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答弁本文情報

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平成十五年八月二十九日受領
答弁第一三八号

  内閣衆質一五六第一三八号
  平成十五年八月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員仙谷由人君提出がん治療の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員仙谷由人君提出がん治療の改善に関する質問に対する答弁書



一の1について

 薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条又は第二十三条に基づく医薬品の製造又は輸入の承認(以下「製造等承認」という。)については、平成十二年四月以降、その標準的事務処理期間を十二月としているところであり、抗がん剤を含む新医薬品の早期の製造等承認のためには、その前提となる医薬品の製造業者又は輸入販売業者(以下「製造業者等」という。)からの承認申請が早期に行われる必要がある。
 厚生労働省においては、関係学会等から製造等承認を受けていない医薬品(以下「未承認医薬品」という。)の製造等承認又は製造等承認を受けた医薬品の承認外の効能、効果等を目的とする使用(以下「承認外使用」という。)の要望があった場合には、製造業者等に対して当該要望の内容を伝えるとともに、製造等承認又は製造等承認事項の一部変更承認の申請を検討するよう依頼することとしている。
 また、ICH(日米欧三極医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに基づき、製造業者等が海外の臨床試験成績を利用することにより、必要最少限の国内の臨床試験成績を得るだけで製造等承認の申請をすることを認めたり、承認外使用に関して承認事項の一部変更承認等の申請があった場合に、当該承認外使用に係る効能、効果等が医学上又は薬学上公知であると認められるときは、製造業者等から新たな臨床試験に関する資料を求めないこととする等の措置を講ずるとともに、医療上特に必要性が高いと考えられる医薬品については審査を優先的に行う等、承認審査期間の短縮に努めているところである。

一の2及び3並びに二の1について

 国内又は国外の医学書等で治療薬として推奨されている医薬品があることは承知しているが、国や地域により国民の体格、医療習慣等が異なることから、医薬品の用法、用量等も異なる場合が多く、御指摘の「世界標準の治療薬」という考え方は確立されていないものと認識している。
 海外において承認され、使用されている医薬品であっても、製造等承認を行う際には、我が国で使用する際の有効性、安全性等を個別に確認する必要があり、個々の医薬品の特性を考慮せずに一律に製造等承認を行うことは適当ではない。
 また、がんの新たな治療法については、厚生労働科学研究費補助金によるがん克服戦略研究事業を中心に、研究を進めているところである。

一の4について

 医師又は医療機関が主導して実施する臨床研究であって製造等承認の申請のための資料収集を目的とするもの(以下「医師主導の治験」という。)については、薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成十四年法律第九十六号)による薬事法の一部改正により、本年七月三十日から実施できるようになったばかりであり、医師主導の治験が今後どの程度実施されるかに関する見込みを、現時点でお示しすることは困難である。また、医師主導の治験が実施されるための条件整備については、今後の医師主導の治験の実施状況等を踏まえつつ、幅広く検討してまいりたい。

二の2及び3について

 医療保険制度においては、保険医療機関は、療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成十四年厚生労働省告示第九十九号)第六に規定する医薬品であれば使用することは可能であるが、当該医薬品の費用の保険請求は、原則として製造等承認を受けた効能、効果等に従って使用する場合に認められる。
 一般に、ある医薬品が同告示第六に該当するためには製造等承認を受けることが必要であることから、未承認医薬品の使用又は承認外使用について保険請求が認められるためには、まず、製造業者等による製造等承認の申請が行われる必要があり、厚生労働省においては、その促進に努めているところである。

二の4から6までについて

 医療保険制度においては、特定療養費制度により、一定の場合に保険診療と保険外診療の併用を認めている。未承認医薬品の使用又は承認外使用については、製造等承認の申請のために薬事法第八十条の二に基づき実施する治験に係る診療を特定療養費制度の対象としているところであり、この場合は、保険診療分に係る一部負担金相当額以外の患者負担が生じない取扱いとしている。
 なお、がんの治療も含め、保険医療機関が特定療養費制度によらずに保険診療と保険外診療を併用し、保険外診療分の費用を患者に負担させることは、被保険者に対する医療の安全性及び有効性を確保するとともに、不当な患者負担の増大を防止するという観点から、認められないものである。

