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令和六年一月二十六日提出
質問第一〇号

食料・農業・農村基本法の見直しに係る政府の基本的認識に関する質問主意書

提出者  原口一博




食料・農業・農村基本法の見直しに係る政府の基本的認識に関する質問主意書


 令和五年十一月九日に提出した第二百十二回国会の質問主意書第二一号において、農地及び農業者関係並びに基本計画及び食料自給率目標関係について質問を行った。これに対する政府の答弁等を踏まえ、以下、質問する。

一 農地及び農業者関係
 1 我が国の農地面積がピーク時の昭和三十六年から三割減少していることに関連して、政府は、荒廃農地が発生する主な要因として、「高齢化、病気」や「労働力不足」により適切な農業生産活動を行うことが困難となっていることが挙げられると説明している。また、非農業用途等への転用が発生する原因として、例えば、民間企業が住宅や工場を建設する場合に土地の価格等の観点から農地が選好されやすいことが考えられると説明している。このような状況等を踏まえ、政府としては農地の維持・確保のためにどのような対策を講じようとしているのか明らかにされたい。
 2 現行の食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という。)の参考資料「農地の見通しと確保」において、令和十二年時点で確保される農地を四百十四万ヘクタールとしていることの妥当性について、政府は、農地面積が減少すると推計している一方、耕地利用率が平成三十年の九十二パーセントから令和十二年に百四パーセントへと、約十二ポイント上昇すると見込んでいることを前提に、基本計画において令和十二年度の食料自給率の目標として定めている四十五パーセントを達成することは可能であり、妥当な農地面積であると説明している。しかし、耕地利用率について毎年平均で約一ポイントの上昇が見込まれているにもかかわらず、令和四年の耕地利用率は、平成三十年より上昇するどころか、逆に〇・三ポイント低下している。このように耕地利用率が見込み通りに上昇していない実態を踏まえると、基本計画における食料自給率目標を達成するためには、農地面積の方を四百十四万ヘクタールよりも多く確保する必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
 3 令和三年度に実施された相続未登記農地等実態調査(以下「相続未登記実態調査」という。)の結果において所有者不明農地等(相続未登記農地及び相続未登記のおそれのある農地)は百二万九千百一ヘクタールで、農地面積の約二割であることについて、政府は、そのほとんどは相続人等により利用又は管理が続けられており、遊休農地はそのうちの五万七千六百二十九ヘクタールに留まっていると説明している。しかし、相続未登記実態調査は、近年、農地について相続が発生しても登記名義人が変更されず、権利関係が不明確となるケースが多くなっており、農地の集積・集約化を進める上で阻害要因となっているとの指摘を受けて実施されたものである。その趣旨を踏まえれば、遊休農地が六万ヘクタール弱に留まるとしても、相続未登記農地等の解消は重要な課題である。当該調査で相続未登記農地等とされた農地のうち、これまでに適正に相続登記がなされた農地面積の実績について明らかにされたい。また、政府は、平成三十年の農業経営基盤強化促進法等の一部改正以降、所有者不明農地の農地中間管理機構への貸付実績が令和四年度末までに百六十八ヘクタールとなっていることから、相続未登記農地等の有効利用につながっていると説明している。しかし、この面積は相続未登記実態調査での所有者不明農地等の面積と比べて極めて微小である。全農地面積の約二割が所有者不明農地等という深刻な状況を改善するためには、抜本的な対策の見直しが必要であると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
 4 これまでの農政が規模拡大推進一辺倒であるとの指摘に関連し、政府は、経営規模の大小や家族経営・法人経営の別にかかわらず、意欲的に農業経営に取り組もうとする農業の担い手を幅広く育成・確保するとともに、農業の担い手に対する農地の利用集積を推進してきた結果、多くの品目で、農業の担い手が農業生産の相当部分を担う農業構造を実現してきていると説明している。しかし、政府は、令和五年度までに全農地の八割を担い手に集積するという目標を掲げているところ、令和四年度の農地集積率の実績は六割にも届いておらず、目標の達成は絶望的である。このような状況を踏まえて、これまでの農地及び農業者に係る施策の問題点を真摯に分析すべきだと考えるが、改めて政府の認識を明らかにされたい。
