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平成十六年六月四日受領
答弁第九〇号

  内閣衆質一五九第九〇号
  平成十六年六月四日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員稲見哲男君提出青森県六ヶ所再処理工場の劣化ウラン試験運転に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員稲見哲男君提出青森県六ヶ所再処理工場の劣化ウラン試験運転に関する質問に対する答弁書



一について

 核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)人形峠環境技術センター(以下「センター」という。)及び日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)六ヶ所ウラン濃縮工場(以下「原燃濃縮工場」という。)の劣化ウラン(ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が天然ウランに係る当該比率の平均値に達しないウラン及びその化合物をいう。以下同じ。)の貯蔵量は、平成十五年十二月三十一日現在、それぞれ二千五百九十六トン・ウラン及び七千百七十三トン・ウランである。また、その他の施設に貯蔵された劣化ウランについては、その適正な管理に支障が生ずるおそれがあるため個別の施設ごとに貯蔵量をお示しすることは差し控えたいが、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)上の事業の区分に従って分類した施設の種別に、同日現在の劣化ウランの貯蔵量をお示しすれば、加工施設におけるものが九十五トン・ウラン、原子炉施設におけるものが二千十三トン・ウラン、再処理施設におけるものが二百五トン・ウラン、使用施設におけるものが二百二十三トン・ウランである。

二及び十四について

 日本原燃から聴取したところ、使用済燃料の代わりに放射能の低い劣化ウランを通流させて日本原燃の六ヶ所再処理工場(以下「原燃再処理工場」という。)の機能及び性能を確認する試験運転(以下「本件ウラン試験」という。)に使用する劣化ウランの調達に係る事実経過は次のとおりであるとのことである。
 日本原燃としては、本件ウラン試験に使用する劣化ウランの調達計画を平成十三年度に策定した際、原燃濃縮工場及びセンターに貯蔵されている劣化ウランの使用の可能性をまず検討した。しかしながら、原燃濃縮工場に貯蔵されている劣化ウランについては、これを工場から搬出するために必要な原子炉等規制法の規定に基づく許可の取得が本件ウラン試験を予定どおり実施するために必要な時期までに間に合わない見込みであると考え、その使用を断念した。また、センターに貯蔵されている劣化ウランについては、劣化ウランを貯蔵用のシリンダから輸送用のシリンダに移し替える作業に要する時間を踏まえて考えると、本件ウラン試験に必要な約五十三トン・ウランの劣化ウランすべてをセンターから調達することは困難であることが判明したため、期限までに納入可能な約二十七トン・ウランの劣化ウランのみをセンターから調達することとした。その後、約二トン・ウランの劣化ウランを三菱マテリアル株式会社から調達することができることとなったが、残りの約二十四トン・ウランの劣化ウランについては、国内において調達先が見つからなかったため、調達先を指定せずに三菱原子燃料株式会社(以下「三菱原燃」という。)に調達を委託したところ、三菱原燃がアメリカ合衆国(以下「米国」という。)から輸入することとしたものである。

三について

 日本原燃から聴取したところ、本件ウラン試験で使用するウラン粉末については当該粉末に含まれるフッ素を一定量以下に抑える必要があり、海外を含めた調査の結果、そのような条件を満たすウラン粉末を製造できる設備を有する会社が三菱原燃のみであったため、三菱原燃の再転換設備を用いて米国から輸入した六フッ化ウランを八酸化三ウランに再転換することとしたとのことである。

四について

 三菱原燃から聴取したところ、お尋ねの「本来の所有者」については、三菱原燃が劣化ウランを調達した「米国濃縮ウラン会社」から特定できないとの説明を受けており、また、三菱原燃が「米国濃縮ウラン会社」から調達した劣化ウランについて、「本来の所有者」が「米国濃縮ウラン会社」にその所有権を無償で譲渡したものか否かは承知していないとのことである。

