衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和二年二月十二日提出
質問第六〇号

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の診断基準の見直しに関する質問主意書

提出者  阿部知子




乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)の診断基準の見直しに関する質問主意書


 幼い子どもへの深刻な虐待事件が後を絶たないが、乳幼児の身体を激しく揺さぶって頭部にけがをさせる乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)は、身体的虐待の象徴的な事案として注目を集めてきた。
 しかし今月六日、大阪市で当時生後一か月の女児に脳に損傷を負わせ植物状態にしたとして傷害罪に問われた母親の控訴審で逆転無罪の判決が出された。また、七日には町田市で生後一か月の女児を揺さぶり、頭部に大けがを負わせたとして傷害致死罪に問われた父親の地裁判決で無罪が言い渡された。
 SBSの診断基準の運用を巡っては、逮捕・起訴された保護者に無罪判決が出たり、逮捕された後に不起訴になったりするケースが近年相次いでいることについて、以下質問する。

一 直近五年間で乳幼児の虐待による頭部外傷(AHT)の疑いありとして起訴された件数、そのうちSBSとされた件数について、それぞれ係争中の件数、無罪が確定した件数について、政府として把握している年次推移を明らかにされたい。
二 乳幼児の頭部外傷に対して単純にSBS理論を当てはめることについては、脳神経外科医等から疑義が上がっており、日本弁護士連合会でも「SBS理論は保護者が子どもに虐待を行ったという冤罪を作り出していく危険性がある」と警告を発している。こうした中で無罪判決が相次いでいることについて、政府の認識を問う。
三 大阪市の事例は低い位置からの落下が原因となった可能性が指摘された。日本では一九六〇年代につかまり立ちからの転倒といった軽微な衝撃でも乳幼児に急性硬膜下血腫が生じる症例が報告されている。この症例は「中村T型」と呼ばれ、脳神経外科医の間で広く知られているというが、承知しているか。
四 一方、厚生労働省は二〇一三年に改正した「子ども虐待対応の手引き」では「九十cm以下からの転落や転倒で硬膜下出血が起きることは殆どない」と明示し、SBSを第一に疑うこととされているが、この医学的根拠は何か、改めて問う。
五 「日弁連刑事弁護センター取調べの可視化本部」が二〇一七年に行ったスウェーデン視察報告によれば、SBS理論は、一九七一年に英国の医師が発表した「仮説」に端を発し、その後米国内で発展・定着する過程で、硬膜下血腫、網膜出血、脳浮腫の三徴候を呈した事例に他の原因が発見できない場合には養育者の暴力によるものと推定されるという議論が起こり、それに基づくものであるとされているが、近年このSBS理論については海外においても医学的な疑念が呈されている。
 ついては、日本小児科学会、日本脳神経外科学会、日本救急医学会、法医学会等において合同チームを作り、全学会が一定基準で登録した症例を詳細に検証する作業が必要ではないか。その上で改めて診断基準を作るべきと考えるが、政府としての見解を求める。
六 被虐待児の速やかな安全の確保は当然の措置であり、SBSが疑われる場合の保護措置はやむを得ないと考えるが、親子分離の状態が親子関係に与える負の影響も十分考慮されなければならない。他方、保護者への対応については前出の「手引き」が必ずしも遵守されていないケースも見受けられる。保護者に対しては常に冤罪の可能性を念頭に置きつつ、現在の状況や今後の見通し等についての丁寧な説明が必要と考えるがどうか。
七 「虐待」の有無は言うまでもなく医療者の所見だけでは確定できない。子どもを保護者から引き離す保護措置については、社会的な要因も含めて地域のケース会議で検討する必要がある。昨年の法改正で要保護児童対策地域協議会の機能強化が盛り込まれたが、市町村に司令塔を置き、その子どもを取り巻くすべての関係者に出席義務を課すことを可能とするよう、権能を集中すべきである。そのためには財政的な裏打ちが必要だが、政府に拠出する考えはあるか。
八 子どもの死因究明(Child Death Review(以下「CDR」という))の体制整備モデル事業が、四月から開始される。厚労省の説明では、「子どもが死亡した時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察、消防、行政関係者等)が、子どもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯等に関する様々な情報を基に死因調査を行うことにより、効果的な予防対策を導き出し予防可能な子どもの死亡を減らすことを目的とする」ものとあり、全国で五か所程度を想定、二年後のCDRの制度化に向けた検討材料とするという。
 この事業に脳神経外科医及び救急医の必置を求めるがどうか。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.