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令和二年十一月二十日提出
質問第二一号

東京外かく環状道路(関越〜東名間)の地下掘進工事地での陥没事故等に関する質問主意書

提出者                           
笠井 亮    宮本 徹




東京外かく環状道路(関越〜東名間)の地下掘進工事地での陥没事故等に関する質問主意書


 東京外かく環状道路(関越〜東名間)(以下、「外環道路」と呼ぶ。)の地下掘進工事が直下で行われていた東京都調布市東つつじヶ丘で本年十月十八日、地表面の陥没事故が発生した。東日本高速道路株式会社(以下、「NEXCO東日本」と呼ぶ。)は十一月二日、陥没箇所付近で地中に空洞が存在することを、新たに確認した。周知のように、一帯は閑静な住宅街であり、重大事故につながりかねない諸事態に対して、住民から恐怖と不安、憤りの声が挙がるのは当然である。
 現地周辺では本年八月頃から、振動及び騒音等による被害が住民から次々に訴えられており、家屋等の壁面の亀裂、タイルの剥離、敷地の変状等が生じていた。住民は振動等について徹底した調査と原因の究明を求め、且つ、原因等が明らかになるまでシールドマシンによる掘進は停止すべきと、強く求めていた。しかし、国とNEXCO東日本は掘進を続行し、住民が最も懸念していた陥没事故が生じ、空洞も発見された。
 そもそも外環道路事業は国が推進し、多額の国費を投入してきた事業である。
 今回の事態について、国は責任を持って調査と原因究明にあたり、住民に丁寧に説明し諸要望に応えるとともに、外環道路事業そのものについて中止を含めた根本からの見直しを行うべきである。
 この立場から、以下、質問する。

