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令和二年六月十日提出
質問第二四六号

新型コロナウイルス感染症と労災および公務災害に関する再質問主意書

提出者  阿部知子




新型コロナウイルス感染症と労災および公務災害に関する再質問主意書


 令和二年五月二十七日提出の新型コロナウイルス感染症と労災および公務災害に関する質問主意書への答弁書(内閣衆質二〇一第二一〇号)が令和二年六月五日に閣議決定された。しかしその内容は、エッセンシャル・ワーカーとされる労働者が、日々、安全と健康を脅かされながらコロナ禍に対峙している事実に対して、あまりにも鈍感であり、危機感が欠落していると言わざるを得ない。
 このことを踏まえ、以下再質問する。

一 労災補償について
 1 新型コロナウイルス感染症による直近の労災請求件数は、六月八日に公表された、請求件数百二十六件(うち医療従事者九十四件)、認定件数十五件(うち医療従事者十二件)である。しかし、全国各地で院内感染や集団感染が相次ぎ報告される中、「毎日新聞」六月八日朝刊の記事によれば、独自の取材により、新型コロナウイルスの院内感染が全国の九十九医療機関で発生した疑いがあり、患者や医療従事者が少なくとも二千百五人が感染していたことが明らかになったという。感染者の内訳は患者千二十八人、医療従事者等千十三人、その他(事務職員や出入り業者等)五十五人、不明九人という。
  厚労省は四月二十八日通達「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」において、医療従事者等について「患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」と明記している。本来であればこの千十三人は迅速な労災請求・認定に至っているはずではないのか。医療従事者の労災請求件数九十四件、認定件数十二件と、けた違いに少ないが、何に起因していると認識しているのか。政府として見解を明らかにされたい。
 2 多くの事業所において、安全衛生上の法的義務についての使用者の認識不足により、労働者保護の理念がないがしろにされ、当然の権利である労災請求に至らないのではないかと考えられる。厚労省「新型コロナウイルスに関するQ&A」問八に「事業主の援助」とあるが、法的には「事業主の助力義務」であり、労働者災害補償保険法施行規則第二十三条に、「保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続きを行うことが困難である場合には、事業主はその手続を行うことができるように助力しなければならない」と明記されている。
  現に感染して入院加療している労働者が請求手続きが困難である場合には、事業者側に手続を進めるよう促すべきであり、さらに言えば事業所自体が院内感染対応に追われ、小規模の介護事業所等は休業や倒産の危機もあり得るなど、果たすべき役割を行使できないケースも考えられる。所管の労働基準監督署はこうした事業所にきめ細かく対応し、請求・申請のサポートや指導監督を積極的に行うべきと考えるがどうか。
 3 答弁書ではクラスター対策班の役割について、「医療機関や社会福祉施設等における集団感染を防止することが重要と認識しており、同省において、全国で発生した集団感染の事例を収集している」と述べている。ならばその調査対象の中には、労働者が感染した際の詳細な実態把握並びに救済状況が当然含まれなければならない。介護・障害福祉などの社会福祉施設および居宅介護サービス事業所などについて、政府が把握している集団感染の事例数を明らかにされたい。また、それらの事例のうち、労働者死傷病報告が提出されている件数と労災請求の件数を明らかにされたい。
 4 (1) 答弁書において、医療機関における集団感染の事例は八十五件であり、うち、労働者死傷病報告を受理した事例が十三件、報告件数は六十八件という。ここで言う集団感染の「事例数」「受理した事例数」「労災請求の事例数」は、医療機関の数という意味か。用語の意味を明らかにされたい。
   (2) 医療機関の集団感染事例八十五件のうち、労働者死傷病報告を受理した件数は十三件しかない。圧倒的に死傷病報告の提出数が少ない原因は何に起因しているのか。政府として見解を明らかにされたい。
 5 答弁書の「二の4について」で、死傷病報告の提出について「勧奨に努めている」とある。死傷病報告の速やかな提出は、労働安全衛生法上の事業者の義務である。政府は、死傷病報告の提出について、勧奨ではなく労安衛法違反の是正勧告を行うべきである。政府として見解を明らかにされたい。
 6 答弁書では、認定事例に関する情報の公表について検討したいとあるが、六月八日には、都内の病院に勤務し新型コロナウイルス感染症に感染した看護師が、三週間の調査で労災認定されたと報道されている。こうした認定に関する具体的な報道は、労災請求を促す上で非常に大きな効果を持つ。政府は、認定事例の公表について、いつまでにその検討を終えるのか。検討の期限を明示されたい。
 7 従前の認定事例では、結核病棟の看護師など、その職場の環境条件や業務自体に感染の危険性がある場合には「特に反証のない限り」労働災害・公務災害が認定されてきた。例えば、一九七七年には保育所の保育士が子どもから風疹に感染したとして公務災害の認定を受けている。この時の認定要件は次の三つであった。(「公務災害四〇〇例とその解説」ぎょうせい)
  @ 担当クラスで風疹の子どもと接触していた。
  A 家庭と自宅近隣に風疹患者がいなかった。
  B 医学的意見からも風疹は近接(密接な接触)感染により感染する。
  今回該当するあらゆる労働者について、積極的な反証のない限り迅速に業務起因性を認め、労災認定すべきと考えるがどうか。
二 公務災害について
 1 答弁書では国家公務員の公務災害について、人事院規則一六−〇(職員の災害補償)第二十条の規定に基づき、補償事務責任者が新型コロナウイルス感染症による災害について実施機関に報告した件数はゼロ件との事である。しかし、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での業務に従事していた国家公務員が感染したとの発表が厚労省からなされ、バーレーンに派遣中の海上自衛官が感染したとの発表が防衛省からなされるなど、公務中の国家公務員の感染が複数報告されている。当該省庁はこれら職員の使用者責任に基づき補償義務を負っているところ、報告件数ゼロ件とはどういうことか。説明を求める。
 2 公務災害において補償事務責任者による報告とは、申請や請求によらず「職権探知主義」に基づいて「国が使用者責任において補償を行うものであることから、被災職員からの請求を待つことなく、国が自ら公務災害であるかどうかの認定を行う」とされている。しかし、当事者からの申請や請求を認めないことは、国家公務員災害補償法第二十三条「この法律に定める補償の実施については、これに相当する労働基準法、労働者災害補償保険法、船員法及び船員保険法による業務上の災害に対する補償又は通勤による災害に対する保険給付の実施との間における均衡を失わないように十分考慮しなければならない。」における「均衡」を損なう事実となりうると考えるがどうか。
 3 人事院は国家公務員災害補償に当たっては、国家公務員災害補償法第三条に照らせば申請や認定の状況を取りまとめ把握する立場にあり、不適切な運用に関しては厳しく是正する責務を負っている。また二〇〇七年の災害補償制度研究会報告書において、「請求主義への転換に向けて制度の見直しを行っていくことが必要」とされていることから、新型コロナウイルス感染症による公務災害については各省庁に積極的に申請・請求を促し、迅速な認定・救済を図ると同時に、人事院において公務災害を取りまとめ、統計資料として公表すべきと考えるがどうか。
三 地方公務員の公務災害について
 1 地方公務員災害補償基金について、五月二十七日時点で請求数が四件と極めて少ないが、この原因について、政府としての見解を明らかにされたい。
 2 各自治体に積極的な申請・請求を促し、認定事例の概要を公開すべきである。特に、地方公務員災害補償基金を所管する総務省が、その責任において、請求の促進や認定事例の概要公開について、同基金を指導すべきと考える。この点について政府の見解を示されたい。

 右質問する。

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