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平成三十一年三月十四日提出
質問第九三号

革新的な新薬の承認及び保険適用の推進に関する質問主意書

提出者  柚木道義




革新的な新薬の承認及び保険適用の推進に関する質問主意書


 本年二月二十日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は国内初のがん免疫療法キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR−T)療法であるチサゲンレクル(商品名キムリア)の承認を了承した。CAR−T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を活用してがん細胞への攻撃を効率化するものであり、がん患者から免疫細胞を取り出し、遺伝子操作によってがん細胞を認識・接合する能力を高めて培養した上で患者の体内に戻し、体内に戻った免疫細胞ががん細胞の目印を巧みに探し当てて攻撃を行い、結果的にがん細胞を死滅に追い込むという画期的な治療法である。
 すでにこのCAR−T細胞療法を承認している米国では患者一人あたり約五千万円の費用がかかると報告されており、わが国でも保険適用されれば非常に高い金額となることが予想できる。しかし、他の多くのがん治療と異なり一回の治療で「寛解」(症状が落ち着いて安定した状態)に至るという、劇的な効果を持つという研究結果がある。また、投与される患者数も最大で二百五十人程度と想定されており、医療保険財政に与える経済的な影響はそれほど大きくない。
 このような新薬の承認に向けた動きに関連して、以下質問する。

一 安倍内閣が掲げる「医薬品産業強化総合戦略」(平成二十九年一部改訂)では「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換する」と記載されている。安倍内閣として、この方針は現在も継続しているという理解で良いか。
二 右の質問一に関連して、安倍内閣として、より高い創薬力を持つ製薬企業へインセンティブを与えることについて積極的という理解で良いか。
三 平成三十年の薬価改定において「新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度」(以下「新薬創出等加算」という)の対象が大幅に制限され、平成二十八年改定時には四百十六成分・八百二十三品目が対象だったが、平成三十年改定により三百十四成分・五百六十品目へと、約百成分・約三百品目が対象から外れた。革新的な医薬品がより多く創出されるための新薬創出等加算なのに、対象をしぼることで各製薬企業への新薬創出や適応外薬解消等のインセンティブを失わせたのは矛盾である。安倍政権は新薬創出等加算の縮小により、各製薬企業に「新薬創出に消極的」というシグナルを送っているが、「より高い創薬力を持つ産業構造に転換」させるには新薬創出等加算の拡大を検討すべきだ。新薬創出等加算の拡大に関する政府の見解を問う。
四 冒頭に述べた、がん免疫療法キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR−T)療法であるチサゲンレクル(商品名キムリア)の対象も患者数が千人以下の「ウルトラオーファン」と呼ばれる希少疾患の治療薬・治療法であるが、平成二十九年七月に承認された、脊髄性筋委縮症治療薬スピンラザ(成分名ヌシネルセンナトリウム)も想定患者数がピーク時でも四百十四人と少ない。確かにスピンラザは平成三十年四月現在の保険収載薬価で十二ミリグラム一瓶が九百三十二万四百二十四円と高額であるが、患者数が少ないゆえ製薬企業の採算の見通しが立ちにくく、何らかの誘因がなければ研究開発が進まず、これにより希少疾病の患者が不利益を受けることを防ぐためにも、高い薬価を承認しても何ら不思議ではない。
 1 希少疾病用医薬品開発に関わる支援措置として「再審査期間の延長」「優先審査」「医薬品・医療機器機構による指導・助言」などの措置があるが、これらは今後も継続されるという理解で良いか。
 2 希少疾病でない場合にも、治療効果の見込める患者対象のスクリーニングの技術開発を進めて治療対象を適切に絞りこむなど保険財政への影響も考慮しながら、革新的な新薬が承認された場合にはその開発費用を回収できるだけの適切な薬価が設定されるべきだと考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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