一 外環道路建設は、国が推進している事業であり、国土交通大臣がNEXCO東日本、中日本高速道路株式会社(以下、「NEXCO中日本」と呼ぶ。)とともに事業主体となり、都市計画事業の承認と大深度地下の使用認可を行っているゆえ、そもそも国の責任が重いのは明らかである。
 国は、東京都調布市内での陥没事故と空洞及び振動等の調査と原因の究明・検証、住民に対する説明や一連の被害への対応をNEXCO東日本並びにNEXCO中日本の両社任せにするのではなく、責任を持って行うべきと考える。基本的姿勢、及び認識について詳細に明らかにされたい。
二 陥没事故の発生後、国土交通省関東地方整備局、NEXCO東日本関東支社、NEXCO中日本東京支社がかねてより設置していた「東京外環トンネル施工等検討委員会」(以下、「検討委員会」と呼ぶ。)の第二十二回委員会が本年十月十九日に開催され、陥没事故について審議があった。検討委員会は十六人の委員中、国土交通省、東京都、NEXCO東日本、NEXCO中日本と首都高速道路株式会社の代表者が八人を占めるという構成であって、そもそも外環道路について「早期供用が求められる中」(同検討委員会の設置趣旨より)等として、「トンネルの構造、施工技術等について確認、検討することを目的」(同)としたものである。同年十月二十三日には、検討委員会の中の学識者を委員とする「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」(以下、「有識者委員会」と呼ぶ。)が開催された。設置者は検討委員会と同様である。同日の有識者委員会は「第二回」とされ、十月十九日の「東京外環トンネル施工等検討委員会 第二十二回委員会」は「第一回東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」と併記された。有識者委員会の目的は、同委員会の規約によると、「トンネル構造、地質・水文、施工技術等に関する技術的な検討について」審議するというものである。右に見られるように、検討委員会及び有識者委員会の設置趣旨は、今回の陥没事故や空洞、振動等についての調査や原因究明そのものを目的としたものではない。
 今回の陥没事故や空洞、振動等の事象の解明については、有識者と専門家の知見を結集することが重要である。事業にあたっての技術的な検討等を行う機関や委員会ではなく、原因の調査と究明を目的とする、独立性、公平・中立性を持った、第三者的な機関・委員会を設置すべきではないか。そして、議事については原則公開し、住民参加も検討すべきではないか。また各種データ、関連諸資料を全面的に公開し、且つ、他の専門家、有識者や住民等が検討・検証を行えるようにすべきではないか。見解と決断を求める。
三 本年十月十九日の第二十二回検討委員会(第一回有識者委員会)の「議事概要」によれば、「今後の調査」として、「地盤状況確認のためのボーリング調査および音響トモグラフィー調査」「採取した地下水の成分分析」「埋設物の状況確認」「地歴、文献調査の再確認」と「周辺道路を含め、地表面付近の空洞探査を早急に実施すること」を「確認した」としている。すなわち地盤等を調査するというものである。施工状況等はこの日の検討委員会の資料で「掘進中のトンネル坑内の各計測値(圧力や掘削土量など)は、添加材・圧力・搬送設備等の調整を行っていることで適切な状態で施工されていることを確認した」とされている。十月二十三日の第二回有識者委員会では、施工状況の調査等については「議事概要」では触れられず、資料の中で「地盤状況の確認を行うため、以下の調査を行う」として、「地歴、文献」の後に並列して「施工データの再確認」が加えられた。十一月五日の第三回有識者委員会の「議事概要」では、「陥没や空洞が発生した要因を把握するため、シールドトンネルの掘進データの確認に加え、地形、地質、地下水、並びに河川との関係についても調査する」とされた。これら三回の委員会では、地盤調査の内容は具体的に示されているのに対し、掘進データの「確認」については、具体的な実施内容を示していない。
 「検討委員会」と「有識者委員会」の小泉淳委員長は十月十九日の第二十二回検討委員会後のブリーフィングにおいて、陥没とトンネル工事との関連について問われ、「因果関係があるか、はじめからそこに空洞があったか、これから調べないとわからないと思うが」としつつ、「因果関係がないとは言い切れないし、それ以外に急にこういうように落ちるということはないのである程度そういうことが考えられる」とし、さらに「考えられるとしたら、もともとそこに空洞があったか、土を多く取りすぎたか。どっちかですよね」、「シールドを掘ることによって適正に土の量を取っていて、それで陥没するということはまず考えられない」「空洞があったという可能性は低いでしょうね」との説明をしている。
 トンネル掘進工事の施工状況について徹底した調査、分析、検証を行い、陥没事故や空洞、振動等との関係を究明すべきではないか、国の見解を示されたい。その際、掘削した土量や圧力、推力、トルク、掘進速度、添加剤、土砂の搬送、裏込注入などの状況について詳細に分析・検証し、それらのデータについては公表すべきではないか。見解を示されたい。
 また第二十二回検討委員会の資料の中で、「掘進中のトンネル坑内の各計測値(圧力や掘削土量など)は、添加材・圧力・搬送設備等の調整を行っていることで適切な状態で施工されていることを確認した」とするのは、いかなる根拠やデータに基づくものか、詳細に明らかにされたい。
四 近隣住民に対しては、陥没が生じてから約二十日後の十一月六日と七日に、ようやく説明会が開かれた。しかも、説明会の周知や対象者の範囲は極めて限られたものであり、マスコミの参加も認めないというものであった。
 住民が恐怖と不安を訴え、生活に重大な被害と影響を及ぼし、他の箇所での陥没や空洞も懸念される中で、あまりにも遅い対応であると、率直に指摘する。住民への説明会はもっと早く行うべきではなかったか。
 今後も住民の要望に応じ、あるいは事態・状況の推移に照らして、繰り返し説明会や説明の機会を持つべきではないか。また、より広い範囲の住民も参加でき、マスコミの取材も認めるようにすべきではないか。加えて、住民への説明会はこれまで掘り進めてきた区間・地域やこれから掘進を計画している地域でも行うべきと考える。見解を示されたい。
