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平成三十一年一月二十八日提出
質問第一〇号

外国人技能実習生に対する妊娠禁止規定は民法違反とした判決があること等に関する質問主意書

提出者  阿部知子




外国人技能実習生に対する妊娠禁止規定は民法違反とした判決があること等に関する質問主意書


 政府は外国人技能実習制度で明らかになった人権侵害問題を放置したまま、新たな在留資格を設けて、外国人労働者を受け入れようとしている。労働者は人であり、労働は人の生活の一部でしかない。労働者を受け入れることは生活者を受け入れることであるにもかかわらず、そのことを忘れ、人権意識が欠けた実習実施者や監理団体による許しがたい事件も数々起きてきた。
 中には不法行為として裁判の判決で認められた事件もある。二〇一三年七月十七日、富山地方裁判所は、妊娠禁止規定は民法第九十条違反であると認定し、その判決(以後、十三年判決)が確定した。この事件は、外国人技能実習生を受け入れた側が、妊娠が判明した技能実習生に帰国を迫り、その日のうちに本人の意思に反して飛行機に搭乗させようとして、その翌日に流産を引き起こしたことを、不法行為と認定し、損害賠償責任を一部認めたものだ。
 以下、十三年判決に照らして、技能実習制度および今後の外国人材の受入れ・共生のあり方について質問する。人権にかかわることなので、十三年判決を入手、確認の上、答弁は複数の質問に対してまとめてではなく、一つひとつ別々かつ簡潔にされたい。

