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平成十五年二月十八日受領
答弁第三七号

  内閣衆質一五五第三七号
  平成十五年二月十八日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員佐藤謙一郎君提出遺伝子組み換え技術応用の植物等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員佐藤謙一郎君提出遺伝子組み換え技術応用の植物等に関する質問に対する答弁書



一について

 食品の安全性を確保するため、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)において、同法に基づき定められた「食品、添加物等の規格基準」(昭和三十四年厚生省告示第三百七十号)に適合しない食品を製造、販売等してはならない旨が定められている。遺伝子組換え食品についても、「食品、添加物等の規格基準」を改正して、平成十三年四月からその安全性についての審査を義務付けているところである。
 また、飼料の安全性を確保するため、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和二十八年法律第三十五号)において、同法に基づき定められた飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令(昭和五十一年農林省令第三十五号)に適合しない飼料を製造、販売等してはならない旨が定められている。遺伝子組換え飼料については、現在、農林水産省が定めた「組換え体利用飼料の安全性評価指針」(平成八年四月十九日付け八畜B第五百八十五号農林水産事務次官通知)に基づきその安全性を確認しているところであるが、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令を改正して、本年四月から、その安全性についての確認を義務付けることとしている。
 なお、遺伝子組換え作物等を生産し又は販売する場合の環境への安全性については、農林水産省が定めた「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」(平成元年四月二十日付け元農会第七百四十七号農林水産事務次官通知)に基づき、我が国の環境をも考慮に入れて確認しているところである。
 これらの指針等は、厚生労働省又は農林水産省において、安全性に関する国際的に認められた考え方を基礎に既往の研究の成果を踏まえ、専門的見地から策定されているものである。
 お尋ねの遺伝子組換え植物・動物への影響そのものについては、前述の安全性確認の手続の中で、組み換えられた遺伝子の安定性につき、遺伝子組換え植物・動物の生産若しくは販売又はこれらの飼料や食品としての利用を行おうとする者(以下「事業者」という。)に複数世代の栽培試験等のデータを提出させ、専門的知見を有する者により審査を行っているところである。
 また、人や動物が遺伝子組換え食品や遺伝子組換え飼料を長期に摂取した場合の影響評価については、同様に安全性確認の手続の中で必要に応じて複数世代まで含めた長期の影響に係るデータの提出を求めることとしているほか、消費者等の意向等にも配慮して、国や独立行政法人農業技術研究機構において当該影響についても調査研究を行っているところである。
 また、栽培段階における長期の影響については、独立行政法人農業技術研究機構等において遺伝子組換え作物の長期にわたる栽培試験を実施し、ほ場周辺の植物相等への影響に関する知見の収集に取り組んでいるところである。
 前述のとおり、遺伝子組換え食品の安全性については、平成十三年四月一日から審査を義務付けており、また、遺伝子組換え飼料の安全性についても、本年四月一日から確認を義務付けることとしている。これらの手続において、事業者は安全性に関する必要な項目のデータを厚生労働省又は農林水産省に提出することとなっている。さらに、遺伝子組換え生物の利用等による生物の多様性への影響を防止することを目的とした「生物多様性条約カルタヘナ議定書(仮称)」(以下「カルタヘナ議定書」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するための法律案を今通常国会に提出すべく、現在、準備を進めているところである。
 また、海外で遺伝子組換え技術の応用による問題性が実験結果等として公表された場合については、我が国においても同様の結論が得られるかどうかを確認するため、当該内容について既住の研究結果を踏まえた検討を行った上、必要に応じて国や独立行政法人において試験研究を実施し、その結果に基づき既に安全性を確認した申請についても再評価を行うこととしている。
 また、安全性確認の手続においては、事業者が厚生労働省又は農林水産省に提出した安全性に係るデータを専門的見地から策定された指針等に基づき専門的知見を有する者が試験等の的確さを含めて科学的に検証しており、当該データでは安全性が確認できないと判断された場合には、事業者に必要な追加データの提出を求めるなど安全性の確保に努めているところである。