 5 多様な農業人材に係る基本法の規定の在り方について、政府は、検討を進めている現時点で答える段階にはないと説明している。その後、令和五年十二月二十七日に開催された食料安定供給・農林水産業基盤強化本部において、「食料・農業・農村基本法の改正の方向性について」が決定され、その中で「生産基盤の確保に向けた担い手の育成・確保とそれ以外の多様な農業人材の役割の明確化」が掲げられている。家族経営、中小規模の経営体、農業を副業的に営む経営体の位置付けと農地の集積・集約化の関係の整理について、答申以降の検討内容を明らかにした上で、基本法において関係する条文をどのように規定することを検討しているのか、改めて明らかにされたい。
二 基本計画及び食料自給率目標関係
 1 食生活の多様化に対する評価について、政府は、「どのような食生活を営むかは、消費者の自由な選択に委ねられるべきものであり、政府としてお答えする立場にない」と説明している。食料自給率の向上及び国内農業の存続のためには、米などの安全な国産農産物の消費が必要であり、これを政府が推奨する必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。
 2 食料自給率の向上及び国産農産物の消費の拡大のためには消費者の役割が重要であるが、「食料・農業・農村基本法の改正の方向性について」においては、「食料安全保障の確保に向け、食料の価格形成に当たっては、農業者、食品事業者、消費者といった関係者の相互理解と連携の下に、農業生産等に係る合理的な費用や環境負荷低減のコストなど、「食料の持続的な供給に要する合理的な費用」が考慮されるようにしなければならないことを明確化する」とあり、食品の価格形成の観点から消費者について言及している。食料の持続的な供給が不可能となった場合に最も困るのは消費者であり、食料の持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した食料の価格形成は、農業者のみならず消費者の利益にかなうものである。他方で、令和三年以降、食品の相次ぐ値上げにより、家計の圧迫に苦しむ経済的弱者も存在する。様々な経済状況の国民が存在する中で、食料消費に係る施策の政府の基本的認識を明らかにするとともに、基本法において消費者に関係する条文をどのように規定することを検討しているのか、明らかにされたい。
 3 食料自給率目標が達成されないことの要因として、政府は、「例えば、自給率の高い米穀の国内における需要が年々減少する中で、海外からの輸入に依存している飼料の利用により生産された畜産物の消費が増大していることが要因」と説明している。食料自給率の向上のためには、米の需要拡大、国内需要のある農産物の生産の増大、飼料自給率の向上に向けた施策の展開が必要である。平成十二年策定の基本計画においては、米について「需要動向に即した計画的な生産を図ることを基本として、米と麦、大豆、飼料作物等を組み合わせた収益性の高い安定した水田農業経営の展開、生産規模拡大等による低コスト化、多様なニーズに対応した生産・流通体制の確立等の取組を一層進めることが課題」、飼料作物については「転作田等における飼料作物の作付けの拡大、低・未利用地の活用、生産技術の向上や優良品種の導入等による生産性の向上(生産コストの三割程度の低減)及び品質の向上、飼料生産受託組織の活用による生産の組織化・外部化(飼料生産受託組織による受託面積の三倍程度の拡大)、我が国の土地条件及び自然条件に適応した日本型放牧の普及等の取組を通じ、自給飼料生産の大幅な増大を図ることが課題」としており、こうした課題は、現状の課題と共通するものである。米及び飼料作物に係る課題が二十年以上解決されてこなかった要因をどう分析しているのか明らかにされたい。
 4 二十年以上前から示されていた課題が解決されず、食料自給率が向上しなかったのは、累次の基本計画における課題の設定及び施策が間違っていたといえる。食料自給率の向上のためには、基本計画における適切な目標と課題の設定のみならず、食料・農業・農村政策において農業者、食品事業者、消費者等の相互理解及び連携・協力に国が積極的な役割を果たすための枠組みが必要だと考えるが、基本法において関係する条文をどのように規定することを検討しているのか、明らかにされたい。

 右質問する。

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