五について

 劣化ウランを含む核物質の輸入について、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「外為法」という。)第五十二条の規定に基づく輸入の承認を行う際には、輸入する核物質の国内における使用等に必要な原子炉等規制法の規定に基づく許可等がなされているかなどについて審査を行っているところであるが、「劣化ウランが軍事目的の濃縮工程で発生したもの」か否かは審査項目としておらず、お尋ねの三菱原燃が調達した劣化ウランについても、軍事目的の濃縮工程で発生したものか否かは承知していない。

六について

 御指摘の米国原子力規制委員会(NRC)の資料を特定することができないことなどから、お尋ねの「事業者が必要とする純度」について正確にお答えすることは困難であるが、三菱原燃から聴取したところ、「米国濃縮ウラン会社」から劣化ウランを調達する際、使用済燃料の再処理によって回収されるウランには核分裂生成物などの不純物が含まれているため、そのようなウランではなく天然ウランを濃縮することに伴って発生した劣化ウランを納入することを契約上の条件にしたとのことである。

七について

 三菱原燃は、米国商社を通じて「米国濃縮ウラン会社」から御指摘の劣化ウランを調達しているが、有償であるか無償であるかを含め、その価格については、三菱原燃等の正当な利益を害するおそれがあるため、答弁を差し控えたい。

八、九、十九、二十四及び二十五について

 日本原燃から聴取したところ、お尋ねの輸送に係る費用については、劣化ウランの調達費用の一部として、日本原燃が、ウラン粉末及び模擬燃料集合体を日本原燃に納入する三菱原燃並びに模擬燃料集合体を日本原燃に納入する株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(以下「GNFJ」という。)及び原子燃料工業株式会社(以下「原燃工」という。)に支払うこととなっており、また、当該調達費用は、会計上、再処理施設建設工事費として処理されるとのことである。
 また、三菱原燃から聴取したところ、お尋ねの「輸送にかかわる全費用」の額については、商業上の秘密であるため、回答は差し控えたいとのことであり、政府としてもその額は承知していない。

十について

 お尋ねの米国製劣化ウランの輸入、海上輸送及び国内陸上輸送について、関係する法令の規定に基づき必要とされる手続並びに当該手続に係る申請等がされた日及び許可等をした日は別表第一のとおりである。

十一について

 三菱原燃から聴取したところ、お尋ねの米国製劣化ウランについては、約二十四トン・ウランの劣化ウランを製品として日本原燃に納入するため、歩留まりを考慮して約二十六トン・ウランの六フッ化ウランを輸入したところであるが、そのうち、本年四月三十日現在で酸化ウラン粉末への再転換を終了している約二十二トン・ウランの劣化ウランについては、茨城県那珂郡東海村に所在する三菱原燃の貯蔵施設に保管しており、残りの約四トン・ウランの劣化ウランについては、茨城県那珂郡東海村に所在する三菱原燃の再転換施設において本年六月中旬に再転換を終了する予定で再転換の作業を進めているところであるとのことである。

十二について

 日本原燃から聴取したところ、お尋ねの米国製劣化ウランについては、酸化ウラン粉末の形態で原燃再処理工場に搬入した後、硝酸により溶解し、ウラン溶液として使用することとなるとのことである。
 また、「日本原燃株式会社再処理施設の試験運転に係る対応について」(平成十四年八月三十日付け通達平成十四・八・〇九原院第一号)に基づき、本年三月十七日に日本原燃から経済産業省原子力安全・保安院に提出された「再処理施設ウラン試験計画書」によれば、当該ウラン溶液は、再処理施設の分離施設、精製施設及び脱硝施設における機能及び性能の確認のために使用するとのことである。

十三について

 サイクル機構は、センターに保管されている劣化ウランを搬出するために必要な行為に係る原子炉等規制法の規定に基づく許可を既に受けていたため、今般、お尋ねの劣化ウランを搬出するに当たり、改めて、原子炉等規制法の規定に基づく許可を受ける必要はなかったところである。