二について

 種苗法(平成十年法律第八十三号)においては、優良な品質の種苗の流通を確保するため、農林水産大臣が指定した種苗の生産又は販売を業とする者が遵守すべき基準(以下「生産等基準」という。)を定めることとされており、生産等基準において、遺伝子組換え種子を含む異品種種子の混入を防止するため、野菜では種子の品種の純度(異種、異品種及び品種特性が明らかに変化した変異株の種子を除いた種子の全体の種子に対する粒数割合をいう。)が九十五パーセント以上となるよう定めるとともに、とうもろこしでは厚生労働大臣が行う安全性の審査を経た旨の公表がなされていないものの混入を防ぐ旨が定められている。
 これを受けて、独立行政法人種苗管理センターにおいて、農林水産大臣の指示を受け、生産等基準の遵守を確保するための種子の検査を実施している。また、輸入された飼料用とうもろこしの種子については、社団法人日本草地畜産種子協会において、生産等基準の遵守を確保するための検査を実施するとともに、輸入業者等の求めに応じて、遺伝子組換え種子の混入の有無の検査を行っているところである。
 遺伝子組換え作物の分別については、食品衛生法施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十三号)第五条第一項第一号及び「遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第七条第一項及び生鮮食品品質表示基準第七条第一項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準」(平成十二年農林水産省告示第五百十七号)第三条に基づき、製造業者等に対して、遺伝子組換え作物であるか否かを表示する場合には生産、流通の各段階において分別管理を行うことが求められているが、混入の有無について検査を行うことは義務付けられていない。
 また、遺伝子組換え作物の輸入については、平成十三年度の届出実績のうち「遺伝子組換え」として届け出られた作物は、とうもろこしが十六件(同作物の全届出の〇・八パーセント)、大豆が四件(同〇・一パーセント)及び菜種が三件(同〇・八パーセント)であった。なお、「遺伝子組換え不分別」として届けられた作物は、とうもろこしが百五十件(同作物の全届出の七・七パーセント)、大豆が二百十一件(同五・二パーセント)、菜種が二百十件(同五十九・〇パーセント)及び綿実が六十一件(同八十七・一パーセント)であったところである。
 さらに、輸入の時点で我が国での食品としての安全性が未確認のものの混入の有無に係る検査の実態については、平成十三年四月一日から輸入食品・検疫検査センターにおいて、検査を行っているところであるが、平成十四年十二月三十一日までに、二千八百三十九件の検査を行い、そのうちとうもろこし一件、ばれいしょ加工品一件及びパパイヤ二件から安全性が未確認のものの混入が確認され、いずれも廃棄等の処分を行ったところである。
 飼料については、遺伝子組換え飼料について分別管理を求めていないため、分別が行われていることを確認するための検査の義務付けは行っておらず、また、遺伝子組換え飼料がどの程度の割合で輸入されているかについても把握していない。
 また、我が国での飼料としての安全性が未確認のものの混入の有無に係る検査の実態については、平成十二年四月から、農林水産省肥飼料検査所(平成十三年四月一日以降は独立行政法人肥飼料検査所)において、飼料の主原料であるとうもろこしを対象として検査を行っているところであるが、平成十二年四月から同年九月までの三十件の検査においては、二十件について平均〇・五パーセントの混入が確認されたところであり、平成十四年四月から同年九月までの四十二件の検査においては、四件について平均〇・一パーセントの混入が確認されるにとどまっている。
 遺伝子組換え作物の国内栽培については、その安全性について、一についてで述べたとおり、専門的な審査を経て確認されているところであり、安全性が確認された遺伝子組換え作物については、事前届出、周囲への通達及び公表の義務付けは行っていない。
 しかしながら、現時点においては、遺伝子組換え作物に対する国民の理解も十分に得られていないと考えられることから、当該作物を栽培する者等に対して、当該作物の栽培に当たっては、栽培予定地の周辺の農家等の理解を得るとともに、栽培予定地の地方公共団体にも情報提供を行うよう要請してまいりたいと考えている。
 遺伝子組換え作物の花粉による交雑の問題については、前述のような要請による対応を行うことにより、遺伝子組換え作物の生産又は流通に伴う混乱を防ぐことが重要であると考えている。しかしながら、遺伝子組換え作物の栽培に係る契約内容を公示すべきとの御指摘については、その公示の対象が、安全性については既に専門的な審査を経て確認がなされている作物に係る私的な契約の内容であることから、公示は適当ではないと考えている。
 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)に基づき定められた「有機農産物の日本農林規格」(平成十二年農林水産省告示第五十九号)が認定の対象としているのは、生産の方法であり、その基準として、ほ場に播種又は植え付ける種苗は組換えDNA技術を用いて生産されたものでないことと規定されている。
 前述のような要請による対応を行うことにより、遺伝子組換え作物の混入が起こる可能性は低くなるものと考えるが、万が一、遺伝子組換え作物が混入した場合には、速やかにその原因を究明し、適切な対策を講じてまいりたい。