五 これまで掘り進めてきた区間では「安全の確認のため」として地表面の常時監視(以下、「GNSS測量」と呼ぶ。)と路面空洞調査を実施するとされる。しかし、本年十月二十三日の第二回有識者委員会後のブリーフィングにおいて、小泉淳同委員長は路面空洞調査について「正確にわかるのは一・五メートルくらい。もしかしてというと三メートルくらい」との説明をしている。その後、NEXCO東日本等が十一月二日に確認した空洞は、地表からの深度は約五メートルとしている。これは路面空洞調査により発見したものではなく、ボーリング調査により確認したものである。
 これまで掘り進めてきた区間で実施するとしている「路面空洞調査」は「安全の確認のため」には不十分なものではないか。十月二十三日の第二回有識者委員会の資料は「『東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会』における検討等を踏まえつつ、今後とも適切に必要な調査を実施します」としている。真に、「適切に必要な調査を実施」すべきである。見解を求める。
 また、これまで掘り進めてきた区間でのGNSS測量や路面空洞調査について、どのような調査をいつどこで行うか、及び同測量と空洞調査の有効性と限界点、さらなる詳細かつ有効な調査方法について、住民への説明や説明会を行うべきではないか。詳細な説明をされたい。
六 今回の陥没事故や空洞の発見では、国とNEXCO東日本の対応の遅さが、様々に指摘されている。検討委員会や有識者委員会の資料によると、陥没については十月十八日の九時三十分に工事業者が地表面沈下を確認し、十二時三十分に地表面の陥没を確認し、周辺住民への避難要請はNEXCO東日本が十三時三十分に開始したとする。陥没を確認してから一時間後、地表面沈下を確認してから四時間後のことである。また空洞については、十一月二日の十二時二十分に空洞の可能性を確認し、翌三日にNEXCO東日本が有識者へ空洞の対応に関する見解を聞き、四日の十時から十二時の間に、NEXCO東日本が近隣住民へ説明した。空洞の可能性を確認してから二日後のことである。
 国とNEXCO東日本の住民に対する説明と避難要請等の対応は、あまりに遅い。見解を問う。
七 国土交通省関東地方整備局東京外かく環状国道事務所、NEXCO東日本関東支社東京外環工事事務所、NEXCO中日本東京支社東京工事事務所が共同で発行したパンフレット「東京外かく環状道路(関越〜東名)トンネル工事の安全・安心確保の取組み」によると、「東京外かく環状道路(関越〜東名)の本線トンネル工事については、安全対策を十分に実施することで、地表面の安全性が損なわれる事象は生じないと考えられます」とした上で、「トンネル内に掘削土以外の土砂等が大量流入する時を『緊急時』としています」としている。
 今回の陥没事故や空洞の発見は「緊急時」との認識か、それとも「緊急時」ではないという認識か、明らかにされたい。また「緊急時」を「トンネル内に掘削土以外の土砂等が大量流入する時」としたのでは、今回のような住民の安全にかかわる事態が生じた場合に、緊急の対応が適切かつ有効に行えないのではないか、明らかにされたい。
八 外環道路事業に関して国土交通大臣は「大深度地下におけるシールド工法による工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じないもの、このように考えています」、「シールド自体が壊れるということがなければ、これは地上への影響というのは生じないということが言えるんだと思います」(二〇一五年三月二十日の衆議院国土交通委員会での太田昭宏大臣(当時)の答弁)等としている。さらに、住民などに対しても、国やNEXCO東日本、NEXCO中日本は「本線トンネル工事はシールド工法を採用しており、地上に影響は生じない」等と説明し、地権者の同意と補償も「なし」に事業を進めてきた。
 しかし二〇一八年には、東名ジャンクション工事地で河川からの気泡の噴出や、地下水の流出等が生じ、二〇一九年には大泉ジャンクション工事地で河川から気泡が噴出する事態となった。東京都調布市内でも、本年三月から河川での気泡噴出が生じている。
 これらの事象について、国等は説明の場において、外環道路工事に起因すると認めてきた。そして、今回の地表面の陥没事故と空洞の発見である。
 国とNEXCO東日本、NEXCO中日本は、大深度地下におけるシールド工法による工事は地上への影響は生じない、とする認識を根本的に是正すべきではないか。見解を求める。
 この間の相次ぐ事態は「地上に影響は生じない」とした大深度地下の使用の前提が崩れていることを示しているではないか。そもそも大深度地下の使用は「財産権は、これを侵してはならない」とした憲法第二十九条に違反するものである。見解を明らかにされたい。そして、使用認可にあたっての地権者や住民の手続きへの参加・関与の機会はきわめて限られたものである。大深度地下の使用については取り止めるべきではないか、見解を求める。
九 外環道路事業の事業費は、国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会が本年七月三十日と九月三日に行った事業再評価において、前回の一兆五九七五億円から約七六〇〇億円増の二兆三五七五億円へと増額し、事業開始当初の一兆二八二〇億円と比べて一・八倍へと膨張している。全体事業費の費用便益比(B/C)は一・〇一となっている。
 今回の陥没事故や空洞の発見等により、事業費はさらに増大するではないか。見解を求める。「地上に影響は生じない」とした大深度地下の使用の前提が崩れる事態が生じるとともに、事業費も著しく増大するという事態である。加えて、コロナ禍の下での国の財政支出のあり方としても、本事業は妥当性を欠くと考える。外環道路事業は、中止を含め根本から見直すことを強く求める。

 右質問する。

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