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平成十六年七月十六日受領
答弁第一九八号

  内閣衆質一五九第一九八号
  平成十六年七月十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員佐藤謙一郎君提出二千五年日本国際博覧会会場間観客輸送ゴンドラ計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員佐藤謙一郎君提出二千五年日本国際博覧会会場間観客輸送ゴンドラ計画に関する質問に対する答弁書



一について

 財団法人二千五年日本国際博覧会協会(以下「博覧会協会」という。)から聴取したところ、お尋ねの点については、次のとおりであるとのことである。
 オオタカの保護については、愛知県及び博覧会協会が共同で設置した「国際博会場関連オオタカ調査検討会」(以下「調査検討会」という。)の助言を受けて対策を進めている。二千五年日本国際博覧会(以下「博覧会」という。)の長久手会場及び瀬戸会場を結ぶ観客輸送用の索道施設(以下「会場間ゴンドラ」という。)の建設については、平成十五年七月四日及び八月二十七日に開催された調査検討会において、博覧会協会が実施したオオタカの営巣場所、飛翔経路等に関する調査の結果を踏まえて議論がなされ、会場間ゴンドラの建設工事の実施地域にはオオタカの営巣中心域が含まれないことから、一部支柱についてオオタカの繁殖期には工事を行わないこととするなどの配慮をすれば建設工事を行うことについて特段の問題はないものとされたところである。博覧会協会としては、右建設工事の実施に当たっては、現在行っているオオタカの観察を今後も継続し、調査検討会の助言を受けつつ、オオタカの保護に適切な配慮をしていくこととしている。
 また、博覧会協会においては、カザグルマ、ギフチョウ、スズカカンアオイ、ヒメカンアオイ、モンゴリナラ、シデコブシ等オオタカ以外の絶滅危惧種(環境庁が平成十二年に策定した「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物」(以下「レッドデータブック」という。)において絶滅危惧に分類された種をいう。)、準絶滅危惧種(レッドデータブックにおいて準絶滅危惧に分類された種をいう。)等の絶滅が危惧される野生生物(以下「絶滅危惧種等」という。)についても、生息及び生育の状況等について、現況の調査並びに工事の実施等による影響の予測及び評価を行っているところであり、絶滅危惧種等に対する工事の影響を回避し、又は低減するため、会場間ゴンドラの支柱の位置を選定する際に、絶滅危惧種等が集中する地域を極力回避し、林縁の近傍や過去何らかの工事が行われている土地を選定するなどの措置を講じることとしている。

二について

 保安林においては、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第三十四条第二項の規定により、都道府県知事の許可を受けなければ土地の形質を変更する行為をしてはならないこととされており、また、都道府県知事は、同条第五項の規定により、当該許可の申請があった場合には、その保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすと認められる場合を除き、これを許可しなければならないとされている。会場間ゴンドラについては、保安林における工事が予定されているものと承知しているところ、今後、博覧会協会から同条第二項の規定に基づく許可の申請がされた段階で、申請の具体的内容を踏まえ、愛知県知事が許可の適否について判断することとなる。

三、四及び一〇について

 博覧会協会は、平成十二年十二月、博覧会国際事務局に対して登録申請を行った時点では、博覧会の長久手会場及び瀬戸会場の間の観客輸送を両会場を結ぶ観客輸送用のバス(以下「シャトルバス」という。)により行うことを予定していたところ、その後、必要となる費用、大気汚染等環境に対する影響、シャトルバスが通過することとなる一般道において交通渋滞が発生する可能性、両会場間における円滑な観客輸送の確保の必要性等を踏まえて博覧会協会内部において改めて検討を行った結果、両会場間における観客輸送の手段としては会場間ゴンドラが適切であるとの結論に達し、平成十三年十二月に公表した「二千五年日本国際博覧会(愛知万博)基本計画」において、会場間ゴンドラの建設を決定したものと承知しているが、政府としても、その決定は妥当なものであったと考えている。
 会場間ゴンドラを運行する経路に屈曲した部分があることについては、森林内の植生分布、近隣の住宅からの距離等を考慮して経路を設定した結果であるものと承知しており、特に問題があるとは考えていない。
 会場間ゴンドラは、スキー場のゴンドラ等に利用される汎用性の高いものであることなどから、博覧会終了後の移設先が見付かる可能性も十分にあると考えられるところ、博覧会協会においては、これを移設して再利用する方向で検討しているものと承知している。
 また、博覧会協会においては、会場間ゴンドラの建設計画を進めるに当たり、近隣の住宅からの距離等を考慮して会場間ゴンドラの経路を設定し、また、会場間ゴンドラの窓ガラスとして瞬間調光ガラスを採用して、住宅付近を通過する際には住宅方向の視界を遮るように電気的にガラスを曇らせることとするなど、近隣の住民のプライバシーに配慮するとともに、これまでに地元説明会を四回開催するなど、会場間ゴンドラの設置に対する近隣の住民の理解を得るべく努めてきているものと承知している。

