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平成三十一年三月二十日提出
質問第一〇四号

薬機法改正案における「責任役員の変更命令」条項撤回に関する質問主意書

提出者  早稲田夕季




薬機法改正案における「責任役員の変更命令」条項撤回に関する質問主意書


 二〇一九年三月十九日に閣議決定され、国会に送付された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下、薬機法改正案)は、厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会が了承した「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」(以下、とりまとめ)と比べ、製造・流通・販売に関わる者のガバナンス強化策について大きく後退する内容となっている。医薬品製造販売にかかる保健衛生上の危害の発生が懸念される不正事案が発生し続けている現状にあって、このような医薬品製造販売者におもねるような法案の改悪を看過すれば国家百年の計を誤ることになりかねない。
 医薬品製造販売にかかる者が法人の場合には、自然人の場合よりも、医薬品・医療機器等を取り扱う者に求められている責務が当該法人内で曖昧となることが散見され、結果的にその責任を果たされていない事例が多いと聞く。先のとりまとめにおいても、「薬機法上の許可等業者、許可等業者の役員及び許可等業者において選任された責任者・管理者等が、薬機法が求める責務を果たすことを担保するための措置を検討し、再発防止に取り組む必要がある」と結ばれており、具体的には、「許可等業者の薬事に関する業務に責任を有する役員を薬機法上位置づけること」及び「責任役員による許可等業者の法令遵守を担保するため、必要な場合に、当該責任役員の変更を命じることができるものとする措置を定めること」と提言されている。
 ところが国会に提出された薬機法改正案には、責任役員の変更命令にかかる条文はなく、ただ責任役員を置くということにとどめている。これまでも医薬品製造販売業者には、総括製造販売責任者を筆頭とする三役を置き、医薬品製造販売における安全及び品質等を確保するために意見を行うことができるとしてきた。しかしながら、医薬品製造販売業者にあってこれら三役が意見を上申する機能が十分でなく、品質管理及び安全確保よりも利潤を優先する事例が後を絶たない。つまり単に意見を上申するだけの機能を付与しても、実効性は著しく低くなる事例がまん延しているということになる。そこで今般の改正において、医薬品製造販売業者等の医薬品を製造・販売・流通する事業者に対して、意見上申機能のみでなく、経営側にもその意見上申に耳を傾ける機能を責任役員に付与し、これに従わない役員が責任役員とならないように措置するべく検討されたのが、とりまとめにあった責任役員の変更を命じることができるものとする条項のはずである。
 つまり、「責任役員の変更命令」は品質・安全を顧みることなく漫然と違法な経営を続ける医薬品にかかる事業者に対する伝家の宝刀であるともいえ、この伝家の宝刀を抜くかもしれないという抑止力を与える施策であったと理解している。それにもかかわらず「責任役員の変更命令」にかかる条文が薬機法改正案に含まれていないので、以下質問する。

一 二〇一八年の厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会においてその措置が求められているにもかかわらず、今般の薬機法改正案に「責任役員の変更命令」条項を盛り込まなかった理由について、政府の見解を明らかにされたい。
二 「責任役員の変更命令」については、二〇一九年三月十四日の参議院厚生労働委員会において宮本真司医薬・生活衛生局長は「全く私的な自治の範囲のところで活動されている、自由な経済活動に基づいて団体を設立され、その中で事業を行っている方々であり、そのガバナンスにつきましての、不十分かもしれませんけれども、一定の規律の中で行っているところに、非常に限定的な話とはいえ、一段階目で法令順守体制について厳しい措置を導入した上に、そこの上にさらにその役員の変更命令をすることというものについてご疑問もございました」(以下、宮本答弁)と答弁しているが、そもそも「一段階目の厳しい措置」とは何を意味するのか、また、「厳しい」というのは何をもって厳しくなったということなのか、明らかにされたい。
三 宮本答弁では、「全く私的自治の範囲」及び「自由な経済活動に基づいて団体を設立」という説明があったが、医薬品を製造販売するにあたっては薬機法の規定を遵守することが求められる。全く私的な自治の範囲で医薬品を製造販売できるしくみに我が国はなっていないと承知するが、政府の見解を明らかにされたい。また、「自由な経済活動」についても、確かに自由な経済活動に基づき団体を設立することは可能であるが、他方で国内に設立される団体にあっては、法令を遵守することも当然に求められるわけで、宮本答弁の意味するのは、法令遵守しない自由な経済活動が認められるということを意味するのかも明らかにされたい。また、一般に、公共福祉に反する自由な経済活動は制限されるものと理解するところであるが、宮本答弁は、とりまとめが指摘するような「経済的利得を主たる目的として行われる類型の違法行為」を繰り返すことも含む「自由な経済活動」を厚生労働省は認めるということなのか、明らかにされたい。
四 宮本答弁では、役員の変更命令について疑問があったという説明もあった。この背景には、一部に国が民間企業の人事に関与することについて「上から目線だ」というような意見が業界にあるという報道もあると承知している。しかしそもそもの話として、医薬品製造販売業を含む医薬品の製造・販売・流通にかかる業は許可制であって、法令遵守は当然のことであり、法令を遵守しているのであれば、いかなる行政処分を受けることもないはずである。法令遵守する以上、いかなる罰則があろうともそれが適用されることはないのであって、「罰則規定の適用」を怖れ、「上から目線」などという意見は理解に苦しむ。我が国の医薬品の製造・販売・流通に関する事業者には遵法精神が醸成されていないという認識なのか、政府の見解を明らかにされたい。また、遵法精神のない事業者に許可を与えるのは国民の健康を守るという観点から、あってはならないと考えるが政府の見解を明らかにされたい。
五 例えば、医薬品を販売する薬局についていえば、自然人の経営する「薬局」の場合には、当該薬局が違反行為を行った場合には、罰則は自然人たる薬剤師にも及ぶので、当該薬剤師は薬局を経営できない場合もある。少なくとも自然人の場合には、国は「上から目線」の行政処分を下すのは当たり前のことである。憲法の保障する法の下の平等に鑑みれば、法人であれ、自然人であれ、同様の扱いをするべきではないか。法人に対する罰則規定を盛り込む際に、自然人に対するよりもなぜ慎重な対応をしなければならないのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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