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平成十三年三月十三日受領
答弁第一七号

  内閣衆質一五一第一七号
  平成十三年三月十三日
内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員鉢呂吉雄君提出農業者年金制度改正における受給者の負担等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員鉢呂吉雄君提出農業者年金制度改正における受給者の負担等に関する質問に対する答弁書



一について

 公的な年金制度における既裁定の年金受給権は、金銭給付を受ける権利であることから、憲法第二十九条に規定する財産権である。

二及び三について

 財産権といえども、公共の福祉を実現しあるいは維持するために必要がある場合に法律により制約を加えることが憲法上許されるときがあることは、これまで累次の最高裁判所の判例において示されてきたところである。
 これらのうち、昭和五十三年七月十二日最高裁判所大法廷判決(以下「昭和五十三年最高裁判決」という。)では、法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということができず、その場合、当該変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、いったん定められた法律に基づく財産権の性質、その内容を変更する程度、及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべき旨判示している。
 既裁定年金額の引下げについても、この判決で示された考え方に沿って、憲法第二十九条に照らし許容されるか否かを判断すべきものであると考えている。
 また、農業者年金制度を含め公的な年金制度における給付の財源は現役世代の保険料、国庫助成等により賄われていることから、既裁定年金額の引下げが公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかを判断するに当たって、年金財政の実情は勘案すべき重要な事項の一つであると考えている。
 なお、公的な年金制度における既裁定者と保険者との間の権利及び義務は、両者間の契約により設定されるものではなく、それぞれの根拠法に基づき直接設定されるものである。

四について

 既裁定年金額の引下げは、受給者の老後の生活の安定、現役世代の負担能力、更には年金財政に占める国庫助成の割合などとの関連において、合理的と判断される範囲にとどまるべきものであると考えている。

五について

 今回の農業者年金制度の改正における既裁定年金額の引下げ措置について、昭和五十三年最高裁判決で示された判断要素に沿って検討すると、
 1 年金額引下げの対象となる年金は、経営移譲年金のみとしているが、これは老後の生活の安定への寄与のみならず農業経営の近代化や農地保有の合理化といった農業上の政策目的の達成という特別の性格を有し、その財源を専ら国庫助成で賄っているものであること
 2 年金額引下げの水準は、月額二千円から四千円で、高齢夫婦世帯の消費支出の一パーセント程度にとどまり、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではないこと
 3 年金額引下げ措置を講じない場合には、財政負担の更なる増加が不可避となるが、この措置を講じることにより、国民一般の負担の増加を避けることができること
から、農業者年金制度が一定規模以上の農地等を保有する農業者を当然加入とするものであるとしても、当該引下げ措置は、財産権に対する合理的な制約として、憲法第二十九条に照らしても許容されるものと考えている。
 また、現行制度をこのまま継続した場合には、遅くとも平成十四年度には年金財政が払底し、農業者老齢年金の給付等に要する費用を賄うため保険料の大幅な引上げが求められる状況に立ち至ることとなる。しかしながら、世代間の公平を確保する観点から、既裁定年金額の引下げにより経営移譲年金の既裁定者にも応分の負担を求めた上で、現行制度に係る既裁定者及び未裁定者に支給する年金について、農業者老齢年金を含めその財源を国庫で負担することとし、併せて財政方式を変更することとする今回の制度改正によって、被保険者の負担能力を超える保険料の引上げという事態が回避されることも、当該年金額引下げが公共の福祉に適合するかどうかを判断するに当たって勘案すべき重要な事項の一つであると考えている。
 なお、二及び三についてで述べたとおり、既裁定者の年金受給権は、契約により設定されるものではなく、農業者年金基金法(昭和四十五年法律第七十八号)に基づき直接設定されるものである。

六について

 御指摘の「農業者年金制度改革大綱(案)」は、今回の農業者年金制度の改正を検討する過程において農林水産省が作成した一つの案であり、政府として意思決定されたものではなく、答弁を差し控えたい。

七について

 国庫は、今回の制度改正に伴い、現行制度に係る既裁定者及び未裁定者に支給する年金給付等に要する費用として、今後、約三兆六千億円を負担する見通しである。また、新制度において創設される特例付加年金に係る国庫補助については、平成十四年一月から三月までの分として三十六億円を平成十三年度予算案に計上したところである。

八について

 現行制度に係る未裁定者が将来受給する年金については、既裁定者の場合と異なり、いまだ年金受給権としては成立していないものであるが、それが老後の生活の安定確保に重要なものであることを踏まえつつ社会経済動向等を考慮に入れて、その水準について判断すべきものと考えている。なお、今回の農業者年金基金法の改正案においては、現行制度に係る未裁定者については、平均余命まで年金を受給すれば少なくとも納付済保険料総額に相当する年金額が支給されるようにする措置を講ずることとしているところである。

九について

 国民年金制度、厚生年金制度等の公的年金制度における既裁定年金額の取扱いについては、法理的には昭和五十三年最高裁判決の趣旨等を勘案して判断されるものと考えている。
 なお、今回の農業者年金基金法の改正案において年金額の引下げの対象としている経営移譲年金は、農業上の政策目的を有し、給付に必要な財源を専ら国庫助成で賄っており、その成熟度も著しく高い状況にあるのに対して、国民年金、厚生年金等の公的年金は、社会保険方式の下で、現役世代が納付する保険料財源を基本にして給付に必要な費用を賄う世代間扶養の仕組みで運営しており、成熟度も農業者年金のような状況にはないなど、現在の両者の置かれている状況は大きく異なっている。このような状況の下で、国民年金制度、厚生年金制度等の公的年金制度については、平成十二年の制度改正で給付と負担の均衡を確保して制度の長期的な安定を図るための措置を講じたところであり、また、その際には従前の年金額が保障されるよう措置したところである。




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