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令和三年六月十日提出
質問第一八六号

犯罪加害者家族に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




犯罪加害者家族に関する質問主意書


 犯罪加害者家族に関し、以下質問する。

一 令和三年三月十七日に開催された衆議院法務委員会において、私、中谷一馬から「自ら選択できない属性によって差別、排除にさらされる加害者家族の子供たちを適切に保護することができなければ、子供たちは健全に成長することができず、世代間連鎖のような負のスパイラルを結果として社会に生み出すことになると思いますので、これらの課題感を基に更に議論を行っていきたい」との発言の後に、上川陽子法務大臣より、「誰一人取り残さないというこうした大きな流れの中で、いろいろな方々が誹謗中傷の中でさらされているということについては、これは、特に、加害者家族の皆さん、特に子供たちということについては、先のことを考えますと、非常に重要であるというふうに考えております。少なくとも、誰一人取り残さないという中にあって、先ほど先生がおっしゃったように、光を照らしていくということについては極めて重要であるというふうに考えます。」との答弁があった。
 この一連のやり取りを踏まえて伺うが、日本社会において子どもたちを含めた犯罪加害者家族に関する問題が生じていることについて、政府は、課題解決に向けた議論を今後も積み重ねていくという理解でよいか。
二 令和三年三月十七日に開催された衆議院法務委員会において、犯罪加害者家族に関して政府として実態の把握を行っているかという趣旨の質問をしたところ、上川陽子法務大臣から「法務省として実態調査をしたという事実はございませんでした。」という答弁があったが、政府全体としても犯罪加害者家族に関する実態調査を行っていないという認識でよいか、確認したい。
三 NPO法人ワールド・オープン・ハートや山形県弁護士会が行った調査によれば、犯罪加害者家族が置かれている実態として、相談者の約九割が「自殺を考えたことがある」と回答しており、インターネットを含む周囲の中傷で、転居や進学断念を余儀なくされたケースも多く、殺人事件の場合は大半が転居に追い込まれている。
 その損害としては大きく三つある。第一に、世間の目が気になって外出が困難になることや、犯罪加害者と同じ血が流れていることへの自責の念などの心理的損害、第二に、一家の支柱を失うことによる生活の困窮、被害弁償や弁護士費用の負担などの経済的損害、第三に、就職、進学、結婚に際しての差別、学校での子どもに対するいじめ、職場や近隣での嫌がらせ等の社会的損害、であり、さらには、憎悪の対象としての攻撃や、社会的無関心による差別を受けている実態が明らかになっている。
 政府は、こうした損害があるということを認識した上で、実態を把握するために調査研究を行う必要があると考えているのか、それとも考えていないのか、その考えに至った根拠を明らかにして見解を示されたい。
四 犯罪被害者をなくすために最も必要なことは、シンプルに犯罪をなくすことだと考えるが、政府の認識と相違はないか。もし相違があれば、政府として犯罪の被害に遭う方をなくすために最も必要なことは何であると考えているのか、所見を伺いたい。
五 再犯防止の観点において、社会学者のトラヴィス・ハーシが、社会的きずな理論の中で、「人は社会との絆がある時には犯罪することを留まるが、愛着・コミットメント・規範意識・関与の社会的な絆が弱まった時に犯罪を起こす。」ということを検証している。
 犯罪加害者家族の支援をすることは、犯罪加害者が刑務所から出所した際に、きずなの受け皿を作ることになり、再犯の防止にもつながることから、結果として社会の利益になると考えられており、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアなどの諸外国では多種多様なアプローチで犯罪加害者家族の支援が行われている。これらの国々で犯罪加害者家族の支援が社会的に認知されている背景には、支援による再犯防止が期待されている点が挙げられ、長期受刑によって、受刑者と家族の関係が断たれることにより、出所する受刑者の帰住先が失われ、再犯が繰り返されることを予防しようという目的がはっきりと共有されている事実があると考える。
 政府は諸外国における犯罪加害者家族の支援政策に関する調査や研究を行っているのか。行っている場合、どのようなことを調査・研究しているのか、詳細についても伺いたい。
六 社会的に厳しい環境下に置かれている犯罪加害者家族を支援する意味合いとしては、第一に、犯罪加害者家族の「個人」の尊厳を守り、マイノリティを排除しないこと(個人の尊重)、第二に、犯罪加害者家族の九割が自殺を考えたという調査結果を踏まえて、犯罪加害者家族の自責の念を払拭するための自殺対策を講じられること(自殺防止)、第三に、法律や心理面などにおける専門職の早期介入によるケアにより、犯罪加害者本人と、その家族の信頼関係の維持を図り、犯罪加害者の再犯の抑止と更生を目指すこと(再犯防止)、などが挙げられると考える。
 そこで伺うが、政府は、犯罪加害者家族の支援を行うことは、再犯防止及び更生保護に資すると考えているのか、それとも考えていないのか、その考えに至った根拠を明らかにして見解を示されたい。
七 長期的な問題を抱える犯罪加害者家族に対する支援としては、第一に、子どもの真の成長発達権を保障するための支援、第二に、法律専門職等の早期介入によって、刑事手続など非日常的な出来事に対するストレスを最小限に抑えるための法的支援、第三に、就労や資金援助など個人の尊厳を保持する生活を実現するための経済的支援、第四に、自殺を防ぎ、心の傷を最小限に抑えて自尊感情を高め、人生を諦めないようにするための心理面での支援、第五に、彼らを取り巻く環境の調整、偏見をなくすための啓発活動などの社会的支援、などが挙げられると考えるが、政府は、犯罪加害者家族、特に家族が犯罪を起こした子どもたちに対する支援を行うことを考えているか、それとも考えていないのか、その考えに至った根拠を明らかにして見解を示されたい。

 右質問する。

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