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令和三年三月八日提出
質問第六八号

食品香料ジアセチルによる呼吸器疾患の労災認定に関する質問主意書

提出者  阿部知子




食品香料ジアセチルによる呼吸器疾患の労災認定に関する質問主意書


 食品香料ジアセチルのばく露による閉塞性肺疾患について、厚生労働省は二〇二〇年十二月、日本で初となる労災認定を行った。労災申請は二〇一八年十二月六日にされ、認定まで丸二年を要したことになる。
 労働者災害補償保険が、「労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護」(労働者災害補償保険法第一条)を目的とする制度であることを踏まえ、以下、質問する。

一 今回の労災事例は食品香料製造工場において合成香料を製造中に発生したものである。労災認定後、この事業場に対して作業環境の改善や呼吸保護具の着用等、再発防止のための安全対策の指導はどのように行われたのか。
二 この事業場では認定当事者以外にも二十人ほどが作業に従事しており、中には咳が続くなどの呼吸器症状が見られた労働者の存在も証言されている。これらの労働者及び退職者に対する健康調査および肺機能調査等は実施されたのか。
三 近年、日本でも食品香料としてジアセチルは多用されている。日本香料工業会によれば、二〇〇五年現在、国内では四十二社が年間計一・六トンのジアセチルを使って香料を製造しているが、厚労省は直近の製造事業者数、製造量、労働者数を把握しているか。
四 今回の労災認定事例について、ジアセチルを扱う関連業界等に対して早急に注意喚起を行うとともに、ばく露の低減対策の指導、労働者及び退職者について健康調査を実施する必要があると考えるがどうか。
五 ジアセチルを扱う工場、事業所は全国にあると考えられる。厚労省は二〇一七年八月に、ジアセチルを労働安全衛生法施行令別表第九「名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物」に指定している(厚生労働省・基発〇八〇三第六号)が、労働現場における管理の実態把握等適切なリスク管理や作業環境の改善に向けた対策は、具体的にどのように講じられたのか。
六 厚労省のホームページ「職場のあんぜんサイト」上で公開されている安全データシートでは、ジアセチルの特定標的臓器毒性(反復ばく露)に関しては、過去の「ポップコーン製造工場で混合作業を行う作業者」の海外事例が言及されているのみである。今回の認定事例を新たな根拠データとして追加記載すべきではないか。なぜ早急に見直さないのか。
七 厚労省はMOCA(三・三′−ジクロロ−四・四′−ジアミノジフェニルメタン)を原因とする膀胱がんの事案について、事案発生を認識した二〇一六年の段階で、「三・三′−ジクロロ−四・四′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策について」(基安発〇九二一第一号)を発出し、関連事業団体宛てに、@法令に基づくばく露防止措置等の徹底、A膀胱がんに関する検査の実施などを要請している。
 さらに、複数の被災労働者からの労災申請について、二〇二〇年十二月に専門家検討会での検討結果をホームページで公開するとともに労災認定基準を示し、MOCAを取り扱う事業場に対する労災請求勧奨まで行っている。
 MOCAによる膀胱がんも、ジアセチルによる閉塞性肺疾患も、同じく昨年十二月に国内初の労災認定事例となったが、ジアセチルにMOCAと同様の対策をとっていない理由は何か。
八 近年、国内で先例のない化学物質のばく露による新たな職業病の労災事案が相次いでいる。より迅速かつ適切に労災認定が行われるよう、ジアセチルを起因とする疾病を労働基準法施行規則別表第一の二に掲げる「化学物質等による疾病」に定め、迅速な労働災害の認定に繋げるよう検討されたい。また、申請から認定まで二年以上も費やしている実態は、労働者災害補償保険法の本旨に反している。本省協議の体制や専門家による検討会のあり方を見直す必要があると考えるが、これらについてどのように認識し、どう取り組まれているのか。

 右質問する。

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