一 十三年判決には妊娠禁止条項についての裁判所の判断が述べられている。実習生の送出国にある送出機関と被害実習生の母が結んだ派遣契約書にある妊娠禁止条項は、女性の技能実習生が技能実習中に妊娠し、実習が中止された場合は、無条件に帰国し、送出機関と受入団体が受けた損害を技能実習生が賠償すべき義務を負うという趣旨である。十三年判決は「このような取り扱いは、技能実習生に対する人権侵害につながる」とし、さらには、法務省入国管理局作成の「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反するものであったと認定している。
 1 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反する旨を、「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」に加える検討を行ったか。
 2 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」の趣旨に反する旨を、海外の送出機関、国内の技能実習実施者や監理団体に通知し、周知徹底する措置を取ったか。
二 十三年判決で裁判所は「妊娠禁止規定により技能実習を打ち切り、即時帰国を求めることは、労働関係法令の適用により技能実習生の法的保護を図るという技能実習制度の趣旨に反し、公序良俗(民法第九十条)に反するものであるから、原告がいったんそのような合意をしたとしても、かかる合意に拘束力はないと言わざるを得ない」と認定した。
 1 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、妊娠禁止条項は公序良俗(民法第九十条)に反する旨を、省内で共有したか。
 2 法務省および厚生労働省は、十三年判決が出た当時、海外の送出機関、国内の技能実習実施者や監理団体に、妊娠禁止条項は公序良俗(民法第九十条)に反する旨を周知徹底したか。
三 妊娠禁止条項により技能実習を打ち切り、即時帰国を求めることは民法第九十条違反であるとの判決があるにもかかわらず、公序良俗に反する契約を結ばせられている事例は未だにある。現在、来日中のあるベトナム人技能実習生の技能実習生派遣事業に関する契約書には、技能実習が中止され強制送還される場合が例示され、犯罪などと並んで、「慢性病やAIDSにかかり、妊娠等の場合」と書かれている。
 1 この事例については、困窮した技能実習生を支援する団体が、政府にも通知していると聞くが、政府はその事例を支援団体から聞く前に認識していたか。
 2 この事例を認識した後、現在までに、政府はどのような措置を取ったか。また、今後どのような措置を取るのか。
四 妊娠禁止条項を記載した契約書が他にも結ばれていないか、送出機関、技能実習実施者、監理団体に対して、一斉に調査をかけるべきではないか。
五 男女雇用機会均等法第九条は「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等」を定めており、「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」、「事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」、「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」、「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」と定めている。
 日本政府は、男女雇用機会均等法第九条が技能実習生にも適用されるという立場を取っているが、その学習機会を、海外の送出機関および国内の技能実習実施者や監理団体を対象に設け、遵守を求めたことがあるか。
六 二〇一八年十二月五日に開かれた参議院法務委員会で、移住者と連帯する全国ネットワーク理事の高谷幸大阪大学大学院人間科学研究科准教授は、「実習生は恋愛も妊娠も禁止され、妊娠が分かった時点で中絶か帰国を迫られるという報道がありました。こうした措置は認められるものではないというのが政府の見解のようですが、このような例は後を絶ちません」と述べ、このような人権問題が起きることについて、「教育や出産、子育てをコストとして見る発想に根差しています。私は、この発想は、外国人の問題に限らず、出産や子育て、教育に十分な公的支援がなされていないという日本社会全体の問題と地続きである」と指摘した。この指摘を受け、政府は新たに特定技能制度を導入するにあたり、日本社会全体にどのようなメッセージを送るべきだと考えるか。
七 わが国には、男女雇用機会均等法や労働基準法などを含めた母性保護規定や母性保護のための女性労働基準規則が定められているが、技能実習制度に関わる送出機関、技能実習実施者、監理団体に対して、母性保護の必要性について伝えてきたのか。
八 二〇一八年十二月二十五日に政府が発表した「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」には、母性保護に関する記述がまったくないが、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会」に関わる関係府省、とりわけ法務省および厚生労働省の職員が、検討会の設置を契機に、男女雇用機会均等法や労働基準法などを含めた母性保護規定や母性保護のための女性労働基準規則を学習する機会はあったのか。
九 二〇一八年十一月、厚生労働省人材開発統括官付技能実習業務指導室に、外国人技能実習機構における技能実習生からの母国語相談の内容の内訳を尋ねたところ、二〇一七年の八百五十四件および二〇一八年の千四百三十五件の相談のうち、「その他」が二〇一七年は三百五十七件、二〇一八年は六百六十件と最も多く、妊娠・出産に係る相談は「その他」に入っているらしいことが分かった。
 そこで、妊娠・出産に関する相談内容について尋ねたところ、二〇一八年十二月二十七日に技能実習業務指導室を通した真摯な調べと文書回答により、二〇一七年から二〇一八年九月までに次のアからエのような相談が五件あったことが判明した。各件で、相談された側はどのような助言や対応を行ったのか、一般論を回答したのか、親身な対応を取れたのか、プライバシーが侵害されない範囲で確認して答弁されたい。
 ア 友人の実習生が妊娠したが、どうしたらよいか(二件)。
 イ 実習期間中に友人の実習生が妊娠したが、異常妊娠のため入院が必要となった。入院費用の保険は使えるのか。
 ウ 実習先から失踪した実習生からの相談。妊娠のため、帰国したいが、旅券と在留カードを紛失したため、再発行したい。どうしたらよいか。
 エ 妊娠したが、子供を堕したくて、薬を飲んだ。病院へ受診したいが、受診できるか。
十 法務省は「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を検討するにあたり、技能実習生からは、このような相談があったことを認識していたか。
十一 日本で妊娠、出産した技能実習生や、技能実習生から生まれた子どもが送還された事例を認識しているか。分かる範囲で明らかにされたい。
十二 日本でもいわゆる「できちゃった婚(授かり婚)」は全国平均で二十五%を超えている。技能実習生の妊娠・出産も想定内のものとし、日本人女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が保護、尊重されるのと同様に、技能実習生に対しても保護、尊重されるべきだと考えるがいかがか。
十三 法務省は二〇一八年十二月二十七日に、技能実習制度が創設されて以来初めて、虚偽の入国後講習実施記録を提出したことなどを理由に監理団体の許可の取消し処分を行った。母性保護規定や女性労働基準規則に違反した場合も、許可取消しの対象となりうるか。
十四 政府は、十三年判決が示す教訓が生かされるよう、新たな特定技能制度が実施される四月までにどのようなことを行うか明らかにされたい。

 右質問する。



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