衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和元年十月十五日提出
質問第三二号

薬害筋短縮症の二次障害の救済に関する質問主意書

提出者  阿部知子




薬害筋短縮症の二次障害の救済に関する質問主意書


 薬害筋短縮症は、幼少期に筋肉注射を受けた部位で、筋の線維化により伸張性が低下し関節運動の制限が起こる医原性疾患であり、一九四六年に大腿四頭筋短縮症の第一例目の症例報告がなされた後、全国で多発し社会問題となった。国・日本医師会・医療機関・製薬会社を相手に患者の親らが起こした訴訟では、他の薬害と比較して比較的軽症であったため、医療機関・製薬会社と一時金のみで和解が成立。国・日本医師会は「原因を認識し、公衆衛生の向上に努める」との宣言のみで責任は問われなかった。そのため今日に至るまで公的医療保障や相談窓口の整備など、具体的な対策は皆無である。
 こうした現状を踏まえ、以下質問する。

一 現在、筋拘縮症患者は五十歳以上の中高年が中心となり、腰痛など当初は予想しなかった痛みを主とした不調や、関節可動域制限や筋力低下により、日常生活に支障をきたし手術に至った例も報告されている。和解時の「原因を認識し、公衆衛生の向上に努める」という反省に立ち、成人後の長期予後について、この間どのように対策してきたのか。
二 患者団体「薬害筋短縮症の会」では、筋短縮症当事者の現状を医学的に再確認するため、二〇一一年から一年間、自主検診団の一員である整形外科医の吉田貢医師の協力を得て、重症会員十名の診察と検査を実施した。
 その結果、大腿四頭筋拘縮症者のほとんどに腰椎の変形等の異常が確認され、その後行われた実態調査の回答では、多くの会員が慢性的な痛みを抱えており、治癒のめどもないまま加齢とともに障害が深刻になっていく不安を訴えている。
 さらに二〇一八年、日本社会医学会所属の滋賀医科大学をはじめとする医師・理学療法士・看護師・人間工学の有志による専門家チームが、筋拘縮症の患者の「二次障害による筋骨格系障害の予防・診断・治療」のための調査・研究を実施、本年の第六十回日本社会医学会総会において、「薬害筋拘縮症者の二次障害について」とするタイトルで発表した。
 これらの調査結果から明らかになったのは、拘縮による手足の動作制限により、身体の複数個所に筋肉の張りや凝り、だるさ、しびれを伴う痛みが発現していることであった。これらは筋拘縮症による代償動作での生活や労働環境・条件によって起きた「二次障害」に他ならないと考えるが、どうか。
三 厚生省データ(一九七七年)と、自主検診団データ(一九七三〜七六年)を合わせて、現在、全国に被害者総数一九、〇六三人ともいわれる患者の実態調査を急ぐ必要がある。先の二つの調査・研究は、患者団体「薬害筋短縮症の会」の会員を対象として実施されたもので、母数は極めて少ない。しかし、親も気づかないまま身体の違和感を抱えながら成人となり、インターネットで調べて初めて病名が分かった患者など、筋拘縮症の情報は極めて少なく、医療専門職ですら病名を知らないという実態が放置されている。全国でこうした「二次障害」を発症している患者は、通院費や医療費など、公的な医療補償はもちろん、症状の追跡調査や治療法の検証もないまま現在に至っている。
 まずこうした患者の掘り起こしに向けた相談窓口を設置し、国が責任をもって二次障害の実態をつぶさに調査すべきと考えるがどうか。
四 国との和解では「筋拘縮症の原因を認識し、公衆衛生の向上に努める」とされた。まさしく現在の社会が超高齢化に向かい、人々が要介護状態になる大きな要因として「ロコモティブシンドローム(運動器症候群疾患)」を整形外科学会が提唱し、国や医学界も予防と治療の情報を積極的に発信している。
 しかし、その一方で筋短縮症の患者の二次障害が放置されるとすれば、国の施策に逆行していると言わざるを得ない。一日も早く適切な治療を受けられる環境を整えることが重要である。従って速やかに研究班を設置し、医療費の保障とともに、病態の追跡調査と治療法の検証を実施すべきと考えるがどうか。
五 筋短縮症のみならず、サリドマイドやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などの薬害患者も、高齢化の進行により、医療面だけでなく生活面でも困難を抱えるケースが増えているが、都道府県の担当課に向けた「全国関係部局長会議」における薬事関係分野の「薬害被害者の支援について」において、「国では、研究班による調査等を通じて、薬害被害者の高齢化等に伴うニーズ等を的確に把握し、関係部局で連携して対応していくこととしている。」と繰り返し述べている。薬害筋拘縮症患者もこの対象であるという認識でよいか。筋拘縮症は薬害である。政府の良識ある対応を望む。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.