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令和元年五月二十八日提出
質問第一八七号

社会保険労務士の懲戒制度に関する質問主意書

提出者  阿部知子




社会保険労務士の懲戒制度に関する質問主意書


 労働社会保険諸法令に係る業を行う、国家資格である「社会保険労務士」の、国民に対する制度の透明性を担保する「懲戒制度」(社会保険労務士法第二十五条以降)に関し、以下の点について質問する。

一 社会保険労務士に係る懲戒処分ならびに手続について
 (一) 社会保険労務士にかかる不正情報などへの対応について
  ア 「社会保険労務士の懲戒処分等に係る事務手続マニュアル」の特定
  平成二十五年三月二十九日付、労働基準局監督課社会保険労務士係作成の「社会保険労務士の懲戒処分等に係る事務手続マニュアル(以下、「マニュアル」という。)」は、平成二十八年十月十八日付諮問(平成二十八年(行情)諮問第六二六号)に対する、厚生労働大臣の平成二十九年七月三日付答申(平成二十九年(行情)答申一三〇号)と同様、作成時以降現在まで、改訂は行われていないか否かの確認を求める。
  イ 社会保険労務士にかかる不正情報などの相談窓口
  前記「マニュアル」によれば、社会保険労務士にかかる不正情報などの相談窓口は、本省をはじめとして、局監督課、社会保険諸法令所轄部署(厚生労働省年金局事業企画課監理・社会保険労務士係・地方厚生(支)局年金調整課又は年金管理課)、並びに全国社会保険労務士会連合会をはじめとする、都道府県社会保険労務士会が担当することとされているが、現在もその理解でよろしいか。
 (二) 聴聞の被害者参加について
  社労士法第二十五条の四第三項において、社労士の懲戒に係る聴聞は公開によることとされているが、聴聞参加者の確保は、具体的にどのような手段で行っているのか。また、関係人(特に、懲戒請求者)に対して、聴聞は公開であり傍聴可能である旨の告知はしているのか。
  しているとしたら、どのタイミングで行われるのかをお示し願いたい。
 (三) 量定について
  ア 基準の存在について
  部外秘として、厚生労働省が平成十六年二月十八日に作成した「社会保険労務士の懲戒処分に係る量定の基準」は、現在も基準として存在するかお尋ねする。
  イ 情状酌量について
  前記基準は、量定の基準として、一定の基準が示され、情状酌量により同基準の量定が減量する旨が示されている。前記量定の決定について、具体的に社会保険労務士法第二十五条の三により、「罰金以下の刑に処せられた場合」に該当する懲戒処分としての業務停止につき、被懲戒者Aが罰金刑十万円を理由とするもの、他方被懲戒者Bが罰金刑五十万円を理由とするものであった場合、業務停止期間に差異があるか。仮に同じだとしたら、どの様な情状酌量が考えられるかお尋ねする。
 (四) 懲戒処分の公表の基準について
  ア 公表の方法について
  社労士法は、懲戒処分の通知及び公告につき、第二十五条の五で、「厚生労働大臣は、第二十五条の二又は第二十五条の三の規定により懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、その理由を付記した書面により当該社会保険労務士に通知するとともに、官報をもつて公告しなければならない。」と定めている。
  加えて、厚生労働省HPの「懲戒処分等の基準」の、「二 懲戒処分の公表の基準」 (以下、「公表の基準」という。)では、次のように定められている。
  すなわち、
  「(三) 公表等の方法
  社会保険労務士法第二十五条の五又は第二十五条の二十四第二項の規定に基づき官報をもって公告するとともに、厚生労働省ホームページ等で公表する。
  ※平成三十一年四月一日以降の懲戒処分より適用」
  であり、官報に公告の上、併せHP上でも公表するということであるが、最後の一文につき「※平成三十一年四月一日以降の懲戒処分より適用」とは、具体的にどのようなことを意味しているのか、ご説明いただきたい。
  イ 懲戒処分の公表の期間について
  前述の「公表の基準」において、
  「(二) 懲戒処分の公表の期間は、次に掲げるとおりとする。
  ア 戒告 処分の日から一年
  イ 業務の停止 業務の停止の日から期間終了の翌日より二年
  ウ 失格処分又は解散 処分の日から五年」
  とあるが、例えば、「イ 業務の停止」の場合、処分の日に懲戒処分の事実公表をし、期間終了の翌日より二年間公表を継続することの目的をご説明いただきたい。
