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令和三年三月十五日提出
質問第七八号

待機児童の定義及びその解消のあり方に関する質問主意書

提出者  古本伸一郎




待機児童の定義及びその解消のあり方に関する質問主意書


 少子化が進む我が国にとって、保育の受け皿を整備し待機児童を解消させることは社会における最重要課題である。政府は平成二十九年に「子育て安心プラン」、さらに令和二年に「新子育て安心プラン」を策定し、保育の受け皿を整備し、できるだけ早く待機児童を解消することを目指し対策を行っていると承知している。
 一方、国が行う待機児童数調査に関して、各自治体に保育課長名で通知する「保育所等利用待機児童数調査要領」によると、登園可能な保育所の情報提供を行ったにもかかわらず、特定の保育所を希望し待機している場合は、待機児童数には含めないこととされている。さらに、登園可能な保育所とは、具体的には「例えば、通常の交通手段により、自宅から二十〜三十分未満で登園が可能など」と記載されている。このような除外類型等があることで、子育て世帯の通園等の保育環境の実態把握が困難となり、かえって待機児童の解消に支障をきたしているのではないか強い懸念がある。以上の問題意識を基に、令和三年二月二十六日の衆議院予算委員会第二分科会の質疑内容も踏まえつつ、質問する。

一 国は「自宅から二十〜三十分未満」の保育所を登園可能と定義する通知について、「あくまで例示」としているが、自治体は事実上この定義に基づき待機児童数を集計しているのではないか。自治体における集計の際の判断としてどの程度「例示」に基づいているか、国における把握の有無と国の現状認識を問う。
二 国はあくまで例示とするが、登園可能な保育所を「自宅から二十〜三十分未満」と記載しているのは、国が保護者の朝夕の往復一時間程度の送り及び迎えの負担を妥当と判断しているためということでよいのか、認識について質問する。
三 「自宅から二十〜三十分未満」の保育所は、地域や移動手段、保護者の通勤状況によっては、保護者に多大な負担がかかる場所に立地する場合もあると考えられる。こうした送り及び迎えの負担が理由で自治体から案内された保育所を保護者が断念する場合は、現行の保育課長通知「保育所等利用待機児童数調査について」によれば、待機児童数に集計されない。政府は、待機児童数は「同じ物差しで見ていったときに確実に減少している」と通知の効用を認める一方、「あくまで例示」「柔軟に解釈していただくことは可能」とも答弁している。この矛盾した状況を解決するために、国は例示において時間のみ具体的に記載する規定を改めて、保護者の負担に配慮を行い、より妥当な基準を複数例示する形に変えてはどうか。お尋ねする。
四 政府は現行の待機児童数調査に集計されない、いわば隠れた待機児童の解消について、「この定義とはまた別に、個別補助金等々で手当てをしていく」「政策の中で考えていきたい」としているが、補助金や政策のあり方ではなく、国の通知に基づく待機児童数調査による実態把握の精度そのものに原因があると考える。保護者の送迎負担の観点から往復一時間以内であれば妥当とする現実的ではない基準で待機児童数の調査が行われ、数値が保護者の実感とも乖離して出る限り、自治体は真の待機児童の実態把握が困難となる。結果として保育ニーズに十分に対応できていない現状があるのではないかと考えられる。以上より、改めて登園可能な保育所の例示のあり方を示した保育課長通知を見直してはどうか、政府の認識を問う。
五 国は通知の見直しを行わない場合であっても、保護者の実態に寄り添った真の待機児童の解消にあたっては、国の通知を基準に待機児童数を集計し、「待機児童数ゼロ」を目的化して内外に示すだけでは自治体としても保育環境を改善できない。現状待機児童には含まれず、「特定の保育所等を希望する者」としてしか把握されない方々のニーズにもきちんと対応すべきである旨、自治体に重ねて通知する必要があると考えるが、政府の見解を問う。通知の見直しを行わない場合には、あわせて「あくまで例示として国の方でお示しをしているもの」「柔軟に解釈いただくことは可能」の旨も通知するべきと思うが、お尋ねする。
六 政府として、待機児童数調査は集計上の待機児童ゼロが目的ではなく、実態を表に出し、保育環境を良くすることが目的と考えているということでよいか。質問する。
七 待機児童解消には、国の通知の問題のみならず、いかに地域の保育ニーズを踏まえ、保育所を計画的に増設するか考えることも重要である。豊田市のケースでは近年マンションを中心に子育て世帯の流入人口が多い地区に集計上の「特定の保育所等を希望する者」が偏る傾向があり、自治体が都市計画の段階より、将来の保育ニーズを踏まえた街づくりをする必要がある。しかしながら、今後、人口減少等により保育ニーズが減少することも想定されることから、積極的な設備投資を見送る自治体の現場の事情も推察できる。役割を終えた保育施設を将来、例えば介護施設に転用して有効活用することも考えられるが、施設類型によって施設基準が異なるため、柔軟な許認可に至らないケースも想定される。自治体が躊躇なく今ニーズのある保育施設を拡充するための国の支援として、将来保育施設の定員に空きが出た時の施設の有効活用等の支援策として何が考えられるか、例示願いたい。その際、財政支援及び規制緩和の観点から自治体は国に何を期待できるのか、方向性も併せてお示し願いたい。
八 政府の進める「新子育て安心プラン」はできるだけ早く待機児童の解消を目指すとしているが、具体的に国はどのような施策を行う予定なのか。とりわけ国の通知を基にした待機児童数調査では捉えきれない潜在的待機児童を少しでも減らすための施策としてどのようなものを想定しているのか。子育て世帯が流入する地域には特に計画的な認可保育所の増設が求められている。国は各地域の実態を把握し、都市計画の段階から自治体と協力して財政支援を含め保育所の増設を後押ししてはどうか。それぞれ政府の見解を問う。

 右質問する。

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