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平成三十一年四月十八日提出
質問第一四五号

保安規定違反を「結果オーライ」にした保安検査体制の改善に関する質問主意書

提出者  阿部知子




保安規定違反を「結果オーライ」にした保安検査体制の改善に関する質問主意書


 四月三日の原子力規制委員会は、資料四「東京電力ホールディングス(株)福島第二原子力発電所にて確認された本社予防処置活動の不備について」(以後、「資料四」)で、原子力規制庁からの報告を受けた。平成三十年度第四四半期の東京電力における保安検査の結果、原子力安全上重要な複数の機器に不具合があり、必要な予防処置活動が行われずに放置されていたことも明らかになった。
 報告を受けた更田豊志原子力規制委員長は、保安規定は違反があっても「結果オーライだったら軽くなるようになっている」との問題意識を明らかにする一方、原子力規制委員会としては、違反の程度を下から二番目に軽い「違反三」だと判断した。
 違反程度の判断過程では、二百八十八件あった保安規定違反の全体像、とりわけ必要な予防処置活動が未実施だった三十三件についての情報は開示されていない。
 従って、現状は、保安規定違反があっても、情報の公開性は十分に担保されず、違反程度の判断に恣意性が疑われても、結果的に問題が起きなければ、それでよしとする検査体制である。
 そこで、保安規定は何のためにあるのかを確認し、検査過程の透明化と原子力規制への信頼を高めるために、以下質問する。

一 保安規定とは原子炉等規制法第四十三条の三の二十四に基づいて事業者が定めて申請し、原子力規制委員会に認可を受けなければならない(第一項)ものであり、原子力規制委員会は、災害の防止上十分でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない(第二項)。また、災害の防止のため必要があると認めるときは、発電用原子炉設置者に対し、保安規定の変更を命ずることができる(第三項)としている。
 つまり、保安規定は単なる自主的な社内規制ではなく、遵守が法令により厳格に求められているものだと考えるがどうか。
二 原子炉等規制法第四十三条の三の二十四に基づく「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第九十二条は、発電用原子炉設置者は、事業所ごとに次の三つを保安規定で定めて記載した申請書を提出しなければならないとしている。
 「一 関係法令及び保安規定の遵守のための体制(経営責任者の関与を含む。)に関すること。
  二 安全文化を醸成するための体制(経営責任者の関与を含む。)に関すること。
  三 発電用原子炉施設の品質保証に関すること(根本原因分析の方法及びこれを実施するための体制並びに作業手順書等の保安規定上の位置付けに関することを含む。)。」
 資料四を整理すると、@過去五年で二百八十八件もの保安規定違反があったこと、A必要な予防処置がとられなかった事案が三十三件あったこと、B予防処置が未実施だった三十三件は、福島第一、第二、柏崎刈羽の三つの発電所および本社のすべてにわたっていたこと、C三十三件には柏崎刈羽の「六号機中央制御室送風機の風量低下」および「一号機非常用ディーゼル発電機潤滑油プライミングポンプの不具合」など原子力安全上重要な機器も含まれていたことが分かる。
 @〜Cを鑑みれば、規則第九十二条で求められている保安規定の遵守のための体制などは不十分であり、原子力規制委員会は、東電が定めた保安規定の変更を命ずることを検討すべきではないか。
三 二百八十八件の保安規定違反は、福島第二原発で四十三件、福島第一原発で六十三件、柏崎刈羽原発で百五十五件、本社で二十七件あったと原子力規制庁は資料四で報告した。
 しかし、予防処置未実施の三十三件については「柏崎刈羽六号機中央制御室送風機の風量低下」と「柏崎刈羽一号機非常用ディーゼル発電機潤滑油プライミングポンプの不具合」の二件以外には、事業所別数の内訳も、内容も公開されていない。
 山中伸介委員は、「今回の件」は「東京電力ホールディングスの情報共有、あるいは伝達のシステム並びにマネジメントの不備である」とし「違反三でいいかなと思っている」と述べたが、予防処置未実施の他三十一件についてはどのような判断をしたのかは、国民には確認ができない。少なくとも必要な予防処置が未実施だった三十三件の内容については、事後的に資料四に添付するなど公開すべきではないか。
四 石渡明委員は、予防処置が未実施だった柏崎刈羽原発の一号機と六号機の二件について、「『安全上重要な機器』というのはクラス一なのですか、二なのですか、三なのですか」と尋ね、原子力規制庁の古金谷原子力規制部検査グループ安全規制管理官(実用炉監視担当)(以下、実用炉監視担当)が、「MS−1というところで、重要度としてはクラス一、一番高いクラス」だと回答している。
 また、資料四の表「保安規定違反の判断基準」によれば、クラス一機器は「安全機能」の欄で最も重い「違反一」か「違反二」に位置づけられている。
 にもかかわらず、実用炉監視担当が、「保安規定違反の判定基準からすると、品質保証のところの保安規定違反二か三というものに該当する」との判断を示したのは、恣意的な過小評価ではないか。
五 違反程度の判断の際、実用炉監視担当は、柏崎刈羽一号機非常用ディーゼル発電機潤滑油プライミングポンプの不具合に関しては、「部品を取り替えるというような処置をしている」(略)、「そんなに違反二になるような大きな影響のものでもない」(略)、「類似の事象がほかのところでも発生しているというところも確認できておりません」とも回答した。これに更田委員長は、「違反二なのか違反三なのかというのを判断するときの理由が、結局、これはいつも保安規定違反のときに議論になるのだけれども、結果オーライだったら軽くなるようになっている」「新しい制度にあってはどうなのかという議論に進むべきだろう」と述べたが、その通りである。
 原子力規制においては徹底した情報公開が求められており、とりわけ柏崎刈羽原発が不透明な「結果オーライ」の検査体制のままでは、国民からの信頼は得られない。
 原子力規制委員会として、早急な改善を検討すべきではないか。

 右質問する。



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