  ウ 被懲戒請求者により扱いが異なることについて
  (ア) 個別具体的な比較
  前記公表基準があるものの、HP上で公表されている、実際の懲戒処分者の情報は、対象者によって掲載時期が異なっている。
  例えば、平成三十一年二月九日から三か月間の業務停止処分を受けた者が、平成三十一年四月三日付で公告されている。本来、上記基準でいえば、処分の日である平成三十一年二月九日が公表の起算日でなければならない。
  他方、平成三十一年二月二十四日から一年間の業務停止処分となった者については、平成三十一年三月十一日付で公告されている。このケースにおいても、本来、処分の日である平成三十一年二月二十四日を起算日として公表しなければならない。
  さらに、前者と後者を比べてみると、前者の方が、懲戒処分の始期が二週間程度早いにもかかわらず、公表は、懲戒処分の始期がそれより遅い後者より、三週間程度後にされている。つまり、前者の懲戒処分に係る事実の公表期間は、後者の懲戒処分に係る事実の公表期間にくらべ、不当に短いことが分かる。
  「公表の基準」と異なる、こうした取り扱いにつき、合理的な理由について具体的にお示しいただきたい。
  (イ) 公表が遅れることの弊害
  業務停止処分における、厚生労働省でのHP上の処分公表について、場合によっては業務停止期間終了後に公表されることも予想される。すなわち、先の事例である、平成三十一年二月九日から三か月間の業務停止処分を受けた者が、平成三十一年四月三日付で公告された件につき、処分から公表までは五十三日の期間を要していることになる。
  そうすると仮に当該被懲戒処分者の業務停止期間が一か月間だった場合、処分終了後に公表されることになる。そうすると、仮に業務停止違反をしていたとしても、被懲戒処分者の名で書類提出等を行っていない限り、他の業務は誰の監視を受ける事もなく行えることになるものと思料される。こうした事象につき、業務停止処分の目的に適っているのか、否か、合理的なご説明を伺いたい。
  エ 懲戒処分の公表の終期について
  「公表の基準」によれば、例えば、業務停止の場合、業務の停止の日から期間終了の翌日より二年の間、HP上で処分の公表がされることとなっている。
  しかし、前述した、平成三十一年二月九日から三か月間の業務停止処分に係る懲戒処分を受けた者につき、平成三十一年四月三日付で、厚生労働省、全国社会保険労務士会連合会、岡山県社会保険労務士会の各HP上に、その情報が公告された。しかしながら、同月二十六日には、各HP上で、何の断り書きもなく、すべてのHPから、忽然と当該被懲戒処分者の情報とともに、懲戒処分者の一覧からも同人の氏名等が削除された。つまり、本来、基準どおりの扱いをするならば、二年三か月間、HP上で情報の公表が継続されなければならない者が、わずか二十三日間で公表が終了してしまったということである。
  こうした特別の扱いは、まず、基準どおりに氏名が公表されている、他の懲戒処分者との公平性が損なわれていることは述べるまでもない。
  そして、業務停止の公表期間が、「業務の停止の日から期間終了の翌日より二年」と定められた背景には、その期間は、被懲戒者の反省を促すのに相当な期間であること、また、公表の期間は、依頼者である国民に対し、当該社労士は何らかの非違行為で懲戒処分を受けた者であることから、依頼にあたっては、通常の社労士よりも気を付けるよう、注意喚起を促す期間であることなどが思料されることから、本来の懲戒処分に期待する効果を得ることができない。
  よって、懲戒処分の基準を厚生労働省のHP上で謳いながら、それと異なる扱いをすることは、同じ懲戒者の中で平等な扱いがされていないことはもとより、懲戒処分を受けた士業者への依頼を忌避する依頼者となるべき国民の、人選における正当な評価を、不当に誤らせることになる。
  こうした、基準を大きく外れた扱いがされていることにつき、合理的な理由を開示願いたい。
 (五) 社会保険労務士の業務停止について
  ア 業務停止に該当する要件について
  社労士法には、その第二十五条に懲戒処分の種類は「戒告」、「業務の停止」、「失格処分」の三種類であることが定められている。
