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令和四年六月十日提出
質問第一三八号

日本有事の際、本当に米軍は日本を守るのかに関する質問主意書

提出者  井坂信彦




日本有事の際、本当に米軍は日本を守るのかに関する質問主意書


 岸田総理は週刊新潮二○二二年五月二十六日の就任後初のロングインタビューにおいて、「今日のウクライナ情勢は明日の東アジアの姿かもしれない。」「実際、アジアにおいても力による一方的な現状変更が起こり、将来的に日本の安全保障に関わる深刻な事態にならないとも限らない。これがウクライナ情勢において国際社会が得た一つの教訓だと思います。」「科学技術の進歩や装備品の発達を考えますと、あのアメリカですら一国では自国を守れない。それが厳しい安全保障の世界だということでした。だからこそ、限定的とはいえ集団的自衛権について真剣に考えなければいけないという議論が行われた。」と述べて日本の防衛力を強化するべきとの発言をしている。
 産経新聞によれば、二○二二年二月十八日までに尖閣周辺に中国の公船が五十二日間連続で航行してきたほか、二月二十六日以降三月三十一日まで三十四日間連続、四月五日以降四月十五日まで十一日間連続、四月十七日以降六月八日まで五十四日間連続で航行してきている。さらに、五月十四日には尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船四隻が相次いで侵入している。令和二年に尖閣周辺を航行する中国公船が確認されたのは過去最多の三百三十三日間、令和三年に中国は海警法を施行して、公船に武器使用の権限を付与している。
 一方、二○一四年四月に来日したバラク・オバマ元米大統領は、尖閣諸島は「安保条約第五条の適用範囲にある」と明言した。日米安全保障条約第五条の主要部分は以下のとおりである。
 「各締約国(日米)は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」
 重要なのは、武力攻撃に対して、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処する」とする部分である。
 当時、日本ではこの米国の対応を歓迎しつつ、「日本が憲法上、米国と他国からの武力攻撃に対して、共同対処することを認めていなければならない。すなわち、憲法上、集団的自衛権を保持し行使しなければ、成り立たない。」(二○一四年四月二十六日、産経新聞)として、日本は、集団的自衛権の解釈を変えてきたことは周知のとおりである。
 しかし、日米安全保障条約第五条の「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処する」とする部分を米国側に適用すれば、米国の憲法で宣戦布告の権限を与えられている連邦議会が、日本を守るために米国民の財産と生命とを犠牲にして中国と戦争することを認めて初めて米国は軍事的に極東有事に対応する、ということになる。つまり、中国が尖閣諸島などに侵攻しても自動的に米軍が出動するわけではないのではないか、という重大な疑念が日本国民に生じる。
 バイデン米大統領も選挙当選を確実にした直後の二○二○年十一月十二日に、「日米安保条約第五条は尖閣諸島に適用される」と当時の菅首相に電話会談で伝えている。今一度、日本の安全保障の根幹である日米安全保障条約第五条について、日本政府がどのような想定をしているのかを確認することは重要であると考え以下の質問をする。

一 日米安全保障条約第五条では、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」との規定があるが、それは、「日本の領土が侵攻された場合、自動的に米軍が我が国の防衛のために対応するということではない」という認識であるか、政府の見解は如何に。「自動的に」とは、米国議会などの承認手続きを経ず、米国政府と日本政府が連携して迅速に我が国の防衛のために対応することをいう。
二 同様に日米安全保障条約第五条の「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という規定について、「米国の憲法で宣戦布告の権限を与えられている連邦議会において認められて初めて、米軍が我が国の防衛のために対応する」という認識を政府は持っているのか。
三 日米安全保障条約第五条の「共通の危険に対処するように行動する」について、「米軍が尖閣防衛のために戦闘部隊を派遣して中国軍を攻撃してくれる」ということを国民は期待している。しかし実際は、「米国議会が認める範囲で、米国は自衛隊に武器弾薬の提供や補給をする」という対処にとどまる可能性も高い。仮に米国が尖閣防衛に戦闘部隊を派遣せず、自衛隊に武器弾薬の提供や補給のみを行なった場合、日米安全保障条約第五条は遵守されたことになるのか。
四 防衛省は「日米安全保障体制の意義」と題するホームページで、「米国の日本防衛義務により、仮にどこかの国がわが国に対して武力攻撃を企図したとしても、自衛隊のみならず、米国の有する強大な軍事力とも直接対決する事態を覚悟しなければならなくなります。」と説明している。米国議会の判断で米国の対処の有無や内容が左右されるならば、米国には具体的にどのような日本防衛義務が課されていると政府は認識しているか。
 非常に重要なことであり、かつ、多くの日本国民がロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにしている現状において、実際に日米同盟に対して危機意識を持っているという現状を是非、ご共有いただき、これまでの質問主意書の答弁に多く見られた、「言葉の定義が定まらない」や「定かではない」等のはぐらかすような答弁をせず、率直に国民に向けて分かりやすく答弁されることを望む。

 右質問する。

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