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令和三年二月二十四日提出
質問第五四号

普天間飛行場の返還及びその辺野古移設に関する質問主意書

提出者  江田憲司




普天間飛行場の返還及びその辺野古移設に関する質問主意書


 普天間飛行場の返還合意は、一九九六年四月、当時の橋本龍太郎首相が、まさに心血を注いで成し遂げたものである。その背景には、都合十七回、数十時間にわたって当時の大田昌秀沖縄県知事との膝詰め談判等で培った沖縄との深い信頼関係があった。しかし、菅義偉首相と沖縄との関係に、残念ながら、そのような信頼関係があるとは思えない。よって、以下、質問する。

一 菅首相は今、首相と沖縄県、沖縄県民との間に信頼関係があると思うか。
二 菅首相は、梶山静六氏を「政治の師」と仰いでいると聞くが、梶山氏にも政治家として、沖縄に強い思いがあった。
 それに比し、菅首相の沖縄への向き合い方を見ていると、とても梶山氏を師と仰いでいるようには見えず、誠意というものが感じられない。先の施政方針演説でも、首相は「沖縄の皆さんの心に寄り添い」と述べたが、本当に首相は、沖縄に寄り添っていると考えているのか。
三 梶山氏は、その著書で「日米安保の効果的運用のためには、沖縄県民の理解と協力が不可欠であり、県民不在の日米安保はありえない」「民主主義国家において特定の地域、特定の県民だけが国益のために負担を過度に負うことは、民主主義の原理に違背し、やがてはその根本をも覆すことになりかねない」と述べている。菅首相は、この考えに同意するか。
四 故翁長前沖縄県知事は、当時の菅官房長官のことを、沖縄占領時に「沖縄の自治は神話に過ぎない」と発言した「キャラウェイ高等弁務官」に例え、菅官房長官とはじめて会談した場所を、その弁務官事務所跡のホテルにしたという。この事実を菅首相は知っていたか。
五 菅首相(官房長官)は、口では「沖縄に寄り添う」と言いながら、その実は、露骨な「アメとムチ」を駆使し、沖縄を壟断、分断してきたと報道されている。
 例えば、沖縄振興予算の額を二〇一四年度三千五百一億円から二〇一八年度以降三千十億円に減額、うち自由度の高い一括交付金も、二〇一四年度千七百五十九億円から二〇二〇年度千十四億円に減額している。
 その一方で、二〇一五年度から二〇一七年度には、辺野古周辺の三行政区に対し、数千万円の補助金を辺野古移設反対派の名護市長を飛び越えて直接交付し、二〇一八年の市長選で移設賛成派が勝つと、その交付を停止すると同時に、米軍再編交付金を再開した。更に、二〇一九年度には、県の頭越しに国が市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費(二〇二一年度予算八十五億円)」を創設している。
 これら一連の政府の対応について、先にふれたように「露骨な「アメとムチ」で沖縄を壟断、分断してきた」と批判されているが、菅首相の見解如何。
六 菅首相は、「外交に疎い」と批判されて、「すべて官房長官としてフォローしてきたから大丈夫」と反論している。ならば聞くが、安倍・菅政権で、米国に対し、一度でも「辺野古移設」をめぐる沖縄の思い、移設への反対状況について、米国大統領に説明したことがあるか。移設先見直しの可能性について問題提起したことがあるか。
七 菅首相はよく、普天間飛行場の「返還合意が原点」「辺野古が唯一の解決策」と言い募るが、その当事者の一人であった私の立場から申し上げると、確かにあの当時は、沖縄県内への移設しか選択肢がなかったのは事実である。しかし、それはあくまでも一九九六年当時のことである。
 その後、十年が経過し、むしろ米国の意向により、在沖縄海兵隊を約八千人(後に約九千人)削減し、グアム島等の沖縄県外に移すということになった(二〇〇六年五月/「再編実施のための日米のロードマップ」)。一九九六年当時も、「海兵隊の削減」が沖縄のもう一つの大きな要望だったが、さすがの橋本首相も米国に言い出せなかった。
 さらに、最近では、北朝鮮のミサイル能力の向上に伴い、米軍内に、海兵隊を沖縄のような前線に常置しておいて良いのか、抑止力や反撃能力のことを考えれば、むしろ、もっと後方(例えばグアム)に配備した方が戦略的に正しいのではないかとの声も挙がり始めたと聞く。
 ことほど左様に、時の流れに応じて、東アジアを巡る安全保障環境の変化や在沖縄海兵隊の戦略的位置付け等も変わりうる。一度、沖縄の苦悩を含む、辺野古移設の状況を説明し、その見直しを米国に提起したらどうか。首相が「原点」と位置づける「返還合意」も、「こんな戦略的要衝の地を米国が返すはずがない」と反対する外交当局を押し切って、クリントン大統領との初の首脳会談で橋本首相が提起したからこそ成ったのである。
八 また、既に知られているように、普天間飛行場の代替機能は、沖縄県内に必ずしも置かなければならないものでもない。安全保障や軍事戦略上、海兵隊の即応能力や機動性等を確保するためには、県外移設でも十分にそれが担保されうる場合がある。
 海兵隊の運用は、「教育・訓練」「演習や実任務」「次に備えた部隊再編成・教育」というフェーズに分かれ、実際、在沖縄海兵隊も、これらに合わせ、普天間飛行場だけでなく、アメリカ本土、太平洋の各地をローテーションして動いており、半年以上も沖縄を留守にしているともいわれる。
 以上のように、一般論で言えば、必ずしも県内に代替機能を置かなくても、海兵隊の抑止力は維持できると考えて良いか。
九 日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)共同発表(二〇一二年四月及び二〇一三年十月)によれば、海兵隊の沖縄からグアムへの移転(約四千名)は、二〇二〇年代の前半に開始とされている。
 1 現在の進捗状況如何。
 2 その移転に、当初予定されていた「司令部」は含まれるのか。含まれないなら、その変更理由如何。
 3 約九千人の沖縄県外への移転が完了した後に、沖縄に残留する海兵隊は何名か。
十 辺野古移設は、軟弱地盤の発見で、総工費は従来の二・七倍の約九千三百億円に跳ね上がり、工期も延びて、「二〇二二年以降」とされていた移設時期も「早くても二〇三〇年代半ば」にずれ込む見通しとなっている。一時、米国とのSACO(沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会)最終報告(一九九六年十二月)に盛り込まれた「海上施設案(将来的な基地の撤去可能性についても言及)」を、再度、検討する余地はないか。

 右質問する。

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