衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和三年六月十一日提出
質問第二一八号

医師、看護師、保育士の公的職業紹介事業の推進に関する質問主意書

提出者  早稲田夕季




医師、看護師、保育士の公的職業紹介事業の推進に関する質問主意書


 有料職業紹介事業、いわゆる人材紹介事業は、求職者に比べ事業者が情報の優位性を持ち、中間搾取のおそれがあるため、労働者保護の観点から許可制となっており、職業安定法第三十二条の十一の規定により、港湾運送業務、建設業務は紹介が禁じられている。同条では「その他有料の職業紹介事業においてその職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるものとして厚生労働省令で定める職業」も禁止の対象となっているところ、現時点ではいかなる職業も省令で定められていない。
 一方で、多くの医療機関においては、いわゆる医局制度の変容に伴い、医療従事者の確保を人材紹介事業者に頼っており、その紹介手数料が経営を圧迫している。昨年十月に公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会、独立行政法人福祉医療機構が共同して行った調査によれば、医師一名の紹介を受けるための手数料が平均三百五十一万七千円(最高六百万円、最低百万円)、同じく看護師で平均七十六万円(最高百二十四万円、最低三十万円)となっている。
 また看護師、保育士については、いわゆるエッセンシャルワーカーとしての職責に見合った報酬が支払われていないとして、その処遇改善が国政の長年の懸案事項となっている。
 診療報酬が主な収入源となっている医療機関に勤務する医師や看護師、また賃金水準について公定価格が定められている保育士は、適正な報酬が支払われ、かつ医療機関や保育事業者の経営を紹介手数料が圧迫しないよう、無料の職業紹介を原則とするべきであり、そのためにハローワークやナースセンター、医療のお仕事Key−Netなどの公的な職業紹介事業を大幅に拡充するべきであって、例外的に有料の人材紹介が認められる場合であってもその手数料には上限を設けるべきと考える。

一 医師、看護師、保育士について、職業安定法第三十二条の十一の規定に基づき、当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがある職業として厚生労働省令で定めていない理由をそれぞれ明らかにされたい。
二 公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会、独立行政法人福祉医療機構が、先述の調査結果を踏まえて提言しているように、医療従事者については紹介手数料の一定の基準設定、つまり上限を定めるべきではないか。このような提言はかねてより求人側から繰り返されており、厚生労働省は今年度に求人側の納得度調査を行うと承知しているが、二〇一七年の法改正による手数料引き下げの効果はどのくらいあったのか。現時点で政府として承知しているところをあきらかにされたい。
三 厚生労働省は二〇二〇年度、日本人材紹介事業協会に委託して、医療・介護・保育分野の適正な有料職業紹介事業者の基準を定め、現在その周知に努めているとのことだが、現時点では求職側は全くその存在を知らされておらず、なんのメリットもないのではないか。手数料については、金額の公表が求められているだけで上限は設定しないこととしているが、この程度の取組だけで、実際どの程度手数料の引き下げの効果が見込めると考えているのか。実効性ある制度とするためには、単に基準を公表するだけでなく、求職側にもメリットがあるよう、基準に適合した優良事業者の認定などを進めるべきと考えるが、政府の見解をあきらかにされたい。
四 ハローワークにおいては、正規職員の削減と非正規相談員の増員の傾向に歯止めをかけて、人員の拡充を行い、医療機関や保育施設など求人側への営業力をこれまで以上に増強するとともに、平日日中にハローワークに行かなくても、求職者側の登録や応募などの手続きが二十四時間いつでもスマホなどでできるよう、ハローワークインターネットサービスの改修を早急に進めるべきではないか。
五 近年ハローワークでは看護師、保育士の求人側への営業に力を入れているとのことだが、医師については特に力を入れておらず紹介実績も少ない。その理由を厚生労働省に問うと、高賃金に比例して紹介手数料も高額となるために、補完関係にある民間の人材紹介事業に任せているとの回答であった。国民が負担する保険料や窓口負担が、人材紹介事業者への高額な手数料となり、医療機関の経営を圧迫していることを踏まえれば、医師についても求人側への営業により力を入れてもよいのではないか。
六 コロナワクチン接種関連業務への潜在看護師の活用にあたり、各都道府県に設置されているナースセンターがにわかに注目されているが、いわゆる潜在看護師七十万人のうちわずか五万人しかナースセンターに登録していない。ナースセンター及び医療のお仕事Key−Netの周知が、求人側にも求職側にも十分に進んでいない原因をどのように分析し、今後どのような改善に取り組むつもりか。それぞれいつまでにどのくらいの求人数、求職者数を目指すのか、数値目標をEBPM(エビデンスに基づく政策立案)推進の観点から定めるべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
七 人材紹介事業は、人身売買や中間搾取であるとして、長く禁止されてきた歴史的経緯があり、昨今の行き過ぎた規制緩和による弊害を踏まえれば、公的な無料の職業紹介事業を拡充しても、民業圧迫との批判は全く当たらない。ハローワークやナースセンター、医療のお仕事Key−Netが、求人側にとっても求職側にとっても民間の人材紹介サービス利用とそん色のないよう、これまで述べたような改善のほかにも、民間の優れたサービス、機能を研究し取り入れて、使い勝手の良さを極めるべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.