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令和五年六月十六日提出
質問第一三二号

ALPS処理水の海洋放出の科学的評価等に関する質問主意書

提出者  阿部知子




ALPS処理水の海洋放出の科学的評価等に関する質問主意書


 東京電力(以後、東電)による福島第一原発ALPS処理水の海洋放出については、政府が二〇二一年四月に方針を決定し、実施の準備が進められている。他方、太平洋諸島フォーラムの専門家パネル(以後、PIF専門家パネル)や近隣諸国(韓国・中国など)からは日本政府から提供されるデータの質と量が不十分で、生物濃縮に関する考察が著しく欠けているなどの懸念が表明されてきた。こうした状況下で、政府の見解を以下、質問する。

一 今年二月及び四月、合計三度にわたり、外務省、経済産業省は、PIFと会談を実施。また、PIF専門家パネルは原子力規制委員会と東電とも会談を行ったと聞く。PIF専門家パネルからは、生物濃縮に関する影響評価の欠如などが指摘されているが、政府はどのように対応するのか。対応しないとすれば、それはなぜか。
二 ALPS処理水には「放射性廃棄物」が含まれており、PIF専門家パネル有識者からは「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(以後、ロンドン条約)でいう「投棄」であるという批判がなされている。ロンドン条約第三条で「投棄」とは「海洋において廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から故意に処分すること」と定義されている。東電による地下トンネルからの海洋放出は、「その他の人工海洋構築物から故意に処分すること」ではないのか。
三 ロンドン条約の下で締結された「千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書」(以後、ロンドン議定書)でも、「海洋環境を保護し、及び保全し、並びに人の活動を管理するため、投棄による海洋汚染を防止し、低減し、及び実行可能な場合には除去する更なる国際的行動が遅延なくとられ得るもの」となることを目的に、第一条4・1で「投棄」についてはロンドン条約と同様に定義されている。さらに第一条4・2「投棄」の除外規定でも、「人工海洋構築物及びこれらのものの設備の通常の運用に付随し、又はこれに伴って生ずる廃棄物その他の物を海洋へ処分すること」に当てはまるとは到底考えられない。なぜなら「通常の運用」とは違い、事故に伴って特別に構築された設備だからである。そもそも放射性物質を拡散させた原子力災害事故の処理のために、特別に設備を設けて、更に放射性物質を海洋に拡散することは、ロンドン議定書の目的に反するのではないか。政府の見解を明らかにされたい。
四 質問一に関連して、政府とPIFとの会合内容については、経済産業省ホームページ等に簡略に報告されているだけである。
 議事録・概要等詳細を公表すべきではないか。
五 IAEAの「環境等への被ばく防護に関するセーフティガイドNo.GSG−8」(以後、GSG−8)によれば、放射性物質拡散値等が最低限度であって、かつ弊害を上回る利益が個人や社会にあった場合のみ、海洋放出が正当化されるものと理解する。政府は、ALPS処理水の海洋放出による利益にはどのようなものがあると認識しているか。
六 GSG−8については、原子力規制委員会のホームページには掲載されていない。他の「IAEA安全基準シリーズ」は翻訳・掲載されているが、GSG−8が掲載されていないのはなぜか。また、翻訳されていないとすれば、その理由はなぜか。
七 IAEAタスクフォースは、ALPS処理水の海洋放出にあたってGSG−8で定めた「正当化」の考え方は検討しないと聞くが、PIF専門家パネルは、GSG−8全体を準拠すべきだと指摘している。原子力規制委員会は、国際的な慣行に依拠するのではなく、GSG−8を準拠すべきではないか。
八 ALPS処理水の海洋放出の代替案として、セメント化による活用やモルタル固化による陸上保管案がPIF専門家パネルや国内識者から提案されてきた。モルタル固化については、経済産業省がコスト面等から選択しない検討を行ったが、セメント化による活用案は検討されたことはあるのか。検討されたのであれば、いつどのように行われたのか。

 右質問する。

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