三について

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に基づく品質表示基準においては、遺伝子組換え農産物のうち食品衛生法に基づき我が国で流通が許されている大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種及び綿実については、すべて義務表示の対象としている。これらの農産物を主な原材料とした加工食品についても、組み換えられたDNAやこれによって生じたたんぱく質が存在するものについては、「遺伝子組換えである」旨の表示を義務付ける一方で、遺伝子組換えでないこれらの農産物を原材料とした加工食品であっても、遺伝子組換えでない農産物が生産、流通及び加工の各段階で混入されないよう管理し、そのことが書類により証明されていなければ、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることはできないこととされている。
 また、遺伝子組換え食品の安全性については、厚生労働省において、「食品、添加物等の規格基準」等により、個々の遺伝子組換え食品について、薬事・食品衛生審議会の専門的知見を有する者の意見を聴いて、当該食品に新たに付加されることとなるたんぱく質等の毒性及びアレルギー誘発性の有無等につき科学的検証を行い、安全性審査を行っている。
 こうした検証により、新たに付加されることとなるたんぱく質等については、その性質、機能等が明らかにされ、人間の消化管内で分解されるかどうかなど有害作用の有無が確認されるため、安全性が確認された遺伝子組換え食品については、人が長期的に摂取しても問題はないものである。また、これらの物質以外の成分についても、既存の食品の成分と同等であるかどうかを確認することとしており、既存の食品の成分と同等であることが確認された成分については、長年の食経験等により安全性が既に確認されていることから、長期的に摂取した場合においても、既存の食品と同等の安全性があると言えるものである。
 なお、一についてで述べたとおり、消費者等の意向等にも配慮して、国等において長期に遺伝子組換え食品を摂取した場合の影響について調査研究を行っているところである。

四について

 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一C)(平成六年条約第十五号)は、第二十七条で遺伝子組換え技術を含めすべての技術分野の発明に特許を与えることを原則とするとともに、生物については、加盟国の選択により、微生物以外の動植物等を特許対象から除外し得ると規定している。我が国の特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)においては、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与するという法の目的に沿い、発明が生物や遺伝子に関するものであるか否かにかかわらず、新規性及び進歩性を有している等の要件を満たす場合には、特許を与えることとしている。
 また、世界的な食料問題の解決に当たっては、乾燥地等の耕作不適地において安定的な生産が可能となるような画期的な作物の開発が重要となるところ、遺伝子組換え技術は、従来の交配による育種では作出困難であったこのような画期的な作物の開発を可能とする技術として強く期待されている。遺伝子組換え技術によって耕作不適地での安定的な生産が可能となるような作物が開発されれば、少数の国にとどまらず、世界の多数の国々がその生産に取り組むことが期待され、ひいては世界的規模での食料生産能力が向上し、食料問題の解決に資することとなると考える。
 また、現在、カルタヘナ議定書の締結に向けて、環境省等関係省における審議会等での議論の結果を踏まえ、カルタヘナ議定書において締約国に義務付けられている事項を履行し、人類の存続の基盤である環境が成り立つために健全に維持される必要がある生態系の基礎となる生物の多様性の確保を図るための法律案を、今通常国会に提出すべく準備しているところである。



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