三の1について

 がんの治療の際に用いられる指針としては、日本乳癌研究会が作成した「乳房温存療法ガイドライン」、日本胃癌学会が作成した「胃がん治療ガイドライン」、厚生労働省が医薬品等適正使用推進試行的事業により日本臨床腫瘍研究会及び日本癌治療学会(以下「両団体」という。)に作成を依頼した「抗がん剤適正使用ガイドライン(案)」(以下「抗がん剤ガイドライン案」という。)、厚生労働科学研究費補助金により作成された肺がん及び乳がんに係る「がんに関するEBM診療ガイドライン」等が存在すると承知している。
 なお、これら以外にも、学会、医療機関等が独自に作成した指針が存在すると推測されるが、厚生労働省においてそのすべてを承知しているわけではない。

三の2から4までについて

 抗がん剤ガイドライン案は、他の医薬品に比較して重篤な副作用が高頻度に発現するおそれがある抗がん剤について、科学的根拠に基づいた医療を推進する観点から、その安全な使用を推進するために必要な注意事項等を整理し、取りまとめたものであり、現存するがん治療に関する各種指針を取りまとめたものではない。
 抗がん剤ガイドライン案は、厚生労働省が両団体に、抗がん剤の安全性に関する情報の収集及び評価、その結果に基づく指針の作成並びに会員に対する情報提供を内容とする事業を委託することにより作成されたものであり、がんの治療の分野では、医薬品の使用方法について専門家の間で合意を得にくい部分もあることから、平成十四年六月に案の形で示されたものである。
 抗がん剤ガイドライン案は、日本癌治療学会内に設けられた抗がん剤適正使用ガイドライン作成委員会によって既に作成され、公表されるとともに、両団体がその内容を会員に周知しており、安全ながんの化学療法を行うための資料として活用されていると承知している。
 なお、がんの化学療法は急速に進歩しており、常に専門家の意見が一致するとは限らないが、今後、抗がん剤の適正な使用方法等で合意が得られたものは、臓器別のがんの治療指針の中に取り入れるべきものと考えている。

四の1について

 現在のところ、我が国のがんに関連する学会において腫瘍内科に係る専門医の認定は行われていないが、腫瘍内科を専門とする学会である日本臨床腫瘍学会の会員数は約千人であると承知している。

四の2から4までについて

 第三次対がん十か年総合戦略(平成十五年七月二十五日文部科学大臣及び厚生労働大臣合意)においては、がんの専門医の育成を、一つの重要な柱として位置付けている。がんの専門医の育成に当たっては、手術療法、化学療法、放射線療法等の各分野を専門とする医師を幅広く育成していくことが必要であり、日本臨床腫瘍学会を始めとする各学会における取組が重要であると考えている。平成十六年度からの第三次対がん十か年総合戦略の実施に当たっては、関係学会による取組に対する協力方策を検討してまいりたい。
 なお、日本臨床腫瘍学会においては、平成十九年から毎年百人程度の専門医を育成し、将来少なくとも千人程度とすることを目標にしていると承知している。

五の1について

 昭和五十九年度から平成五年度までの間実施した対がん十カ年総合戦略及び平成六年度から平成十五年度までの間実施しているがん克服新十か年戦略により、がんが遺伝子の異常によって起こる病気であることが明らかとなり、遺伝子レベルにおけるがんの病態等の解明が進むとともに、各種のがんの早期発見法や標準的な治療法が確立される等、がんの診断及び治療に係る技術が急速に進歩した。
 この間、胃がん、子宮がん等による死亡率は減少し、胃がん等の五年生存率も向上したが、大腸がん、前立腺がん等の欧米型のがんのり患率は増加し続けており、今後は、これまで以上にがんの本態の解明を進め、その研究成果を広く予防、診断及び治療に応用するとともに、がんの予防を推進し、質の高いがんの医療を全国的に普及させることが必要であると考えている。

五の2について

 第三次対がん十か年総合戦略については、文部科学省研究振興局長及び厚生労働省大臣官房技術総括審議官の下に開催した「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」が本年三月三十一日に取りまとめた報告書を踏まえ、同年七月二十五日に文部科学大臣及び厚生労働大臣の合意により策定したところである。平成十六年度からの第三次対がん十か年総合戦略の実施に当たっては、必要に応じ、患者団体等関係者の意見も伺うこととしたい。

五の3について

 第三次対がん十か年総合戦略に係る予算については、毎年度の予算編成の中で、必要な予算額の確保に努めてまいりたい。また、第三次対がん十か年総合戦略については、文部科学省及び厚生労働省を中心に、必要に応じて内閣府の総合科学技術会議を活用する等、関係府省が連携しながら推進していくこととしており、御指摘のような省庁横断的ながん克服推進機関を設置することは考えていない。



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