  厚生労働省がHPに公表している、「懲戒処分等の基準」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/shahorou-tyoukai/tyoukai-kijun.html)のうち、その一において「懲戒処分の基準及び事例」を示しているものだが、これによれば、「社会保険労務士法及びこれに基づく命令や労働社会保険諸法令の規定に違反したとき」は、「失格処分、一年以内の業務の停止又は戒告」の適用を受けるとされている。このため、デュープロセスの観点から、どのような場合が「業務停止」に該当するのか、その判断基準となる要件が、具体的かつ詳細に定められていなければならないものと解される(ちなみに、弁護士会には、「弁護士法人の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準(平成十九年三月十五日改正)」が存在し、通常の弁護士活動の他にも、業務停止期間には「看板等、一切の表示の除去」、また、「法律事務所の使用禁止」など、具体的な業務停止の要件並びに判断基準が示されている。)。
  社会保険労務士には、こうした基準は存在するのか。また、こうした基準があるとするならば、当該基準の公表はどのようにしているのかにつき、お示しいただきたい。
  イ 業務停止の確認方法について
  さらに、「業務停止」につき、被懲戒処分者が実際に業務をしているのか否かに関し、懲戒権者の主務官庁として、どの様な方法で事実を確認するのか、具体的にお示しいただきたい。
  ウ 業務停止違反の通報対応について
  (ア) 通報の窓口について
  「業務停止」の期間中に、被懲戒処分者が社会保険労務士法の命令に違反し、業務を行っていることを現認した国民がその旨の通報をする場合、窓口はどこになるのか、また通報の方法(すなわち、文書によるか、口頭によるか、また文書の場合はその様式が存在するのか)につきお尋ねする。
  (イ) 通報に対する調査義務の有無
  前記通報につき、懲戒権者に、調査の作為義務があるか。作為義務がないとしたら、その根拠をお示しいただきたい。
  (ウ) 通報者に対する報告
  前記通報に対し、どの様な調査をし、その結果どうなったかの報告は、通報者に対してなされるのか否かをお尋ねする。
二 懲戒処分と、懲戒処分取り消し訴訟の関係について
 (一) 執行停止になった者の、厚労省HPの掲載期間について
  前記懲戒処分の内、業務停止の処分を受けた懲戒処分者については、官報に公告するとともに、厚生労働省のHPに、業務の停止の日から期間終了の翌日より二年間公表されることが基準として示されている。
  他方、懲戒処分を受けた者が、その懲戒処分を不服として行政訴訟などを提起することも可能である。同時に、保全手続きとして、執行停止を申し立てた場合、結果的に、実質「懲戒処分」を受けなくても良いことになる。
  厚生労働大臣が、愛知県社会保険労務士会所属の社会保険労務士に対し、平成二十八年二月十日付けで行った、三カ月の業務停止処分に対する「懲戒処分取消請求事件」を例にとると、一審判決は平成三十年二月二十二日に言い渡しがされている。この事案では、控訴がされていないが、仮に控訴がされていれば、三カ月の業務停止処分、並びに厚生労働省HPでの処分公表基準の期間を優に徒過することになる。この間、懲戒処分者が執行停止を申し立てていれば、実際に懲戒処分に該当する事実があったとしても、業務停止並びに、厚生労働省HPでの処分公表は、実質的に受けずに済むということになるのか、お尋ねしたい。
 (二) 唐突に削除することについて
  これまで、社労士の被懲戒処分者につき、その氏名等が官報に公告されると同時に、厚生労働省のHPに公告内容が公表されている。後日、当該処分につき「懲戒処分取消請求事件」が提起され、執行停止処分が認められると、厚生労働省HPをはじめとして全国社会保険労務士会連合会並びに各都道府県社労士会のHPから、当該公告の事実が何らの解説なく削除される。そうすると、同HPの閲覧者には、当該懲戒処分の取消がされたが如くの誤認をさせるものと思料されるが、国民の知る権利に対し、消去の事実関係について、一定の情報を開示する用意はあるかお尋ねしたい。
 (三) 懲戒請求者に対する取消訴訟が提起されたことの告知
  被懲戒請求者の聴聞手続においては、懲戒請求者に対して、公開で行う聴聞の傍聴を告知する旨がマニュアルで定められている。同様に、懲戒処分を不服として被懲戒請求者が当該処分の取消訴訟を提起した際、同情報は懲戒請求者に告知するのかお尋ねする。

 右質問する。



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