五について

 会場間ゴンドラの建設のために飛行するヘリコプターによる騒音については、博覧会協会において、「航空機騒音に係る環境基準について」(昭和四十八年環境庁告示第百五十四号)に準拠して騒音のレベルを試算し、資材搬入地点である七号支柱周辺の住宅地における騒音のレベルが、専ら住居の用に供される地域で人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい環境基準である七十WECPNL(加重等価継続感覚騒音レベル)を下回る六十七WECPNL以下であるとの結論を得ているものと承知している。政府としては、かかるレベルの騒音の発生をもって直ちに当該ヘリコプターの飛行に著しい問題があるとは言えないが、博覧会協会において騒音の低減に向けた努力がなされることが適切であると考えており、平成十五年十一月十四日付けで、経済産業大臣から博覧会協会に対して文書を発出し、その旨の助言を行ったところである。これを受けて、博覧会協会においては、運搬する資材の減量、運行回数の削減等によりヘリコプターの飛行に伴う騒音が低減されるよう対策を実施していくこととしているものと承知している。
 なお、お尋ねの「住居用の主な騒音の基準」とは、「騒音に係る環境基準について」(平成十年環境庁告示第六十四号)における専ら住居の用に供される地域に係る基準値を指すものと考えるが、当該基準値は、一年間を通じて騒音が平均的な状況を呈する日における騒音に係るエネルギーの平均値をもって、当該地域の騒音の平均的な状況を評価するための基準である。他方、お尋ねの「八一デシベル」とは、ヘリコプターの飛行に伴う一時的な騒音について、博覧会協会が近隣の住宅地で観測される最大のものとして試算した数値であると承知しており、これを性格の異なる右基準値と比較することは、適切ではないと考える。

六について

 博覧会協会からは、お尋ねの点について、次のとおりであると聞いており、「プライバシー保護策が不十分」との御指摘は当たらないものと考える。
 博覧会協会において、お尋ねの「プライバシー保護区」を設定した事実はないが、会場間ゴンドラが施設周辺の住宅からおおむね二百メートル以内にある間は、会場間ゴンドラの乗客から当該住宅が見えないように住宅の方向に面する瞬間調光ガラスを曇らせることとする予定である。
 瞬間調光ガラスについては、誤作動がないよう事前の作動試験や日々の整備点検を十分行い、また、万が一瞬間調光ガラスが誤作動等により透明の状態のままとなった場合には、会場間ゴンドラの運転を一時取りやめることとする予定である。
 博覧会協会としては、これらの措置について、引き続き近隣の住民の理解を得るべく努めていくこととしている。

七について

 お尋ねの国道の上空における会場間ゴンドラの高さは地上から約二十メートルとなる予定であると承知しており、上空における会場間ゴンドラの通過が、当該国道で車を運転する者の注意力を奪い、交通事故を誘発するおそれは少ないものと考えている。

八について

 博覧会協会から聴取した現時点における会場間ゴンドラの建設計画の概要等を前提とすれば、お尋ねの点については、以下のとおりである。
 索道事業者においては、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第三十五条の規定より、索道施設の安全性確保等の観点から同条の規定に基づき制定された索道施設に関する技術上の基準を定める省令(昭和六十二年運輸省令第十六号。以下「技術基準省令」という。)で定める技術上の基準に従い、索道施設を維持し、及び管理しなければならないこととされているところであるが、お尋ねの「救助用道路」については、技術基準省令において、その設置が義務付けられているわけではなく、設置しないことによって、同法上の問題が生じるわけではない。
 お尋ねの「保護施設」とは、技術基準省令第十七条第一項に規定する保護設備を指すものと考えるが、同項においては、搬器の構造等を考慮し、物の落下による危険が生じるおそれのある箇所には、適当な保護設備を設けるべき旨を規定しているところ、閉鎖式構造を採用する会場間ゴンドラについては、原則として物の落下による危険が生じるおそれはなく、したがって、保護設備を設ける必要はないものと考えている。
 お尋ねの「運用マニュアル」とは、技術基準省令第三条に規定する技術基準省令の実施に関する細則を指すものと考えるが、博覧会協会としては、同法第三十四条の二の規定に基づく索道施設の検査の申請までに、当該細則を作成し、技術基準省令第四条の規定に基づき、中部運輸局長に対する届出を行う予定であると承知している。
 お尋ねの「事故等が起こり観客輸送できなくなった時の代替案」については、技術基準省令において、作成が義務付けられているものではない。
 右に述べたように、お尋ねの事項に係る会場間ゴンドラの安全対策については、現時点において、特段の問題があるとは考えていないが、国土交通省においては、会場間ゴンドラの設置工事が終了した後に実施する索道施設の検査において、会場間ゴンドラの安全性を厳正に確認することを予定している。

九について

 交通機関に対するテロ攻撃の危険性は、交通機関の種類のみによって大きく変わるものではないと考えられるところ、一概に会場間ゴンドラ施設がシャトルバスよりもテロ攻撃の標的になりやすいとは言えないと考える。
 政府としては、博覧会において不測の事態が起きないよう、あらゆる事態を想定して関係機関と緊密に連携し、万全の体制で安全の確保に努めていく所存である。
 また、万全の警備体制で臨んだにもかかわらず、万が一不測の事態が起こった場合には、個別の事情に応じて対応を検討することになるものと考える。



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