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平成十六年二月六日受領
答弁第八号

  内閣衆質一五九第八号
  平成十六年二月六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員中川正春君提出イラクへの自衛隊派遣に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員中川正春君提出イラクへの自衛隊派遣に関する質問に対する答弁書



一について

 「テロリスト」及び「テロ攻撃」については、一般国際法上確立した定義があるわけではなく、お答えすることは困難である。
 なお、一般的には、「テロリズム」とは、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいい、「テロリスト」とは、「テロリズム」を行う者を指すものとされていると承知している。

二、三及び六について

 一般国際法上、「テロ攻撃」及び「武力紛争」について確立した定義は存在せず、「テロ攻撃」又は現在イラクで生じている事態が国際法上「武力紛争」の一類型に入るのかとのお尋ねについてお答えすることは困難である。
 お尋ねの「国際的な武力紛争」とは、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)及びイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク人道復興支援特措法」という。)にいう「国際的な武力紛争」を指すものと考えられ、これについては、「国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い」をいうと解してきたところであるが、お尋ねの「九・一一テロ」は、これを受けたアメリカ合衆国(以下「米国」という。)の軍隊の活動について国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議第千三百六十八号が国際連合憲章第五十一条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」について言及していることからも、「国際的な武力紛争」に当たり得ると考えている。他方、イラクについては、お尋ねの「イラクに残る親フセイン政権の残党」又はこれらの者の活動の実態は様々であり、これらが「国家又は国家に準ずる組織」又は「国際的な武力紛争」に該当するか否かについては、個別具体的にその実態に応じて判断せざるを得ないため、確定的にお答えすることは困難である。

四について

 お尋ねの米国の軍隊において用いられている「コンバットゾーン」という用語については、当該「コンバットゾーン」に属する地域に派遣されている米国の軍隊の構成員の手当や税制優遇措置等の福利厚生の観点から設けられている概念であると承知している。
 一方、イラク人道復興支援特措法においては、お尋ねの「戦闘地域」なる地域を定めた規定があるわけではないが、我が国の活動が憲法の範囲内で行われることを確保するため、「現に戦闘行為・・・が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域(第二条第三項)において、対応措置(同条第一項に規定する対応措置をいう。以下同じ。)を実施すること等を定めている。
 このように、両者はそれぞれ異なる観点から設けられているものである。
 また、一般国際法上、「戦闘地域」の用語については確立した定義は存在せず、これとお尋ねの「コンバットゾーン」等との関係については、お答えすることは困難である。

五について

 政府は、従来から、憲法第九条第一項の「武力の行使」とは、基本的には国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうと解釈している。このことを踏まえ、イラク人道復興支援特措法は、我が国の活動が憲法の範囲内で行われることを確保するため、第二条第三項において、「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」と定義した上で、「現に戦闘行為・・・が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で対応措置を実施すること等を定めたものである。

七について

 四についてで述べたとおり、対応措置は、「現に戦闘行為・・・が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で実施されるものであるが、イラクの他の地域でイラク人道復興支援特措法にいう戦闘行為が行われているのかどうか、また、仮に戦闘行為が行われているとしても、その主体がどのようなものであるかについては、二、三及び六についてで述べたとおり、確定的にお答えすることは困難である。

八について

 自衛隊が対応措置を実施する地域の中で生じた特定の事態がイラク人道復興支援特措法第二条第三項に規定する戦闘行為に当たるかどうかについては、我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報等を踏まえ、その主体のいかんのほか、その対象、態様等を総合的に勘案して合理的に判断すべきものと考える。

九について

 バグダッド飛行場を含め、自衛隊が対応措置を実施する地域については、当該対応措置の具体的内容を踏まえて、我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報等を総合的に分析し、活動期間中の状況変化の可能性等も含め、合理的に判断し、イラク人道復興支援特措法第二条第三項に規定する「現に戦闘行為・・・が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない」との要件を満たし得ると認めたところである。

十及び十二について

 お尋ねの「撤退」の想定するところが必ずしも明らかではないが、イラク人道復興支援特措法第八条に従い「防衛庁長官は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じ」る等の対応をとるものである。
 自衛隊が実施する対応措置の終了時期については、イラク人道復興支援特措法の定める期間内において、現地の政治・治安情勢を考慮しつつ、イラク人による国家再建の進展状況を総合的に踏まえて、適切に判断してまいりたい。

十一について

 お尋ねの「占領行政の主体」及び「占領軍」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、米国及び英国は、安保理決議第千四百八十三号において、占領国としての関係国際法の下での権限、責任及び義務を有することが認識されるとともに、領土の実効的な統治を通じたイラク国民の福祉の増進に関する権限を付与されている。連合暫定施政当局(CPA)は、このような責任、権限及び義務に基づき、イラクにつき、安全で安定した状態を回復し、イラクの人々が自らの政治的将来を自由に決定することができる状態を創出するために、暫定的に施政を行う機関である。
 米国及び英国は、同決議において認識されているとおり、占領国としての地位を有しており、イラクに現在展開する米国及び英国の軍隊は、そのような地位を有する国の軍隊である。
 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の活動は、憲法第九条の禁ずる武力の行使に当たるものではなく、また、我が国が武力紛争の当事国ではない以上、交戦権の行使に当たることはないことから、憲法との関係で問題が生ずるものではない。

十三から十五までについて

 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の派遣は、安保理決議第千四百八十三号及び第千五百十一号におけるイラク国家再建のための努力への支援の要請を受け、我が国が主体的かつ積極的に寄与することを目的として、連合暫定施政当局(CPA)の同意を得て実施するものである。
 お尋ねの「米英軍中心の有志連合」がいずれの国々のどのような活動等を指すものであるかが必ずしも明らかでなく、これと安保理決議第千五百十一号の十三の規定に言及される「統合された司令部の下の多国籍軍」との関係について、政府として確定的なことを申し上げることは困難であるが、自衛隊は飽くまでも我が国の指揮下において活動するものであり、多国籍軍の統合された司令部の指揮下に置かれることはない。

十六について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)は、我が国及び極東の平和と安全の維持をその目的とし、我が国と米国との間で、我が国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃に対する措置や、我が国における施設及び区域の提供等について定めている。他方、イラク人道復興支援特措法は、イラクの「国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与する」ことを目的とし、我が国が関連する安保理決議に基づき他国等に対して行う支援活動について定めるものである。このように、両者は、その目的等を異にしており、法的には直接の関係はない。
 なお、かねてから申し上げているとおり、政府としては、イラクの復興は、中東地域のみならず、国際社会全体の平和と安定の観点から重要であり、日米安保体制を基盤とする日米同盟と国際協調を両立させつつ、国際社会の責任ある一員としてイラクにおける人道・復興支援に取り組む方針である。



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