十五について

 サイクル機構から聴取したところ、センターに貯蔵されていた劣化ウランの所有者はサイクル機構であったが、その一部は、サイクル機構と電力会社との間のウラン濃縮に係る契約に基づき、電力会社から無償で譲渡されたものであり、残りは、サイクル機構の研究活動の過程において生じたものであるとのことである。
 また、三菱原燃がサイクル機構から調達した劣化ウランの価格については、有償であるか無償であるかを含め、三菱原燃の正当な利益を害するおそれなどがあるため、答弁を差し控えたい。

十六について

 サイクル機構から聴取したところ、お尋ねの「劣化ウランの詰め替え作業」は、平成十四年六月六日に開始し、平成十五年三月二日に終了しており、三菱原燃がサイクル機構に対してその費用を支払ったとのことである。
 また、日本原燃から聴取したところ、当該費用については、劣化ウランの調達費用の一部として、今後日本原燃が三菱原燃に支払うことになっているとのことである。

十七について

 日本原燃から聴取したところ、お尋ねの「同センターが六ヶ所再処理工場に供給するウラン試験用劣化六フッ化ウラン」は、茨城県那珂郡東海村に所在する三菱原燃の再転換施設において再転換されたとのことである。
 お尋ねのセンターから当該加工施設への輸送について、関係する法令の規定に基づき必要とされる手続並びに当該手続に係る申請等がされた日及び許可等をした日は別表第二のとおりである。

十八及び二十三について

 日本原燃から聴取したところ、「再転換先から燃料成形加工先」及び燃料加工「三社から六ヶ所再処理工場」へ輸送する核燃料物質は、劣化ウランに係る二酸化ウランであるとのことであり、原子炉等規制法等関係する法令の規定上、当該輸送については特段の手続は要しないこととされている。

二十及び二十二について

 日本原燃から聴取したところ、お尋ねの「同センターから供給された劣化ウラン」については、模擬燃料集合体への成型加工をすべて終了し、現在は、茨城県那珂郡東海村に所在する三菱原燃の貯蔵施設、神奈川県横須賀市に所在するGNFJの久里浜工場の貯蔵施設及び大阪府泉南郡熊取町に所在する原燃工の熊取事業所の貯蔵施設において保管されているとのことである。

二十一について

 日本原燃から聴取したところ、日本原燃は、GNFJと沸騰水型原子力発電所用燃料と同型の模擬燃料集合体五十九体、原燃工と加圧水型原子力発電所用燃料と同型の模擬燃料集合体二体及び三菱原燃の親会社である三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)と加圧水型原子力発電所用燃料と同型の模擬燃料集合体四十六体の成型加工契約を締結したところであり、また、三菱重工は、当該模擬燃料集合体四十六体の成型加工を三菱原燃に委託しているとのことである。

二十六について

 「日本原燃株式会社再処理施設の試験運転に係る対応について」に基づき、本年三月十七日に日本原燃から経済産業省原子力安全・保安院に日本原燃から提出された「再処理施設試験運転全体計画書」によれば、使用済燃料を用いて原燃再処理工場の生産性能及び安全性能が設計どおりであることを確認する試験運転(以下「本件アクティブ試験」という。)で使用する使用済燃料の集合体の数は、沸騰水型原子力発電所で使用された使用済燃料が約千二百五十体、加圧水型原子力発電所で使用された使用済燃料が約四百六十体であるとのことである。
 また、日本原燃から聴取したところ、どの原子炉で使用された燃料を用いるかなど集合体の数以外のお尋ねの事項については、現在検討中であるとのことである。

二十七について

 お尋ねの「IAEAの保障措置下にあるのか」という点については、特定の施設がいかなる条件を満たせば国際原子力機関(以下「IAEA」という。)の保障措置下にあることになるのかにつき我が国政府とIAEAとの間で合意された明確な定義があるわけではないが、原燃再処理工場に係る施設附属書については、平成十六年一月十九日付けで合意済みであり、原燃再処理工場に対する査察等の具体的な保障措置活動は既に実施されている。
 施設附属書には施設の設計情報、適用される保障措置の態様等が詳細に記述されており、公にすることにより、日本原燃の正当な利益を害し、また、IAEAによる保障措置の円滑な実施を妨げるおそれがあることなどから、その内容について答弁することは差し控えたい。

