (四) 議事録によれば、両参考人もきちんと情報を収集してエビデンスを集積すべきだという発言をしている。このことを踏まえるならば、無痛分娩は提供体制の観点ではなく事故原因の検証に限局した上で、医会・学会任せではなく厚労省医政局医療安全推進室の主導による研究班を新たに設置し、被害当事者やその支援者からのヒアリングを不可欠のものとして実施すべきではないか。どうか。
  報告内容の情報不足を理由に薬剤との因果関係の評価を放棄する姿勢では、無痛分娩の安全性がいつまでも確立されず、妊産婦からの信頼も回復できないことを肝に銘ずるべきである。

 右質問する。



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