二十八について

 お尋ねの原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和六十三年条約第五号。以下「日米協定」という。)、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定(昭和四十七年条約第九号。以下「日仏協定」という。)、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定(平成十年条約第十三号。以下「日英協定」という。)、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア政府との間の協定(昭和五十七年条約第十三号。以下「日豪協定」という。)並びに原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定(昭和三十五年条約第八号。以下「日加協定」という。)のうち、日仏協定及び日英協定には、再処理の実施に係る規定は存在しないが、日米協定、日豪協定及び日加協定には、再処理の実施に係る規定が存在するため、これらの規定と本件ウラン試験との関係について検討する必要がある。しかしながら、本件ウラン試験は使用済燃料ではなく劣化ウランから成る模擬燃料を用いて行われる試験であって、一般に、使用済燃料を用いてプルトニウム等を使用の目的で抽出することと認識されている再処理には該当しないと解され、また、日米協定、日仏協定、日英協定、日豪協定及び日加協定(以下「日米協定等」という。)の再処理に係る規定以外の規定であってこの試験を規律するものも見当たらないことから、日米協定等上、本件ウラン試験を行うに当たって、日米協定等の相手国の同意を得る必要はないと考えている。
 また、使用済燃料を用いて行われる本件アクティブ試験に係るお尋ねの事項については、次のとおりである。
 日米協定第五条1においては、日米協定に基づいて移転された核物質等は両当事国政府が合意する場合には再処理することができる旨が規定されており、かかる規定を踏まえ、「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定第十一条に基づく両国政府の間の実施取極」(以下「日米取極」という。)第一条1(a)及び同条1(a)(i)においては、両当事国政府が日米取極の附属書一に掲げる施設において日米協定に基づいて移転された核物質等の再処理を行うことにつき合意する旨が規定されている。原燃再処理工場は、これまで日米取極の附属書四に掲げられてきたが、日米取極第二条2の規定に従って、平成十六年三月十七日付けで我が国政府から文書による通告を行い、同日付けで米国政府から文書による受領通知を受領したことにより、原燃再処理工場は附属書四から削除され、同附属書一に追加されている。これにより、本件アクティブ試験を行うことが日米協定上可能になったものと考えている。
 日豪協定においては、本件アクティブ試験を行うためには、原燃再処理工場が日豪協定の附属書Bに基づく実施取極(以下「日豪取極」という。)に添付されている「日本国の核燃料サイクル計画」六(a)に掲げられていることが必要であるが、現在、原燃再処理工場は「日本国の核燃料サイクル計画」六(a)には掲げられていないため、今後、日豪取極V1の規定に従い、原燃再処理工場を「日本国の核燃料サイクル計画」六(a)に追加するために必要な通告を行うこととしている。
 日加協定においては、本件アクティブ試験を行うためには、原燃再処理工場が「改正後の原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定第三条1及び2の実施に関する日本国政府とカナダ政府との間の交換公文」(以下「日加取極」という。)第二部3(a)に規定される「現在の及び予定中の日本国の原子力計画」9(1)1)に掲げられていることが必要であるが、現在、原燃再処理工場は「現在の及び予定中の日本国の原子力計画」9(1)1)には掲げられていないため、今後、日加取極第二部3の規定に従い、原燃再処理工場を「現在の及び予定中の日本国の原子力計画」9(1)1)に追加するために必要な手続を行うこととしている。
 日仏協定及び日英協定については、再処理の実施に関する規定が存在しないため、本件アクティブ試験を行うに当たって、協定の相手国の同意を得る必要はないと考えている。

二十九について

 二十八についてで述べたとおり、原燃再処理工場については、日米取極の附属書四から削除され、同附属書一に追加されているところである。
 なお、日米協定には、「米国が供給した核物質が付属書四に属する施設に置かれる、あるいは同施設で使用されるにあたっては、両国政府間での協議と取極めが必要」である旨を定めた規定は存在しない。


別表第一


別表第二


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